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視覚障がい者ってどんな人?盲導犬ってなぁに?

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あれ?

はじめてまりさんとお会いした時の話。まりさんから、可愛らしいイラスト入りの名刺をいただき、視覚障がい者といえば点字と思っていた私は、点字入ってないんだ、と思いました。そして、まりさんと私が話しはじめると、まりさんの足元でハーネスを外された盲導犬のフリルちゃん(まりさんの1頭目の盲導犬。今はリタイアし、ゆっくり余生を過ごしています)が大きないびきをかいて寝ている。えっ?盲導犬っていびきかくの?まりさんと親しくなるにつれ、その謎は解けていきました。


小学校での話

以前、小学校でまりさんが子どもたちに視覚障がい者と盲導犬についてお話しされているのを拝見する機会がありました。そのお話しがとってもわかりやすく、私がまりさんと過ごすうちに少しずつわかったことがそのお話だと短時間で明快に理解できたこと、子どもたちも興味を持ちながら真剣に耳を傾けていたので、ぜひこの「子ども新聞」を通じてみなさまにもお伝えしたく、まりさんに取材を申し込み、その時のような感じで話していただきました。


視覚障がい者について

視覚障がい者とは、メガネなどを用いても全く見えない、もしくは見えにくい人だそうで、視覚障がい者の1割は全く見えない人。9割が見えにくい人。全く見えないというのは、こんな感じ。まず目をつぶってください、そして両目の上に両手を置いてみてください。光は感じますか?感じないですよね?そう、この真っ暗な状態が全く見えない人の視力です。見えにくい人というのは、ぼやけて見える、光だけ感じる、真ん中だけ見える、まわりだけ見える、一部が見えるなど人によって様々。例えば、まりさんはこんな感じ。まず左手の親指と人差し指で直径5mmほどの小さな丸を作り、双眼鏡を覗くように左目につけ、右目はつぶってください。そして、スーパーの半透明のビニール袋を左目の前にかざしてください。ほとんど見えず、明るい暗いぐらいしか解りません。


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外に出るには

視覚障がい者が外に出るときは、白杖、盲導犬、ガイドヘルパーさんや知り合いの人、いずれかの助けをかります。白杖は、折りたためてコンパクトにできますが、障害物があっても当たるまでわからない。上の方にある木の枝やトラックのバックミラーなどには気づけない、白杖が側溝の穴に入ってしまいケガをすることもある。盲導犬はいつでもどこでも行け、障害物があった場合、当たる前に教えてくれる。ただし生き物なので、食事や排泄、体調の管理(お風呂、獣医さんを受診して、混合ワクチンや狂犬病予防接種。フィラリア予防薬の投与、ノミ・ダニ駆虫薬など)、お世話をする道具(水、排泄用品、毛が落ちないように着せるマナーコートなど)の持ち運びが必要。ガイドヘルパーさんは、街の様子を丁寧に解説しながら歩いてくださり、楽しくおしゃべりできますが、予約が必要で決められた時間がある。


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家での生活

まりさんの場合、点字は使いません。音声が発せられる家電を使われています。例えば、パソコンに届いたメールは音声で再生され、まりさんが文字を打つ場合はタイプするごとに音声で再生されます。


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お助けグッズ

点字図書館から本や映画の解説付き音声がダウンロードでき、家事をしながら聞くこともできる。写真左は、録音はもちろん音声ガイド付きの本や映画の再生ができる機械。右は、ガイド音声付テレビが聴けるラジオ。iPadやスマホでは、Siri(シリ)を使い「今日の天気は?」など声を発して質問すると、答えを音声で返してもらえるものを利用。写真を撮ると写っている文字を読み上げ、物体を撮るとそれが何か音声で返してくれるアプリもあるそう。


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手書き文字は読み取れないが、打ち文字を音声で再生してくれるスキャナー。


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文字や写真などを拡大して見るための機械。


お料理

電子レンジは音声ガイド付きのものを利用。HIクッキングヒーターを愛用。揚げ物をよく作っているそうです。ガスコンロだと火の近くに置いたものや服などに火が燃えうつっても気付かないので使っていない。心配なのは、地震などの災害時に安全な場所まで行けるかどうか。あと困ることは、食材の葉っぱの傷みや瓶詰食材の中の様子、服の汚れや劣化がわからないこと。最近の失敗談。部屋の中に洗濯物を干しているのを忘れ、お客さんが来た時も干しっぱなしにしていた。帰って来た娘さんに指摘され「恥ずかしかった〜」と、笑いながらその時のエピソードを話してくださいました。


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盲導犬について

公益財団法人・日本盲導犬協会によると全国で働いている盲導犬は966頭(2015年)だそうです。繁殖ボランティアの元で生まれ、2ヶ月まで過ごすと、パピーウォーカーのところへ。そこで1歳まで過ごし、次は訓練所へと向かいます。訓練所では約1年間いますが、盲導犬に向かない場合は、キャリアチェンジ犬と言って、PR犬、介助犬、家庭犬に。盲導犬として訓練を受けた犬たちは、訓練が終わるとユーザーとともに10歳まで(公益財団法人・日本盲導犬協会の場合)過ごし、10歳になると引退を迎え、引退ボランティアの元で余生を過ごします。日本で活動している盲導犬の種類は、ラブラドール、ゴールデンレトリーバー、ラブラドールとゴールデンレトリーバーとのF1、シェパード。


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盲導犬の基本的なお仕事は、3つ。

1、段差を教える。2、障害物や危険を避ける。3、角を教える。1の「段差を教える」は、車道と歩道、階段などの段差に来ると半身をユーザーの前に入れ、教える。2の「障害物や危険を避ける」は、水たまりや人、ゴミを避けて歩く。駅のホームでは、これ以上行けないことを教えるためにユーザーの前へ体全体を入れ、止める。3の「角を教える」は、角があると、頭を左に向け半身を左に入れ込み、ユーザーのレフトかストレートかの支持を待つ。


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ハーネスを外したら

盲導犬は、ハーネスをしている時はお仕事中。でも、外すと普通の犬と変わりません。のんびりゆっくりゴロンとして過ごしたり、楽しく遊びます。取材でお伺いした日、取材後にまりさんと元気いっぱい走り回ってはしゃいでいました。遊びを通じ「ステイ」「ゴー」などの勉強も。スキンシップで愛情の絆を深めています。


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盲導犬と会ったら

盲導犬には、食べ物を与えない、触らない、声をかけない、じーっと目を見つめない。優しい無視をしてください。ハーネスをつけた盲導犬はお仕事中なので、先ほど書いたことをされれると、気が散ってお仕事に集中できません。ユーザーや盲導犬がホームに転落したり、階段から落っこちたりとっても危険!ということで、お願いしたいとのこと。


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もし困っていたら

盲導犬は信号が何色かわかりません。もしユーザーの人が困っていそうだったら、信号が何色か教えて欲しい。また、盲導犬は、どんな施設やお店でも法律(身体障害者補助犬法・障害者差別解消法)で入ることができるので、入店を断られている人がいたらお店の方に入店OKですよ、と一声かけてもらえると助かりますとのこと。


法律で決まっているけれど

先ほど、盲導犬はどんなお店でも入ることができると書きましたが、まりさんは一方的に権利を主張するのではなく、お互いに気持ち良く過ごせるようにされているようです。盲導犬にマナーコートを着せて毛が落ちないようにし、さらにタクシーなどから降りるときはコロコロで毛をお掃除。


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まりさん、海に潜る

進行性の病気のため少しずつ視力が低下し、ほとんど見えなくなった今、一番の楽しみは水の中にいること。染色家として活躍しておられたのに、視力を失い色のある世界から遠ざかっていくことは本当に辛い思いをされたかと思います。でも、まりさんはそれを乗り越え、いつも前向き。スキューバやスキンダイビングした時、マンタと遭遇したことやマナティやジンベイザメ、イルカと泳いだこと、これからのことを息を弾ませお話ししてくださいます。


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水中では、視覚ではない感覚を楽しみ、内面を見つめる

最近はじめたフリーダイビングでは、去年(2015年)何と4分27秒の息止めの記録を残した。年々視力は低下し、加齢はしていくけれど、フリーダイビングでは経験を積むごとに良い記録が残せることに喜びを感じている。今後は、海に行ってもっともっと色んな生き物に会うのが夢だそうです。


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2人と2匹

2016年7月現在、まりさんは娘さんと2頭目の盲導犬べーちぇるちゃん、保護し今年、20歳を迎える、老犬そばちゃんと暮らしています。まりさんは、子どもの頃から動物が大好きで小さな命も大切にしたいと、ペンネームのセアまりの『セア』は、Cooperating Environmentwith Animalsの頭文字から。


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まりさんからのメッセージ

子育てをし、盲導犬と過ごす日々の中からまりさんが思い至ったこと、それは、思いやりの心を大切にし、優しい言葉をかけるとそれを聞いて育った子どもは優しい言葉を発する子になる、ということ。そういう子は、障がい者や動物にも優しい人。その言葉をお聞きし、思わず耳が痛くなりました。自分に余裕がないと子どもに対して声がだんだんと大きくなり、時にはピシャリと強く言ってしまうこともしばしば・・・。できるだけ優しい言葉で伝えていきたいと思いました。


取材を終えて

まりさんと盲導犬たちに会って、視覚障がい者、盲導犬のイメージが変わりました。視覚障がい者の方には色んな症状があり、点字を利用する人、しない人もいるということ、盲導犬に対しては、足を踏まれても吠えない冷静沈着な犬というイメージだったのですが、ハーネスを外すと普通の犬と変わらず駆け回ったり、いびきをかいて寝るような超リラックスモードもあって、人間味ならぬ犬味?があるということを知りました♪この記事をご覧になりましたら、ぜひお子さんにも視覚障がい者のこと、盲導犬のこと教えてあげてくださいね〜。


セアまり

画家の両親の元、岡山に生まれる。桑沢デザイン研究所卒業後、久保田一竹氏に友禅染、山岡古都氏に草木染を学ぶ。染色業が不可能となり新たな世界へ。著書に「もうどうけん ふりふりとまり」はまのゆか・絵 幻冬舎エデュケーション、「ふりふりが空から降りてきた」燦葉出版社。視覚障がい者の社会参加と盲導犬への理解と共に、命の大切さを語り続けている。

https://www.facebook.com/furimari/



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「もうどうけん ふりふりとまり」。まりさんの1頭目の盲導犬フリルちゃんがモデルになって活躍するファンタジー絵本。

「もうどうけん ふりふりとまり」セアまり・文・はまのゆか・絵 幻冬舎エデュケーション


発行・テキスト・編集・写真・はまのゆか / マナティとまりさんの写真・倉沢栄一 / 水中写真2点・提供セアまり・2016年8月15日

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