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トレタの事例に学ぶ、カスタマーサクセスを最適化するために必要な視点とは?

昨日『顧客を成功に導くオンボーディングの削ぎ落としとは?トレタが辞メタ、4つのポイント』に参加してきた。

カスタマーサクセスを「教科書的に」だけ理解して追い続けると、カスタマーサクセスとしての本質を見失いかねない可能性がある。

トレタ鈴木さんと、SmartHR高橋さんの話を聞いて、そう強く感じさせられたイベントだった。

「教科書的に理解する」とはどういうことか

カスタマーサクセス担当者で読んでいない人はいないと言っていいくらい(イベント参加者の9割が既読)、界隈では有名な本がある。

事実、良い本だとは思う。「カスタマーサクセスとは何か」の問いに対して、網羅的に模範的な回答を示している本とでも言えばいいだろうか。まず読んでおいて間違いはない。

しかしトレタ鈴木さんの話を聴いていると、教科書的に取り組んでいてはまず間違いなく超えられなかったであろう、課題の数々だった。

僕の理解だと、カスタマーサクセスの役割は、下記2つで説明できるかと思う。

・インサイドセールスが登録や契約まで導いた顧客が、そのサービスや商品の価値を最大限引き出せるよう、手を尽くす
・企業サイドの観点では「LTV向上」「チャーンレートの低下」

だがこれは言ってしまえば教科書的な理解だ。「こういう場合には、こうすべきだ」「こうするには、ああすればいい ーー」。

現実のカスタマーサクセスの世界では、当然そう上手くはいかない。上記を実現するために、どこまでも泥臭く、実直に取り組んでいかなくてはならない。

トレタ鈴木さんの話から次の話を紹介しよう。

トレタが辞メタことは、何だったのか

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トレタは当初、「訪問型カスタマーサクセス」を実施していたそうだ。その名の通り、客先訪問をする。業界の人であればみな知っているとおり、カスタマーサクセスの最初の仕事はオンボーディングであり、トレタも当然重視していた。

導入店舗数は急激に伸び、順調に事業は成長していたが、だからこそ成長に耐えうるカスタマーサクセスの体制づくりが課題となった。既存のカスタマーサクセスチームのリソースでは対処しきれず、発注から納品まで、なんと2ヶ月もかかっていたそう。

カスタマーサクセス活動の生産性を上げなければ、未来はない。そこでトレタが大切にしたのは、次のまとめにある考え方。

実施した具体的な施策としては下記3つが紹介されていた。

①動画資料の活用と宿題
②ディスカッション形式のオンボーディング
③カスタマーサクセス業務の一部外注とバリューが発揮できるポイントへの注力

たとえば、ディスカッション形式はかなりワークし、下記の成果が得られたそう。

・相手のオペレーションに必要ない説明がなくなった
・信頼関係が構築されやすくなった。こっち側がずっと話していると、構築できない
・重箱の隅を突くような質問もなくなった
・誰でもできるようになった

カスタマーサクセスを最適化する中で、4分の1まで、オンボーディングにかかる時間が短縮され、成功率もかなりアップしたとのこと。僕自身カスタマーサクセスに携わっていることもあり、これは凄まじい改善だと思った。

興味深い話が盛りだくさんだったが、トレタが「いける!」と思えたきっかけは、訪問をやめ、②を実施し、成功したからではないかなと個人的には思う。

少しでも「自社本位」になった瞬間に、「カスタマーサクセス」ではなくなる

イベントの帰りに以前社内で、カスタマーサクセスにまつわるLTを実施したことを思い出していた。

このLTで、ぼくは「カスタマーサクセスって、顧客が成功するために必要なことすべてでしょ!」と言っていた。今もそれは間違いではないと思う。

だけど、とても大切な視点が抜け落ちていた。

トレタ鈴木さんの話を聴いていると、良い意味で「しつこく」、顧客をプッシュしたり、オンボーディングをちゃんと受けてもらえるまで、どのツールで連絡するかなど、考え抜いていることがわかった。

トレタが実施していた様々な施策の根底にあるのは、間違いなく顧客視点であり、本当に相手を成功にまで導くという意識だ。鈴木さんはハイボール片手にニコニコ話していたが、なにかこう、内に宿る気迫のようなものを感じたプレゼンだった。

「お客さんがほしいものってなんだったっけ?」。この観点に立ち返ることでトレタさんのカスタマーサクセスのような発想が生まれる。

カスタマーサクセスにおいてはオンボーディングが成功するかどうかが死活問題と言っても過言ではない。であれば尚更、顧客が体験するカスタマーサクセスまでも、顧客にフィットするものにしなくてはならない(これはいわゆるCXと言われるものだのだろう)。

売り上げばかりを考えて施策を考えてうったり、説明したいことをこちらのロジックでひたすら説明したりせず、「自社本位」になっていないかと、常に問うていかねばならないだろう。


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