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モデレーターとして、これからも心がけたいこと

記事を書こうと思ったきっかけ/この記事の目的
2年ほどユーザビリティ調査やサービス価値の検証を行うためのインタビューに携わってきたため、自分がこれからも心がけたいことを振り返り、まとめてみようと思ったことがきっかけです。
切り口は色々あると思いますが、私が業務で直近に担当したインタビューのモデレーター※で、これからも心がけていきたいことについてまとめていきます。
今回は、わたしが経験したことをベースにまとめていますので、初めてインタビューをしようと思ってる人やインタビューをしてみたけどいまいち欲しい結果が得られなかった方の学びになれば幸いだと思います。

※モデレーター:インタビューで質問をする人

わたしが担当していた業務範囲

わたしはUXリサーチャーとして大体、以下の順で業務を行ってきました。

  1. クライアントからの案件依頼

  2. 調査要件の整理/手法の検討

  3. リクルーティング※/インタビュースクリプト※作成

  4. 実査環境の準備

  5. インタビューのモデレーター

  6. インタビューの結果をまとめる

今回はこの業務範囲のインタビューのモデレーターについて記載していきます。

※リクルーティング:インタビューに答えてくれる人を集めること
※インタビュースクリプト:インタビューで聞くことを記載しておく台本


これからも心がけたいこと

私がモデレーターをする上で心がけたいことを事前準備、実査期間中、実査後の時系列順にまとめます。

事前準備

  • 要件定義、レポートに必要な要件をしっかり確認する
    インタビュー各質問で"何が知りたくてこの質問をするのか"を確認しておくと実査中、適切な質問の深掘りをすることができます。
    インタビュースクリプト制作時は必ず意識していても、時間が経つとこの事をつい忘れてしまいがちですので、私はインタビュースクリプトに記載して常に確認できる状態にしておくようにします。
    メモの書き方としてオススメはインタビュースクリプトの余白部分に各質問ごと"この質問は何が知りたいのか"を記載しておくことです。そうすることで忘れてしまった時に素早く確認できます。
    Googleドキュメントにインタビュースクリプトをまとめている場合はコメント機能をうまく使うとインタビュースクリプトが汚くならないです。

Googleドキュメントの記述例
  • インタビュースクリプトの質問事項には優先度をつける
    インタビューをオンラインで実施しても、対面で実施しても何かしらのトラブルが起き、インタビュー時間が少なくなる時があります。その時に備え、各質問に「最低限聞かなければならない、優先度が高い質問」と「最悪これは聞かなくても調査に支障はない、優先度が低い質問」の目印をつけておくことがオススメです。そうすると時間がなくなった時に最重要の質問を聞き損ねる可能性が減ります。
    また、調査をクライアントに依頼されている場合はクライアントとすり合わせておくと認識齟齬が生まれないです。
    私は質問の後ろに「高」「低」と記述するようにしています。

ちなみに実査当日のトラブルはこんな例が考えられます。
■オンラインインタビュー
・被験者※/モデレーターがインタビューに遅刻する
・接続不良になり被験者とコミュニケーションが取れない
・被験者/モデレーターのマイク/スピーカー/顔を写すカメラなどの機器がうまく動かない
・画面共有が相手に見えない
・被験者に試してもらうプロトタイプがうまく動かない
■対面インタビュー
・被験者/モデレーターがインタビューに遅刻する
・インタビューの中継がうまく行かない
・被験者に試してもらうプロトタイプがうまく動かない

※被験者:インタビューを受ける人

  • プレテスト/モデレーター個人で行う練習を入念に行う
    最初のうちはコレが一番大事だと思っています。
    ここでいうプレテストとは、実際のテストの前に実査の被験者とは別の人に被験者役をやってもらい、インタビューを通しで行うことです。インタビュー内容を知らない人に被験者役をやってもらうのがいいですが最悪自分以外の人であれば誰でも大丈夫です。

    プレテストをすると以下のようなメリットがあります。
    1. 通しで全てやることでインタビューにかかる時間を計測できるため、インタビュースクリプトの内容を調整できる
    2. 実際に質問をしてみることで「被験者が回答に困るような聞き方をしている質問がないか」がわかるので聞き方を調整できる
    3. 質問に対してリアルな回答を得られることで、「知りたい内容ではない回答が出るような質問はないか」を発見することができる
    4. プロトタイプなどの操作で動かしにくい箇所、想定と違った挙動をしている箇所がないか確認できる

    また、インタビューの練習の回数を重ねることで実査当日緊張しにくくなります。(私は結構、緊張するタイプなのですが練習の回数を重ねるとあまり緊張を感じないです。)
    練習する際はインタビュースクリプトを音読するだけでなく、実査の状況を再現しながら練習することが大事です。インタビュー経験者がいる場合はその経験者にインタビューを聞いてもらい、フィードバックをもらえたらなお良いと思います。

  • 環境整備を入念に行う
    接続や録画などの機械関係でうやむやなものや安定しないものがある時に限って、実査当日に想定外のことが起きます。(当日に限ってマイク不良が発生したり、録画カメラが動かなくなったり…)
    インタビューの経験があまりない頃は想定外のことが起きると本当にパニックになってモデレーターどころじゃなくなるので、なるべく最悪のケースを色々想定してそれへの対応策を準備しておくようにしています。
    できればそういった機械トラブルが起きた際にすぐに対応できるよう、実査当日はモデレーター以外にサポーターの方を控えておくと安心です。

実査期間中

  • 自分が緊張するとギクシャクしたインタビューになるので、リラックスして臨む
    自分の緊張は被験者に意外と伝わるので、緊張しているとインタビュー自体が結構ギクシャクします。そうなると被験者の本音が聞き出せなかったり、うまく深掘りできなくなってしまうのでリラックスして臨むようにします。
    緊張しない方法としてオススメは、事前に十分すぎるくらいの準備しておくことと、インタビューの通しの練習を重ねることです。

  • 自分の口癖に注意する
    私はよく話す前に「あの」とか「では」とかを必要以上に言いすぎてしまう傾向にあるので自分の中で極力言わないように心がけています。
    なぜ口癖を気にするかと言いますと、聞き手が話し手の口癖を一度気になり始めてしまうとその事に気を取られ話に集中できなくなってしまうためです。
    これは意識するだけでだいぶ減らせるのでプレテストで口癖等なかったか他の人に聴いてみるといいと思います。

  • 被験者の回答に喜んだり、落胆した反応を見せない
    特にユーザービリティ評価などでプロトタイプを被験者に扱ってもらう時、「このサービスいいですね!」など喜んでもらうとつい嬉しくなって「はい!いいですよね、そのサービス!」などと返事をしたくなるかもしれませんが、モデレーターが被験者の意見に過度に反応してしまうと被験者にバイヤスがかかり、その後の回答に影響が出てくる場合があります。
    ですので、自分はあくまで公平な立場と思ってモデレーターに臨むようにしています。

    ただ、あまりにも淡々と機械のようになってしまうと被験者も緊張してしまうのでそこの塩梅が難しいなと感じています。(応答に関してはまだ模索中です)

インタビューのテクニックについては他にも大切なことはたくさんあるので書籍を読むのもオススメです。私のオススメの書籍のURLも共有しておきます。

UXリサーチの道具箱
ユーザー調査の概要から調査結果の利用方法まで幅広く書いてある本です。
インタビューだけで言うと「師匠と弟子」と言う考え方が非常に参考になりました。
ユーザーインタビューのやさしい教科書
ユーザーインタビューのやり方に特化した本です。
ユーザーインタビューの環境づくりや細かいテクニックなど全部乗っているので本当に初めての人でもインタビューを始められる本となってます。

実査後

  • 自分がモデレーターをやっている時の録画を見直す
    自分の聞き方の癖や被験者が言いづらそうにした聞き方はなかったかなどを自分で振り返るために録画したインタビューを見返すのがオススメです。
    最初のうちは自分の声を聞くのが恥ずかしい人もいるかもしれませんがそこはグッと堪えて反省点を見つけて次回に生かしましょう!


まとめ

今回はわたしがモデレーターを2年担当してみてこれからも気を付けたいと感じたことのご紹介でした!
リサーチを重ねていけば今後もどんどん更新されていくと思いますので、これからも定期的にまとめていきたいと思います。
インタビューを始めたばかりの人の参考になれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました!