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医薬品安全使用のための業務マニュアル

診療所を開設する際に作成した医薬品安全使用業務マニュアルを共有します。クリニック経営者・訪問看護ステーション経営者等、都度編集して活用して頂ければ幸いです。

医薬品安全使用のための業務手順書
坪田クリニック.

1. 採用医薬品の選定


○ 採用可否の検討・決定
・新規医薬品(新薬を含む)の採用については、院長及び採用担当者がその薬剤の添付文書情報を充分に確認し、また安全性についての情報収集した上で採用する
・後発医薬品の採用については院長及び採用担当者の管理の下、十分な医薬品情報の収集を行い、品質・流通等を考慮した上で採用する


2. 採用医薬品情報の作成・提供


 ○ 採用医薬品集の作成と定期的な見直し
 ・新規採用医薬品の医薬品集・添付文書集を作成し、定期的な更新を行う
 ○ 新規採用医薬品に関する情報提供
 ・新規医薬品の採用については、医薬品情報担当者及び卸売業者から事前に情報提供を受け、同種同効品との有意性等を検討したうえで採用する

1. 医薬品の発注


 ・院長の指示のもと、発注担当者として指名を受けた者が責任を持って発注先へ発注する
 ・発注の際は現状在庫量及び使用量を把握し、定量を定められた時間に医薬品卸に発注を行う
 ・緊急時の発注の際は、納品時間・納品場所等を明確に伝え、発注記録が確認できる体制
 ・医薬品卸連より提供の簡易発注端末を利用し、日々定時に発注を行う


2. 入庫管理と伝票管理

・納品された医薬品は先入れ先出しを原則とする
 ・発注記録は保存し、納品時に行う検品の資料とする
 ・納品伝票は卸業者ごとに管理し、請求書との確認を行う


1. 保管管理


 ○ 医薬品棚の配置
 ・類似名称、外観類似の医薬品は取り違いを防止する目的で、棚の配置に配慮して保管する
 ・同一銘柄で複数規格、複数剤形がある医薬品は、取り違い防止する意味で隣接して保管し、他規格があることを示すマークを貼付するなどして注意を促す
 ○ 医薬品の充填
 ・医薬品棚への充填については、先入れ先出しを徹底する
 ・包装変更品について、他の職員にもわかり易い表示にてラベルの貼付を行い情報を共有する
 ・散剤を充填する際は、基本的に複数人にて、瓶に記載されている薬品名と充填をしようとする薬品名が同様のものかを確認した上で行う
○ 規制医薬品(麻薬、覚せい剤原料、向精神薬(第1種、第2種)、毒薬・劇薬)
 ・院長及び医薬品安全管理責任者の責任のもと管理を行う
 ・麻薬及び向精神薬取締法、薬事法等の関係法規の遵守、法令を遵守した使用記録の作成・保管を行う
 ・適切な在庫数・種類の設定を徹底する
 ・麻薬、向精神薬、毒薬については他の医薬品と区別した保管とし、施錠管理を行う
 ・盗難・紛失防止の措置として、定期的に在庫量の確認をする
 ○ 特定生物由来製品
 ・特別生物由来製品については、製品ごとに規格単位、製造番号、購入量、購入年月日を管理簿に記録し、納品書も保管する
 ・使用記録簿の作成・保管を行う。患者ID、患者氏名、使用日、医薬品名(規格、血液型も含む)、使用製造番号、使用量(20年間保存)
 ・購入履歴も管理する。購入年月日、購入卸
 ○ 特に安全管理が必要な医薬品(要注意薬)
 ・特に安全管理が必要な医薬品については、予め薬品名、名称類似、外観類似、規格違いへの注意を促すことを周知する
 ・抗がん剤、免疫抑制剤等は他の医薬品と区別した表示等により、保管場所を区別し管理する
 ・麻薬、向精神薬、毒薬、インスリン製剤等、特に安全管理が必要な医薬品については、毎日業務終了時、使用量と在庫量の確認を行い、記録に残す


2. 品質管理


 ○ 品質管理
 ・有効期間・使用期限の管理は、年2回、定期的に確認する(月末、棚卸時等)
 ・使用期限の短い医薬品から先に使用する(先入れ先出し等)
 ・温度、湿度、遮光等に関する管理が必要な医薬品は、それぞれ保管条件を添付文書等で確認した上で保管する
 ・冷蔵庫については、1日2回(午前・午後)温度確認を実施し適正温度の維持に努める
 ・不良品(異物混入、変色)を発見した場合は、速やかに購入卸を通じ製造メーカに調査以来を行うと共に、場合によっては厚生労働省に報告する
 ○ 処置薬
 ・処置薬については、保管時の湿気等に気をつける
 ・冷所・遮光・湿度に注意した保管
 ・消毒薬については、用途別に保管する


1. 患者情報の収集・管理・活用


 ○ 患者情報の収集・管理
 ・初診時には、問診表への記入を依頼し、未記入の項目については、患者への直接インタビューを実施するなどし、確実な情報収集に努める
 ・患者の既往歴、妊娠・授乳、副作用歴・アレルギー歴、小児、高齢者のADL、体重、他科受診、多剤併用(一般用医薬品、健康食品を含む)、嗜好(たばこ、アルコール等)等の患者情報の収集は、定期的に更新し(6ヶ月に1回)その情報を診療録に記録する
 ・患者情報の収集に当たっては、守秘義務及び個人情報保護法に基づくプライバシー及び個人情報の保護に配慮する
 ○ 患者情報の活用
・患者情報の活用に当たっては、患者毎の薬歴管理の実施、患者情報(禁忌医薬品等)を施設間で
共有する仕組みの構築に活かす。また、保管の際には部屋に施錠する
 ・施設間におけるお薬手帳の活用
 ・公費の確認は、出来る限り実施する


2. 検査・処置における医薬品使用


 ・検査指示は緊急以外口頭指示を避ける
 ・検査指示を行った医師は指示簿等に記録を残す
 ・検査試薬使用時にはアレルギー歴を必ず確認する
 ・ショック時に使用する救急医薬品の整備を行う


3. 処方


 ○ 正確な処方せんの記載
 ・患者氏名・年齢・薬名・分量・用法・用量・発行年月日・使用期間・診療所の名称・所在地を明記する
 ・医薬品の用量の単位(㎎ ml cc等)を統一しておく
 ・1V(バイアル)、1U(単位)などの間違えやすい表記は避ける
 ○ 処方変更時の説明
 ・薬剤変更理由について、患者への説明を明確に行う
 ・用法・用量が従来薬と異なる場合いは特に丁寧に説明する
 ・後発品処方の場合、患者への負担や医薬品の品質についても可能な限り説明を行う


4. 調剤


 ○ 処方監査
 ・病態と処方内容との照合について、患者の症状、訴えと処方内容に相違がないか他剤との取り間違いがないか常に注意を払う
 ・重複投与、投与禁忌、相互作用、アレルギー歴、副作用歴等を十分に確認する
 ・レセコンへの入力時も細心の注意を払い、ミス入力を行わないよう注意する
 ○ 調剤業務(内服薬、外用薬)
 ・正確な調剤業務は医薬品の適正使用の大前提である。調剤者は調剤過誤がもたらす危険性を常に意識し、必要に応じた業務環境の整備、業務内容の見直しを行う
 (患者の安全に視点をおいた調剤業務の実施)
 ・特に安全管理が必要な医薬品(要注意薬)の調剤については、患者毎の薬歴管理を行い、用法・用量、服薬期間、服薬日等を記載する


5. 調剤薬の交付・服薬指導


 ○ 患者、処方せん、医薬品、薬袋等の照合・確認
 ・患者、処方せん、医薬品、薬袋等の照合・確認を励行する
 ・患者氏名は、必ずフルネームで呼び、本人及び代理人であることを確認する
 ・患者の症状、訴えと処方内容に相違はないかを確認する
 ○ 調剤薬の交付
 ・調剤薬の交付は、薬剤の実物と薬剤情報提供文書を患者に示しながら説明する
 ○ 医薬品情報の提供
 ・医薬品情報の提供として、薬効、用法・用量及び飲み忘れた場合の対処方法等を伝える
 ・処方の変更点、注意すべき副作用の初期症状及び発現時の対処、転倒のリスク(服薬による眠気、筋力低下、意識消失)についての説明を行う
・使用する医療機器、医療材料などの使用方法等を説明する
 ・その他服用に当たっての留意点(注意すべき他の医薬品や食物などとの相互作用、保管方法)を伝える
 ・薬剤情報提供文書、パンフレット、使用説明書等を用いて説明する
 ・投薬時に副作用、相互作用、症状の変化、コンプライアンス等についての情報収集を行う
 ・飲み忘れ防止策、副作用発生時の対処法、生活上の注意等も伝える


6. 薬剤交付後の経過観察


 ・患者情報の収集と処方せん受け取り薬局への情報提供は、電話又は文書にて行う
 ・副作用の初期症状の可能性、コンプライアンスについても十分配慮し経過観察を行う
 ・副作用の初期症状が発生した場合は、処方医へ速やかな連絡を行うよう指導する
 ○ 患者等からの相談窓口の設置
 ・緊急時の体制整備として、病診連携、薬薬連携等施設間で協力体制の整備状況を記載する
 ・対応手順の整備(副作用初期症状の確認、服用薬剤及び医薬品との関連の確認)についても現状について記載する
 ・患者等からの相談窓口の設置の有無、夜間・休日の体制整備、患者への広報等についても対応を記載する


1. 医薬品適正使用のための剤形、用法、調剤方法の選択


 ○ 剤形の検討と選択
 ・患者の状況及び生活環境を考慮した服用しやすい剤形を選択する
 ○ 調剤方法の検討と選択
 ・患者の生活環境(食事、排泄、移動等)を踏まえた用法を選択する
 ・一包化、粉砕、簡易懸濁法の可否など患者特性を踏まえた調剤方法を選択する
 ・経管チューブによる投与が可能か否かの確認をした上で投薬を行う
 ・担当ケアマネジャー、介護者等と剤形、用法、調剤方法について協議を行う


2. 患者居宅における医薬品の使用と管理


 ○ 医薬品の管理者及び保管状況の確認
 ・医薬品の管理者の確認及び管理状況を確認する
 ・患者の管理能力、管理者の必要性に配慮する
 ・冷所保存、遮光保存等の適正な保管・管理を患者及び介護者へ十分説明する
 ○ 副作用及び相互作用等の確認
 ・副作用の初期症状の観察を誰が行うかを明確に決める
 ・他科受診、一般用医薬品を含む使用医薬品等の情報収集、情報提供に努める
 ・訪問時には、コンプライアンス情報についても確認する
 ○ 連携する医療職・介護職が閲覧できる記録の作成
 ・連携する薬局・介護職が閲覧できる記録の作成を依頼し、訪問時の薬学管理情報についてかかりつけ薬剤師に情報提供する
 ・必要に応じ、かかりつけ薬剤師、看護師、ケアマネジャー、ヘルパーと情報交換を行い、対応策・改善策を検討する


3. 在宅患者または介護者への服薬指導


 ○ 患者の理解度に応じた指導
・患者の理解度に応じて、表示、表現、記載等工夫する
 ・服薬カレンダー、点字シール等を活用し積極的に服薬指導を行う
 ○ 服薬介助を行っている介護者への指導
 ・服薬介助を行っている介護者がいる場合は、服用上の注意事項、保管・管理上の留意事項、服用後の症状の変化に対する注意等について指導する


4. 患者容態急変時に対応できる体制の整備


 ○ 夜間・休日の対応方法
 ・夜間・休日の対応方法として、緊急連絡先を周知させると共に緊急時に連絡可能な方法を伝えておく


1. 医薬品情報の収集・管理


 ○ 医薬品情報の管理部門及び担当者の決定
 ・医薬品情報の管理部門及び担当者の責任を明確にする
 ○ 医薬品等安全性関連情報・添付文書インタビューフォーム等の収集・管理
 ・医薬品情報担当者を決定し、医薬品等安全性関連情報・添付文書・インタビューフォーム等の収集・管理、緊急安全性情報、禁忌、相互作用、副作用、薬物動態、使用上の注意等については関連のホームページを利用し常に情報更新を行う
 ○ 医薬品集、添付文書等の作成・定期的な更新
 ・採用医薬品集、添付文書集等の作成および定期的な更新を実施する


2. 医薬品情報の提供


 ○ 緊急安全性情報等の提供
 ・緊急安全性情報等が発表された場合は、全職員への迅速な情報提供に努める
 ○ 新規採用医薬品に関する情報提供
 ・新規採用医薬品に関する情報提供として名称・成分名・適応症・用法・用量・相互作用・副作用・禁忌・配合禁忌・使用上の注意・保管管理上の注意・安全上の対策の必要性等、速やかに各職員へ情報提供を行う
 ○ 製薬企業等からの情報
・製薬企業の自主回収及び行政からの回収命令、販売中止、包装変更等は必要に応じて各職員へ周知する


1. 情報の提供


 ○ 情報内容
  医薬品に関する情報提供
 ・粉砕調剤など調剤上の工夫を必要とする場合は、患者の了解を得た上で処方箋に明記する
 ・入院が予定されている患者において、その入院先医療機関の医師に対し服薬歴等の情報提供を行う                 
 ・服薬期間の管理が必要ない薬品の投与開始日について、かかりつけ薬局と情報共有を図る
○ 患者に関する情報提供
 ・常にコンプライアンスの状況等を把握し、他施設の医師及び薬剤師に対し、定期的に服薬情報提供を行う
 ・他施設の医師及び薬剤師に対し過去のアレルギー歴、副作用歴に関する情報提供を積極的に行う
 ・必要に応じて他施設の医師及び薬剤師に対し、家族のアレルギー歴、副作用歴、使用禁忌医薬品の情報提供を行う
 ○ 情報提供の手段
 ・かかりつけ薬剤師との間で「お薬手帳」による情報共有を行う
 ・必要に応じて医療機関に対し服薬情報提供書による情報提供を行う


2. 他施設からの問い合わせ等に関する体制整備


 ○ 他施設及び薬局への問い合わせ
 ・問い合わせは緊急時を除いては文書にて行う。又、問い合わせ内容及び回答については診療録に記録し保管する
 ・疑義照会の内容についても診療録に残しておく
 ・回答を診療録等へ記載し次回来院時にその記録を反映した指導を行う
 ○ 他施設及び薬局からの問い合わせ
 ・問い合わせ者の身分確認を確実に行う
 ・回答及び情報提供は患者の同意を得てから行う
 ・FAXでのやり取りを基本として問い合わせ内容と返信した内容は診療録に記載し、原紙も保管する


3. 院外処方箋の発行


 ・院外処方箋の発行前の院長及び薬剤師による点検の励行


4. 緊急連絡のための体制整備


 ○ 地域の医療機関及び薬局との緊急時のための連絡体制
 ・緊急連絡用として近隣医療機関及び近隣薬局に携帯番号を連絡しておく
 ・緊急連絡用として薬袋に緊急時の連絡先(携帯番号等)を印刷しておく
 ・災害時における市町村のマニュアルを確認する


1. 医薬品に関連する医療安全の体制整備


 ○ 院長または医薬品安全責任者に速やかに報告される体制の整備
 ・事故発生時には、院長または医薬品安全管理責任者に速やかに報告する。院長不在の場合は携帯電話等により速やかな対応をとる
 ・院長に速やかに報告される体制を整備する
 ○ 緊急時に備えた体制の確保
 ・緊急連絡網の整備を行う。周辺医療機関の救急窓口及び連絡先を医院内に明示しておく
 ○ 事故発生を想定した対応手順の作成と定期的な見直しと職員への周知
 ・事故発生時の対応マニュアルを作成し、職員の事故発生時を想定したロールプレイングの定期的な実施により、速やかな対応を身につけるとともに現実に即したマニュアルの更新を行う
 ○ 自他施設のヒヤリ・ハット事例(インシデント事例)の収集・分析とそれに基づく事故防止対策の策定・実施
 ・院内で発生したヒヤリ・ハット事例の収集・分析を行い、インシデントレポート・アクシデントレポートに記載し、医薬品安全管理責任者に提出する
 ○ 医療安全に関する職員研修の実施
 ・医療安全に関する文献の整備、また医療安全の研修会への職員参加により得た知識を職員全員が共有する
 ○ 医師会等との連携体制の整備
 ・医師会の会合への定期的な参加によるインシデントレポートの事例共有を図る。また他医療機関の事例に対し、院内で情報共有を行い事故発生防止を図る

2. 事故発生時の対応


 ○ 救命措置
 ・副作用の初期相談を受けた場合は、即座に服薬中止を伝えるとともに他医療機関(病院)と速やかに連携をとる
 ○ 具体的かつ正確な情報の収集
 ・事実関係を明確にするため事故を起こしたと思われる薬剤の情報を整理しておく(相互作用)
 ○ 責任者または管理者への報告
 ・事故報告を受けた職員は院長及び医薬品安全管理責任者に即座に報告する
 ○ 患者・家族への説明
 ・院長または医薬品安全責任者は調剤事故の事実関係を適切に整理した上で、患者・家族に連絡・説明を行い適切な初期対応を行う


3. 事故後の対応


 ○ 事故事例の原因等の分析
 ・報告書に基づき原因を究明する。薬剤の不良等が発見された場合は納入卸に連絡を取り、製造メーカへの問い合わせを行う
 ○ 事実関係の記録、事故報告書の作成
 ・発生した事実関係をすべて記録として残し、事故報告書としてまとめる
 ・再発防止対策あるいは事故予防対策の検討・評価、職員への周知
 ・再発防止のための業務手順書が遵守されているか、また変更すべき点はないかを検証し職員の意見を収集する
 ○ 患者・家族への説明
 ・処方医師の指示に従う
 ○ 関係機関への報告・提出
 ・医薬品に関する事故報告書は地区医師会と連携の上、日本医師会に速やかに提出する


1. 職員に対する教育・研修の実施


 ○ 医療安全、医薬品に関する事故防止対策、特に安全管理が必要な医薬品(要注意薬など)に関する教育研修の実施
 ・医院内での計画的かつ定期的な研修会や報告会の実施、また報告事例の検証を行う
 ・医師会や薬剤師会主催の外部講習会・研修会への参加、また職員がそのような講習会に参加しやすい環境を提供する
・製薬企業による医薬品安全使用に関する研修会も検討する
・医療安全に関わる書籍の抄読による自己研鑽を周知
・医薬品安全管理責任者による業務手順書の整備と検証を定期的に行う
※資料として、特に安全管理が必要な医薬品は、商品名を明記した資料を作成する

作成日 令和 年  月


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