【閉鎖病棟入院③〜デジタルデトックス編】
さて、20時半になると“夜のお薬タイム″がやってきた。
私の場合、入院期間中の薬はほとんど変わらず、不眠時の頓服があると聞いた。
22時が消灯なので20時半頃、眠剤などを飲む慣習らしい。私も看護師から薬を受け取り数種類の薬を飲んだ。
普段ならまだ仕事をしている時間帯だ。こんな時間に飲んでも眠れないだろ…と半分思いながら服用したわけだが、薬をきちんと飲み込むまで看護師がじっと見ている。
ほほう、これはあの映画と同じだ。
(17歳のカルテのこと)
薬を全て飲みきり、ヤクザの生き様的な本を読んでいた。
やがて22時になり、夜勤の職員が全ての部屋の電気を消してまわっている。
入院初日なので23時まで部屋の灯りをつけても良いと聞いていたので、そのまま本を読んでいたが途中で飽きてしまい、病院から渡された書類に目を通す事にした。
8時 朝食
12時 昼食
18時 夕食
お風呂は週に3回、午前中に1日おき、シャワーは毎日可、1人20分以内。
売店への“外出″は午後のみ、1人15分以内。
(但し売店への“単独外出″は医師の許可が出た者のみ可)
面会は近親者のみ2人まで、1日10分まで。
差し入れは生もの不可(但し下の売店で購入したものは可)
携帯電話の使用は自室のみ
(9時半〜15時半まで)、通話は公衆電話の場所で1人10分以内…
なるほど、風呂はシャワーの予約をすれば毎日使えるのか…生理だし1番最後の時間帯に申し込んでみよう…
売店に行くにも許可がいるのか…時間制限すごいな…
スマホを使える人もいるんだ、明日先生に聞いてみよう…
それにしてもココでの私の主治医はいったい誰なんだ?…入院時に話した外来の医師?…
頭の中にハテナマークがたくさんつくが、明日聞く事にした。
23時になり『橋本さーん、まだ寝れませんか?』と夜勤の看護師が部屋を訪れた。生理痛がキリキリと舞い戻ってきた。
『はい、不眠がキツイので眠気がきません…あとお腹痛くなってきたのでカロナールもらえませんか?』
『痛み止めありますよ、眠れないようなら先生から頓服出ているので詰所まで来てください』
ピンクのコップを持って自室を出た。
病棟も廊下も真っ暗だ…皆静かに寝ているらしい。夜の閉鎖病棟、思ったより怖くないな…
フラフラと詰所まで行くと、“女性専用ゾーン″の入り口のドアに鍵がかかっている。
詰所の小窓を覗いて再び名前と要件を伝えた。
『ハイハイ、カロナールと頓服ね…名前は間違ってませんか?』
『はい、合ってます。その頓服で眠気がきますか?』
とても小さな錠剤を見て不安になった。
『最近この頓服で皆さん寝てるんですよー、あ、頓服は夜中の2時まで2回飲めるからね!』
詰所の前にある給食用みたいなヤカンからお茶をもらい、痛み止めと頓服を一気に飲み干した。やはり、薬を飲み込むまで看護師がジッと私を凝視している。
『お部屋の電気はもう消してね!おやすみなさーい。』
『おやすみなさい…』
トボトボと元来た道を引き返し、本当に眠れるのだろうかと不安になった。
部屋に戻り電気を消して薄い布団に潜りこむ。
入院初日で疲れていたのか、いつの間にか眠りについていた。
『イデッ…いってててて…』
お腹の激痛で目が覚めた。時計を見るとまだ午前4時過ぎだった。
慌ててナースコールをすると、カロナールを持って看護師が部屋を訪れた。
再度カロナールを一気飲みし、お腹を抱える体勢に向きを変えた。
『本当に生理痛酷いんだね…』
『はい、昨日は胃腸炎起こしてるからロキソニンダメって言われたんで…明日は出してもらえますかね…晩ご飯全部食べれました…』
『夕食全部食べれたんなら、明日先生に聞いてみようね!起床までまだ4時間弱あるから頑張って寝てね。』
首を縦にふり、あまりの激痛に吐き気を覚えた。トイレにこもる。
よりによって生理2日目だ…最悪…
カロナールが効くのに40分ほどかかった。部屋は暗く、時計の秒針の音が気になって仕方ない。激痛が少し和らいで、そのままフッと眠りに落ちた。
『おはようございまーす、朝ごはんですよー、起きてねー!』
元気よく男性看護師が部屋に朝食を持ってきた。
眠い…病棟がザワザワしている…眠気でイラっときた。
朝の私はすこぶる機嫌が悪い。
時計を見ると7時55分を少し過ぎたところだった。入院2日目、生理2日目の朝だ。
また挿し込むような生理痛が押し寄せてくる、一刻も早くカロナールもらわなきゃ…ていうか今日こそロキソニンもらわなきゃ無理だわ…
そのためには朝食を無理やりでも食べなければ…。
朝食も昨夜と同じおかゆ。薄いコンソメ味のスープがお椀の底から2cmくらいしか入っていない。よく味の分からないサラダと紙パックの牛乳。胃腸炎用の食事なのだろうか…
とりあえず胃に流し込んで、詰所までカロナールをもらいに行った。
あたりを見渡すと、まだ8時過ぎだというのに閉鎖病棟の住人たちは元気に起きて、テレビを見たり何やら喋っていたり、朝食を広間で食べている人も居る。
それを横目に、腹を抱えながら自室に戻りハライタの時に1番効く体勢でベッドに入った。
早くロキソニン欲しい…死にそうだ。
病棟内は朝からバタバタと騒がしく、浅い眠りを繰り返した。
『おはようございます。お具合いかがですか?』
眠い目をこすりながらゆっくり起き上がると、紺色のユニフォームを着た若い男性が立っていた。
誰だろう…
『昨日は眠れましたか?気分はいかがですか?』
『…はい、カロナール2回もらって頓服もらって寝ました。でも痛みがキツいんです、食事は全部食べれました…ロキソニン欲しいんです…』
『そうですか、夜間のスタッフから聞きました。食事が食べれたんなら、そうですね…ロキソニン出しましょうか…それより気分は落ち着かれましたか?』
『お腹が痛くてわかりません!!』
イラっときて乱暴に答えてしまった。それより私の主治医はどこにいるんだ…
『では今日からロキソニン出すよう手配しますね、カロナール飲まれたのなら昼食後からロキソニン飲んでください…それではまた来ますのでゆっくりしてください。』
何も答えずクルッと反対側を向き、2日目の生理痛に吐き気を覚えながらイライラした。
誰だよ、今の若いの…
誰でもいいや…!とにかくロキソニン出してもらえると言っていたぞ。とりあえず安心だ。
昼食後ロキソニンを速攻もらい、看護師の前でゴクリと飲み込んだ。口の中を見せて何も残ってないサインを示した。
そうだ…シャワーを借りたい…この真夏に風呂に入れないなんて、しかも生理なのに気持ち悪い!
詰所でシャワーを借りたい旨を伝えた。
『先生の許可が出ましたので、午後の空いている枠の時間帯のところに名前を書いてください』
14時30分の最後の枠が空いている。
ハシモト…と名前を記入し、先生とは誰だ?シャワーも許可制なのかとブツブツ心の中でボヤいた。
シャワー室の使用欄に名前が少ししかない。
皆1日おきの風呂でいいんだろうか…
シャンプー&トリートメントは美容院専売のものをボトルごと持ち込んた。洗顔やボディソープも家と同じものに詰め替えた。
例え入院中でも、シャンプー好きな自分にとって、市販のシャンプーで髪がバサバサになってしまうのを恐れた。
逆に言うと、家でもそれくらいしか気晴らしがなかった。
シャワー室に入ると介護用にも使える椅子がひとつだけある。湯を出すと水圧はすごいが5秒でキッチリ止まる仕組みだった。
シャワーの湯が途切れないよう、“押す″のボタンを押しながら、頭から一気に流した。
『このまま全て流れてそのまま消えてしまえばいいのに…』
自宅でも頭からシャワーを流す時、毎回同じことを思う。
シャワータイムは1人20分以内なので、急いで髪の毛と体と顔を洗い、バスタオルに包まれた。シャワー室の時計はまだ残り5分あることを示していた。
急いで短パンとTシャツを着て、タオルドライしながらシャワー室を出る。
そのまま詰所でシャワーが終わった事を告げ、ドライヤーを借りた。
個室なので自室で使用して良いと言われる。
念入りにタオルドライをして、アウトバストリートメントをつけ、化粧水もつけたところで暑いのでタンクトップ一枚になった。
するとドアをノックする音が聞こえ、ドアの小窓を眺めると、朝来た紺色の若い男性が立っていた。
タンクトップ一枚の私を見て慌てた様子で会釈し、どこかへ消えた。
何なんだよ…
朝来た紺色のユニフォームの若い男を思い出す…
研修医みたいな人…研修医じゃないのか…男性看護師?ではないな…誰だよ…
ドライヤーをかけながら考えた。
ベッドに貼ってある紙に、自分の名前とDr.◯◯と記載されているが、そのドクターが主治医なのだろう。
私の主治医は誰だ…まだ分からない。
しばらくすると先ほどの紺色のユニフォームを着た若い男が再度ノックをして入ってきた。
『先ほどは大変失礼致しました、今お時間ちょっとよろしいですか?』礼儀正しい人物だ。
『はい、大丈夫です』
その若い男がぶら下げたネームプレートをまじまじと見た。
ひらがなで名前が書いてある。
ベッドの紙切れにある名前と見比べた。
え…この人が先生…?
主治医ってこの人?
色が白く、ぱっちりとした二重、マスクの上からでも何となくわかる端正な顔立ちをしている。年は30歳過ぎくらいだろうか…
アレ…?この人、もしかして昨日内科医と一緒に来た人と同一人物?
内科医の背後からひょっこりと顔を覗かせて私を観察していた男だ!思い出した!!
ビックリしすぎて頭がフリーズした。
『お加減いかがですか?気分はどうですか?
少し質問があるので、答えたくない場合は無理しないでください』
家族構成、職歴、既往歴、家庭環境、直近の事までひと通り聞かれた。身辺調査だ。
『あなたは何故ここに居るかわかりますか?』
『は…?ネットで疲れちゃってODが止まらなくなったので、それが原因で入院したのだと思いますが…』
『そうですね…。最後になりますが、これは黙秘権がありますので答えたくない場合は答えなくて良いです。
これまで何らかの犯罪などで警察に逮捕などされたことはありますか?』
『は??…ないですよ…』
何を言ってるんだこの人は…。
『緊急連絡先としてご主人と叔母さま?の連絡先が記入されていますが、お母さまとはどうですか?』
『無理です!私が入院している事は主人から伝えてあります。メンタルが崩壊するので、今は極力関わらないようにしています。用があるときはこちらから母に連絡します!!』
語気が早まり、母の事を話すと涙がポロポロ溢れた…いけない、いけない…
『大丈夫ですか?とにかく今はゆっくりされてください。』
『あの…私の携帯電話は使えないんですか?』
『……あなたは主にSNSのトラブルで入院されましたので、しばらくは携帯電話から離れてもらいます…』
『仕事先からLINEなどの連絡が来ているかもしれないんです…それの返信だけでもダメですか?』
『……それについては少し考えます。今は携帯電話から離れて、まずはデジタルデトックスをしましょう。』
スマホの使用は却下された。
悔しいが仕方ない。
ひと通り話して、若い男性医師は礼儀正しく病室を後にした。
医師からの質問…母のこと、直近の事を話していたら自然に涙が出てきた。
何故逮捕歴なんかを聞くのだろう?
違法薬物でもやってそうに見えたのだろうか?
ひどく頭が混乱した。
あの人が主治医なのか…
この病院の医師は白衣を着ないのか、いや、昨日の内科医は白衣を着てたぞ。
これまでの主治医は私より遥か年上で、人生経験が豊かそうな安心して話ができるタイプの先生だった。
権先生、杉浦先生…2人ともどしっと構えた風体である。
こんなに若い(若く見えた)精神科医は初めてだった。
心を落ち着け、杉浦先生の言葉を思い出す。
『若くて“優秀″な医師や看護師がたくさん居るよ』
研修医か男性看護師に見えたあの男性が、今回の主治医なんだ…大丈夫だろうか…
それがDr.M先生の第一印象であった。
涙目を隠しながらベッドにもぐり込む。
誰も話す人がいない…普段なら仕事の準備をしている時間帯だ…ここは閉鎖病棟だったな…
生理2日目なのも手伝い、何もかも不安で仕方がない。
デジタルデトックスか…最近の若いドクターはそういう言い方をするんだ…
スマホはしばらくお預けだ。
寂しいがそれもいいかもしれない。
今の私はSNS、いやスマホ自体から離れる必要があるんだ…そりゃそうだ…
直近の出来事、Xの大炎上から半狂乱になった事を思い出す。
考えたくない!思い出したくない!!
全部ぜんぶ何もかも忘れてしまいたい…
涙が止まらなくなった。
ヤバい…でも今は大丈夫、ここは精神病院だ、薬も管理されてODもできない、良かった…
ひとしきり泣いて、する事がないことに気づいた。
そうだ!
入院期間中、頭がスッカラカンになってアホにないよう参考書と、譜読み途中の楽譜を持ってきたんだ…
私の生徒ちゃんは元気だろうか…
“急なことで入院する事になったので、夏休み期間中…当面の授業やレッスンができなくなり申し訳御座いません…後任の講師を探してもらうよう手配させていただきます…″
そんな文言を家庭教師とピアノの生徒さん、一人ひとりの保護者に電話やメールで連絡しては謝罪し、同時に驚かれた。
『先生、大丈夫ですか?とても心配です。』
『お見舞いにいきますので差し支えなければ病院教えてください!』『後任の先生…これまで何人も先生変わってもらいましたが、ウチの子は先生がいいと言っております、退院の目処が立たれたら教えてください…』
私が精神病院に入院する事など、どの保護者にも話していない…とてもじゃないが教える事などできない。所属している家庭教師協会にも別の病名で申告し、後任の講師を探してもらう手配をかけた。
夏休みは“巻き返し期間″のチャンスだ。
『先生が退院されるまで待ちます』と言われる親御さんも居られたが、時間は待ってくれない。未来ある子どもたちの時間を私の都合でお休みするわけにはいかなかった。
数年続いている生徒さん宅も数件あったが、仕方がない、悔しいが後任の講師に手配をかけ、私の椅子は譲った。
家庭教師とピアノ講師の仕事は椅子取りゲームに似ている。
(過去記事:音楽では食っていけない厳しさ&家庭教師の仕事参照)
講師なんて星の数ほど居る。
二度と会えないかもしれない生徒ちゃんの事を考えた。
ましてや精神病院に入院した講師を再度歓迎する会社や家庭なんて、どこにもないだろう。
『お見舞いなど大丈夫です、お気持ちだけで充分です』と言うしかなかった。
悔しくて情けなくて涙が出てきたが、いつか復職する時のために、英語のニューホライズンの中2の教科書を取り出した。
不規則変化動詞表を見ながら、再度頭に叩き込んでおこう。
自室のテーブルは小さいので、他の患者さんもチラホラ居る広間のテーブルで勉強しようと思い、筆記用具とニューホライズンを片手に部屋を出た。
16時過ぎ、詰所の前のテレビがある広い広間には、まばらに人が座っており、お茶を飲みながらパリオリンピックのハイライト、大相撲を観る人がそれぞれ座っていた。
本を読む人やノートに何か書いている人、ただ座っているだけの人も居る。
広間から外のテラスが見えた。
若い人たちのグループがオシャレなテラス席に数名座って楽しそうに何やら喋っている。
その光景はまるでどこかの大学みたいな景気だった。昼下がりの学生の群れにも見える。
でもあそこは“若者のグループ″で出来上がってるな…私はあそこには入れないな…
どこか寂しく感じながら、お茶があるサーバーの近くに1人で座り、ニューホライズンを広げた。
ノートを忘れたので詰所で適当な紙をもらい、筆記体で丁寧に英単語を書き出した。
いつも書いていた筆記体、急いで書くから字が汚いと生徒によく言われていたな…でも今は時間はあるから、この際ゆっくり丁寧に“最上級の筆記体″を書いてみよう…
しばらく不規則変化動詞のスペルを丁寧に書き出していたが、集中できない…
半分涙目の私は、ひと通り単語を書きだしたところで、お茶が出るサーバーに向かった。
昨日居たオカモトさんと鉢合わせた。
『おう、姉ちゃんもデビューか!俺はオカモトや!よろしくな!』
唐突だがオカモトさんは私を覚えていた。
『ハイ、ありがとうございます』
お茶と冷水が出るサーバーから、お茶のボタンを押し、ピンクのプラスチックコップに2回注いだ。
オカモトさんは、何ごともなかったかのように“男性ゾーン″に向かって引き返した。
お茶がこぼれないよう、自分の座っていた席に戻っていると、若い女の子が声をかけてきた。
『こんにちは!昨日から入ってきた人ですよね?よかったらテラスで話さない?』
ハタチくらいだろうか、黒髪の綺麗な細い女子が私に声をかけ、テラスの方を指差す。
『はい、昨日から入ってきたんですけど…皆さんお若いでしょう…迷惑になったらいけないのでいいですよ…』
『そんなことないですよぉ!お姉さんも若いです!年齢関係ないですよ、色んな人いますから…みんなテラスで話してるんです。よかったら来てください!』
閉鎖病棟の住人である彼女は、屈託のない笑顔で話しかけてくる。
『ありがとうね…でもね、あそこに居る人たちと、たぶん年代がまるで違うと思うの…あなたハタチくらい?』
ダメだ、タメ口になってしまった…
『私は21歳でーす!凛って言います!』
敬礼するポーズで私に微笑む。
快活な女子だ。
『あはは!ヤッパリ若いよ!私40代半ばだよ…みんなドン引きすると思うからいいよ、ありがとう!』苦笑いで答えた。
『マジで!?お姉さん、見えない!お姉さんと同じくらいの人もいるよ、行こ行こ!』
彼女の勢いの良さは、内心沈んでいた私にとって非常に嬉しかった。
40代に見えないとはお世辞だろうが、若い女の子から声をかけられて悪い気はしない。
『それならちょっとだけお邪魔しようかな…ちょっとこの本を片付けてくるね。』
と彼女に言い、内心ドキドキしながらニューホライズンと筆記用具を自室のベットの上に放り投げた。
広間に戻ると、先ほどの凛と名乗る女の子が私を待っていた。
『ホラホラ、はやく…みんな待ってるから行こ行こ!』
後をついていく、彼女がテラスのドアを開けるとムワッとした外気が顔に当たる。
オシャレなテラス席に出ると、4人の男女が一斉にこちらを向き、その中の1人の男が私に手を振った。
『いらっしゃーい!ようこそようこそ〜、待ってたよ〜お好きな席へどうぞ〜!』
ここって本当に精神病院の閉鎖病棟なの?
何だか皆穏やかで楽しそうなんですけど…
心の中でボヤきながら、先ほどの凛と名乗る女子の隣に私は腰をかけた。
https://note.com/kota1124/n/n17d60efa24a2