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なぜSaaS組織に分断が起きるのか?「PLG Loop」で打破するセクショナリズムの壁

SmartHR PMMの佐々木です(@kosasaki7
昨年末、PMMの交流を目的とした「PMM Night」を初開催し、100名を超える方々にご来場いただきました。
本記事では、当日話せなかった内容や会場の質問に対するアンサー記事として、PdM×PMMの協業モデルと各領域の取り組みをまとめてみました。
SaaS組織間の連携を考える上で、ご参考いただけますと幸いです。

イベントの内容は、@CAREER_HACK さんに全3本で特集していただいた、「PMM」ってなに? をご参照ください。

なぜSaaS組織にセクショナリズムが生まれるのか?

セクショナリズムとは、集団・組織内部の各部署が互いに協力し合うことなく、自分たちが保持する権限や利害にこだわり、外部からの干渉を排除しようとする排他的傾向のことをいう。官僚制における逆機能の一つとして指摘されたもので、組織内部の専門性を追求しすぎた結果起こってくる機能障害である。

SaaS組織では、「THE MODEL」を始めとするマーケティング〜カスタマーサクセスの分業体制を敷き、各機能の細分化/多様化が進んでいます。
しかし、高度に専門化された組織である故に、以下のような要因で組織の分断を招くリスクを抱えています。
・ユーザーに価値を届ける業務プロセスが複雑多岐に渡る
・事業の拡大に多くの人員が必要であり、その過程で属人化に陥る
・自部門のKPIを追求し過ぎ、部門間の協業が抑制されたり、KPIに直結しない仕事が置き去りにされる
・開発とビジネス部門の距離が広がり、情報格差や情報過多が起きる

SaaS組織では、排他的意識がなくとも、"意図しない" 個別最適の力学が働き、セクショナリズムが起こりうる。組織が拡大するにつれ、下記のような課題に直面したことがあるのではないでしょうか。

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SmartHRも例外ではなく、2019年の急激な組織拡大とプロダクトの拡充により、部門間の色んなところでボールが落ち始め、PdMのビジネス的な仕事を支援する役割として、PMM組織をつくりました。

PMMとPdMをそれぞれ以下のように定義づけています。
・PMM:「何が売れるか」を考え、「それをどう売るか」に責任を持つ
・PdM:課題を解決するために、「何を作るか」に責任を持つ

「PLG Loop」の実践

PLG(Product-Led Growth) とは、プロダクトの機能とその利活用を主要な成長エンジンと位置づけて顧客を獲得、維持、拡大していく成長戦略のこと
出典:「兆速成長するスタートアップの凄い秘密:Product-Led Growthという名の成長戦略」 https://success-lab.jp/what-is-product-led-growth/

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上図はSmartHRで実践しているPdM×PMMの協業モデルをまとめたフレームワークです。左側がPdM、右側がPMM、真ん中は両者が密接に関わりながら、各部門の円滑な連携を推進しています。

以下一つ一つの領域に関して、SmartHRで実践している具体的な内容を紹介していきたいと思います。

1.ユーザー要望管理

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全てはユーザー要望(解決すべき課題)から始まります。
SmartHRでは、「人が欲しいと思うものをつくろう」が価値観として根付いており、プロダクトを起点とした全ての顧客体験は、この考えに基づいています。
・CS(カスタマーサクセス)、カスタマーサポート、セールスからユーザー要望を集める
・各プロダクト単位でPdMとPMMが一つ一つの要望を精査する
・課題から要求を整理し、開発の優先度付けや新機能の企画に活用する

【要望管理の高度化へ】
「productboard」という要望管理SaaSを導入したことで、ユーザー要望管理の量・質ともに向上することができました。検索性にも優れており、様々な軸で振り返り・分析をすることができます。今後はProduct OKRやロードマップ等の活用の幅を拡げていく予定です。
「productboard」は、2020/1/15に、Sequoia CapitalリードのシリーズBで$45Mの大型調達も話題になりました。


2.自律型プロダクトチーム

プロダクトチームは、顧客に貢献し、その結果として事業に貢献します。
開発の優先順位や仕様策定において、社内のステークホルダーが多すぎてなかなか決められないという問題を耳にすることがあります。
経営陣が権限を渡し、プロダクトチームが顧客に価値を届けることに集中し、日々の意思決定を行う体制構築が出発点となります。
SmartHRではPdMが中心となり、デザイナー、エンジニア、PMMと協業しながら、
・課題・要求の設定/検証からPRD(プロダクト要求仕様書)を作成
・スクラムを回しながらリリースに際する他のチームとの連携を推進

【横串連携で全体最適を図る】
全社戦略との整合性と個別最適に陥らないように、プロダクトの横串連携を図ることも重要となります。定期的に経営陣とPdM・PMMで中長期ロードマップについて議論したり、週次のプロダクト定例や相互レビュー会を設けています。また、LeSSの導入や開発プロセス改善など開発スピードと品質向上に日々取り組んでいます。

参考: @hiroki_m 「SmartHRにおけるプロダクトマネージャーの仕事とは?」


3.リリース管理〜社内周知

日々リリースされる機能改善や新機能は指数関数的に増えるとともに、各ビジネス部門がプロダクトの情報をキャッチアップすることが難しくなっていきます。また標準的なプロセスがなく、情報を発信する担当がいない状態では、ユーザーに届けるメッセージの統一も難しくなっていきます。リリース管理は、開発とビジネスの間に情報の溝が生まれやすいポイントです。

【リリースの周知方法】
SmartHRでもPdMとPMM協働で最初に梃子を入れた施策であり、様々なチャネルで、必要な情報を適切なタイミングで届ける施策を徐々に展開しています。

・Slackでの速報や経営会議での発信
・ビジネス用のロードマップ作成
・プロダクト共有会の開催
・広報と連携したお知らせ・プレスリリースの作成
・マーケティングやCSと連携したメルマガ配信

現在も試行錯誤の段階でありますが、複数の発信は継続しつつ、今後は最新かつ、正確な情報が連携・蓄積されていくナレッジポータルの構築を目指しています。

4.リードマネジメント〜バイラル促進

新規リードはいずれ頭打ちになり、CPAも上昇していく中で、リードリサイクルとプロダクト進化の両輪を推進していかなければ、飛躍的な成長率を維持することはできません。
SaaSにおけるマーケティング組織とPMM(プロダクトマーケティング)の役割分担や棲み分けなどについて聞かれる機会がしばしばあります。
外資系ベンダーでは、マーケティング組織の中にプロダクトマーケティング機能があり、セミナーやプロモーションを担っているケースが見られます。

【マーケティングとPMMの協業】
SmartHRでは、マーケティングがリード獲得からブランディング、広報・PRを担っています。PMMは独立したユニットとして、開発や各ビジネスユニットと有機的に連携しながらリードマネジメント施策の企画・推進に貢献する形をとっています。(プロモーション、コンテンツ、セミナー、展示会等)

また将来的には、海外の先進SaaS企業のような「Products That 'Sell Themselves'」は大きなテーマになると考えています。リードマネジメントにおける複合的な施策展開やユーザーネットワークを活用したバイラル促進や課金モデルの見直しなどの挑戦が必要となるでしょう。

参考:@takaokamoto1 「SmartHRマーケティング組織 Ver.2020」

5.セールスイネーブルメント

昨今のSaaS業界で重要なトピックあり、セールスの生産性向上、新規メンバーの早期戦力化などを図る、事業成長に不可欠な機能として組織化されています。セールス/ISの細分化や高度化は日進月歩の進化を続けており、SmartHRではSales Opsがセールスイネーブルメント機能を担っています。

【セールスとPMMの協業】
PMMが広義の「それをどう売るか」について様々な部門に関わる中、商談における「売り方」については、セールスがコミットして作りあげなければ、絵に書いた餅になりかねません。また、セールス内での情報格差や情報過多に起こらないような仕組み作りが必要です。

今後は、ナレッジポータルやプロダクト共有会等で最新かつ正確な情報を届けながら、様々なセールスイネーブルメント施策において協働していく予定です。

参考: @kudok779 「SmartHRのSales Opsの3つの役割」

6.ベストプラクティス構築〜カスタマーマーケティング

SaaSの継続率とLTVを最大化する上で、カスタマーサクセスは、顧客の成果(アウトカム)に貢献する重要な役割を担います。昨今ではChrun Rate(解約率)のみならず、NRR(Net Retention Rate)「平均的な既存顧客がSaaSのどれだけファンになって、一定期間にどれ位追加でお金を払ってくれたのか?」について計測する企業が増えています。
SmartHRのNRRが約125%と比較的高い水準を保っており、今後も持続可能な成長を図ることが重要なテーマになっています。

NRRやコホート分析についてはMasayuki Minatoさんの「SaaS経営のキモ!経営レベルで見るべきオススメのSaaS KPI 9選」の記事が非常に参考になります。

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SmartHR社内も含め、CS出身のPMMも多く、役割分担や協業形態に関して聞かれる機会がしばしばあります。
SmartHRでは、新機能の活用促進とアップセル/クロスセルにおいて、以下のような協業を推進しています。

【ベストプラクティス構築】
リファレンスカスタマー(代表事例となるようなクライアント)を中心にPdMやデザイナーも同行しながら、新機能のβ版に対するフィードバックや活用における課題に関してヒアリングを行い、より深い示唆を開発に活かしています。また、活用事例となりえる顧客に対する支援を行いながら、プロタクトログの分析を通じた機能改善や、活用事例となりえる顧客と協働でアウトカムを創る施策も試行しています。

【カスタマーマーケティング】
ベストプラクティスの事例を各ビジネスユニットに連携し、カスタマーマーケティングの文脈においてCSやマーケティングと協働で様々な施策を企画しています。今後はCSが主導するコミュニティマーケティングも重要な施策になるため、スピード感を持った貢献が必要になってくるでしょう。

最後に:PMMはどのように評価されるのか?

「PMM Night」では、PMMの評価に関する質問を多く頂きました。横断で動く仕事の評価の考え方難しい。どんなKPIに貢献するのか。事業責任者の役割と被るなどのコメントを頂きました。
SmartHRのPMMに対する評価は、定性と定量の2軸の組み合わせを考えており、各自のプロダクトやフェーズごとでOKRを設定しています。

【定性評価】
一つめは、他ユニットと推進するプロジェクトベースでの欲しい結果に対する評価です。例としては、
・新機能プロモーションのリリースプロジェクトを成功させる
・担当プロダクトのセミナーでリード獲得に貢献する
・ナレッジポータル構築プロジェクトを推進する
各ユニットのKPIと連動するような施策を協働で達成していく設計にできると、より貢献の成果が図りやすいかもしれません。

【定量評価】
2つめは、私が担当している「ラクラク分析レポート」のようなクロスセルプロダクトについては、プロダクトの売上を設定しています。
またプロダクト初期フェーズであればPMFを図るNPS、エンゲージメント、リテンションの観点からKPIを設定することも考えられます。

SmartHRではPMMを積極的に採用しています。

この記事であげたPLG Loopはまだまだ未完成であり、各領域の取り組みもスタート地点に立ったばかりです。
2020年になり、新たなメンバーが複数名加わる予定ですが、まだまだメンバーを必要としています!
PMMに興味がある方はぜひカジュアル面談や、プロダクトマネジメントに関する情報交換についても(@kosasaki7)へDMをお気軽にいただければ幸いです。



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株式会社SmartHR Product Marketing Manager。UCLA 数学科卒業。コンサルティングファームから2018年よりSmartHR 経営企画として入社し、現在は人事データ分析ツール「ラクラク分析レポート」の責任者を担う。