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夏の夕方に吹く冷房の風は、さみしい。
小学校低学年の頃の夏休み、わたしは畳のうえで児童書を読んでいた。ソファの上では母が昼寝をしている。エアコンの唸りとともに届けられる冷風は、わたしに少しの鳥肌をもたらした。あの時から、わたしは夏の夕方の冷房にさみしさを覚えるようになったのである。どこからともなくやってくる心地の良い孤独感はやがて、ひとしきりの涙を呼び起こす。
今でも、わたしはあの夕方の空気感の虜である。でもそれは、冷房の唸りが聞こえるくらいに静かな場所でないと味わえない。それも西日が差し込んだ時間帯に、だ。夏の陽射しというのは不思議なもので、確かに茹だるような暑さなのに、光はなぜか爽やかな青をしている。そんなアンバランスな陽射しの心持ちが、わたしをより一層不安にさせる。そんな陽射しがリビングのテーブルに直射するころ、冷房もまた強さをまして部屋を涼しくさせる。そんな陽射しと冷房の対立に、小さい頃のわたしはまんまと乗せられてしまったのだ。
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