1106 自社サービスに対するお客さんの頭の中での優先順位

たまに社内・社外で話す「お客さんの頭の中での優先順位」という話があって、自社が提供しているサービスが、顧客担当者/意思決定者の頭の中での優先順位にどう影響されるか?を考えるのは、重要な問いだと思う。

お客さんの頭の中での優先順位の高低に影響を受ける領域と、受けにくい領域では、戦い方が大きく変わってくる。

例えば、当社が属するデジタルマーケティングの業界では、10年ぐらい前はSEOやWebサイトリニューアルに対するお客さんの頭の中の優先順位がすごく高かった。

その頃を思い返すと、デジタルマーケティング/Webマーケティングの会社といえば、SEO会社や大規模Webサイト構築ができる会社、Webサイトのユーザビリティを改善する会社の名前が思い浮かぶし、彼らのビジネスが伸びていただろう。お客さんの頭の中の優先順位が高いから、当然、業界メディアも取り上げるし、書籍も出版されるし、露出も多くなる。

「今期の予算で何かやろう!」となった時に、SEOやWebサイトリニューアルが想起され、それらを提供する会社に相談が来やすい構造があった。

一方、いまのデジタルマーケティングの業界で、SEOやWebサイトリニューアルに対するお客さんの頭の中の優先順位は、そこまで高くない。

BtoBに限って言えば、今はなんといっても、MAやABM、インサイドセールスあたりの優先順位が高い。図にするとこんな感じ。

画像1

当然、MAやABM、インサイドセールスあたりの領域がいまは商売になりやすく、盛り上がっている。

自分たちが属する領域が、デジタルマーケティング業界のように「お客さんの頭の中の優先順位」の移り変わりが激しい業界であれば、市場環境・競争環境・顧客ニーズの変化を感じ取り、常にお客さんの頭の中の優先順位が高い領域に居続けることが重要になる。サイバーエージェントさんのように次々に、新しい領域の事業や会社を立ち上げて、顧客ニーズを捉え続けるのは一つのやり方だろう。

逆に「お客さんの頭の中での優先順位」に影響を受けにくい良い領域もあって、会計ソフトや勤怠管理システム、グループウェアあたりのインフラサービスが思い浮かぶ。

会社の業務効率に関わるから一番良いシステムを選びたいけど、少なくとも私の会計ソフトや勤怠管理システム、グループウェアに対する基本的なニーズは数年間変わっていないし、今後数年間もあまり変わらないだろう。検討する時は一番良いものを選定し、それを5年、10年、15年と使い続けたい感じ。

1消費者としても、四六時中、カレーのことを考えてるわけじゃないけど、5年前も、10年前も、15年前もカレーを食べてきたし、5年後、10年後、15年後もカレーを食べ続けるだろう(※実際、カレーの消費量は安定している)。会計ソフトや勤怠管理システム、グループウェアにも同じ印象を持つ。

画像2

引用:http://blog.rcn.or.jp/curry/

こういう業界では、栄枯盛衰が激しくない分、プレーヤーが固定化され、後から参入し、シェアを拡大する難易度が高い。初期に参入して確固たるポジションを築いてしまうか、後から何らかの新しいコンセプトを引っさげて参入するか、オンプレミス→クラウドへの移行、紙やExcel→ITツールへの移行などで業界が動くタイミングを捉えるか、などが重要になるだろう。

また、デジタルマーケティング業界のように、お客さんの頭の中の優先順位の変化が激しく、ビジネスの栄枯盛衰が激しい業界でも、Webサイトリニューアルのように底堅い領域は存在する。例えば、「Webサイトリニューアル」はどの会社も数年に一回はやっていて、日本には約400万社の企業があり、HP開設率も90%前後なので、毎年、日本では100万回のWebサイトリニューアルが行われている計算になるのだから、1サイト10万円だったとして、毎年1000億円がWebサイトリニューアルに費やされている。十分に巨大な産業だ。

なので、業界特性というより、領域特性の見極めが重要かもしれない。

自社が提供するサービスがお客さんの頭の中での優先順位に影響を受ける領域なのか、そうでない領域なのかを考えるのは事業戦略上、結構重要になる、という話でした。

▼コンサルタント採用中のお知らせ
BtoB営業・マーケティングのオンライン化・デジタル化を支援している才流(サイル)では、絶賛コンサルタントを募集中です。ぜひ奮ってご応募ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?