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5/1メーデーにパリの大規模デモに参加したら、催涙ガスで目と鼻がやられた

Bonjour!
少し前ですが、5/1にまたまたフランスでデモに参加してきました。もはやこれが私の留学の中心となっている笑

フランスの5月1日

フランスでは、毎年5/1はFête de Travail(労働の日)、祝日です。世界的に「メーデー」と呼ばれるこの日は、1886年のアメリカでのゼネストが起源となっていて、フランスだけでなく多くのヨーロッパの国で祝日となります(フランスでは1948年から)。普段は祝日でも開店している私のバイト先もこの日はさすがにお休み。

また、フランスでは5/1にMuguet(すずらん)を大切な人に贈る習慣があります。プレゼントされた人には幸せが訪れるらしい。この習慣の起源について、ルネサンス期の国王シャルル9世が、5/1にすずらんをプレゼントされ、それを気に入って、宮廷の女性たちにすずらんの花を贈ることにしたという逸話があります。

しかし、メーデーとすずらんは無関係ではありません。

実は、1789年の革命時は、すずらんは5/1ではなく共和国記念日である4/26と結びついていました。そして、1886年の5/1メーデー以降、労働者のシンボルとされていたのは、églantine rouge(赤い野バラ)だったそう。
1941年(この当時、パリはドイツに占領されていたため、フランス中部の町Vichyに軍人政権が敷かれていた)に、フランス第三共和政最後の首相であるフィリップ・ペタン元帥が、« Fêre du travail et de la concorde sociale »として、正式に5月1日を労働の日として認めました(この時はまだ祝日ではない)。それと同時に、労働の象徴が、左翼や共産主義を連想させる赤い花から白いスズランに置き換えられました。

5/1近くなると、花屋やスーパーなど町中でスズランが売られています。

まだまだ諦めないフランス人

話は戻ってデモへ。
なんと今回で、反年金改革デモはなんと13回目。前回説明した49.3に対する反対票は国会で過半数に達せず、結局マクロン政権の年金改革は国会を通ってしまいました。

前回の記事はコチラから↓

49.3は、年金改革に賛成か反対か、というよりも、現内閣の解散に賛成か反対かが問題であるため、「年金改革には反対だけど、今の内閣が解散するのは嫌だ」と言う議員は、49.3に対して賛成票を入れることになります。
なので、私の周りの友達はそこまで期待しておらず、この結果は意外と予想通りだったみたい。

年金改革案は通ってしまいましたが、次の大統領の時にきっと受給開始年齢が引き下げられるはず、ということを期待して、自分たちの意見を主張するために、まだまだデモを続けているようです。

今回のデモに参加して

今回は大学の友達数人とデモに参加。
デモでは何百もの団体が列を率いて行進していますが、今回は一つの団体に絞るということはせず、自分たちのペースで歩いたのでいろんな団体を見ることができました。
年金改革反対の他にも、反資本主義、反ファシズム、フェミニズムなど色々なスローガンが見受けられました。

右翼反対の旗

今回は14時にRépubliqueスタートで、18時ごろにNationにゴールというルート。

皆さんウワサに聞いている通り、フランス人はどんなに土砂降りでも傘をささない人が多いです。14時から1時間ほどかなり土砂降りの雨が降っていましたが、フランス人の友達と一緒だったので、その中を駆け抜けました。傘を持ってくるのを忘れたので、びしょ濡れになり、かなり寒かった。

デモの時には、こんな感じで至る所で何かが燃えているのですが、マジで寒すぎたので、これがキャンプファイアーみたいな感じで暖かくて、とても有り難かったです。

15時半くらいから、少し晴れてきて安心。ソルボンヌ大学の団体も見えて、なんとなくみんな興奮していました。

18時ごろにNation付近に着くと、こんな感じでマスクやゴーグルをつけている人がたくさんいました。というのも、ゴール付近では、デモ隊と警察の衝突が起こり、警察が催涙弾を投げるため、催涙ガスが充満しているのです。というわけで、私もここで初めての催涙ガス体験笑
玉ねぎを切っている時に涙が出る感覚に似ていて、それにプラスして鼻にツーンとした感覚がありました。くしゃみも酷かったです。

「催涙ガスが充満している付近では変に走らないように」と、エキスパートの友達から教わりました。変に走ってしまうと、警察に怪しい人だと思われて攻撃されてしまう恐れがあるようです。

私は幸いにものうのうと生きて帰ってこれましたが、報道を見ると、衝突やけが人の数がいつにも増して多かったみたい。

デモと鍋たたき

フランスでは、鍋は政府への抵抗の象徴とされています(世界的に?)。
歴史上初めて、鍋が抗議デモの象徴となったのは、1830年の七月革命時だとされています。後継者となった国王ルイ・フィリップに不満を持った共和主義者たちが「シャリバリ(charivari)」という風習を真似て自分たちの意見を主張としたそう。

シャリバリは、中世ヨーロッパの時代から行われていた民衆的儀式。年齢差や身分差の大きい結婚や再婚,夫の横暴,などの性的反秩序に対して,若者たちが,楽器をたたいて,襲撃し,さらし者にして罵倒したり,非難したりというもの。共同体秩序の保守に不可欠の役割を果たしていました。

この鍋たたきが、今回の反年金改革デモはもちろん、マクロンの演説の際にも行われ、見事にマクロンの邪魔をしています。これを受けてマクロンは、 « Ce ne sont pas des casseroles qui feront avancer la France(フランスを前に進めるのは鍋じゃない) »、« Les œufs et les casseroles, c'est pour faire la cuisine(卵と鍋は料理をするためのものです) »、と鍋たたきを批判していました笑

マクロン政権に対する学生の意見

何回も書いている通り、私の大学は学生運動が活発な大学なので、政治的な意見をしっかり持っている人が周りに多くいます。

今回のデモに積極的に参加している周りの友達に話を聞くと、みんな、「今は自分達の未来にとって大事な時なんだ」みたいなことを言う(カッコいい、私もいつか言ってみたい)。
いやいや、年金受給開始年齢の引き上げなんてしょうがないんじゃない?って思ってしまうけれど、彼らにとっては違うらしい。

「マクロンはいつも自分の改革が正しいと思ってる。解決策はコレしかないんだって言う。今回の年金改革は、年齢引き上げしなくたって、1年の収める額を多くするとか、富裕層が納める割合を高くするとかでも十分解決できる。2018年の燃料税引き上げの時もそうだった。値段を高くすることで化石燃料の消費削減を目指した訳だけど、解決策は他にも考えられたはず。マクロンはいつも国民の意見を聞かないし、富裕層の味方をしてばっかりでうんざり。」

私の周りは割と左寄りの人が多くて、こういうような意見をよく聞きます。

フランスでも極右イデオロギーが蔓延

私の周りは左派が多いと言いましたが、最近だと右翼勢力も台頭してきています。ソルボンヌ大学の集会では、右派と左派が衝突を起こすこともあるらしい。

フランスの極右政党の代表として有名なのはやはり国民連合RNのマリン・ルペン。EU<フランスという自国民優先主義を掲げ、対外国人政策においては移民の管理を徹底し、特にイスラーム教徒に対しては厳しく扱う、と言った主張。年金改革に対してルペンは、2022年の大統領選挙時には、60歳への引き下げを検討していました。

この反年金改革デモに呼応して、極右派の国民も立ち上がっています。先日の5/6には、ドイツのナチスの歴史や政策を正当化する「ネオ・ナチ」と呼ばれる、黒い服を着た集団約600人がデモを起こしたことがフランスでニュースになりました。

歴史的にファシズムは危険な思想だと考えられているため、中には、極右勢力のデモを禁止しようとする政治家もいるようです。しかし、フランスでは人権宣言によって、全ての国民にストライキを起こす権利が認められています。そのため、公の秩序に対する危険が証明されない限り、このようなデモを制御することはできないのです。


以上のように、年金改革反対、マクロン嫌いという人の中にも様々な意見があるよう。
なんとなく、日本の報道だとフランス政治はマクロンvsルペンという対立構図の印象が強いですが、実際そんなに単純ではありません。

フランスに来る前はほぼ日本メディアのニュースしか見ていなかったので、メランション=左派、マクロン=中道、ルペン=極右と、カテゴリー化していましたが、私の周りのフランス人は、「マクロン、あいつは完全に右派だよ!」って言う。

デモに参加する度に、私もマクロンに対するアンチ精神が高まってきているので、だいぶ染まっていますね笑

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