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【映画感想】『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』を見て、真のアウトローになれ

俺だ、コセン・ニンジャだ。
俺は飢えていた。魔法がバンバン出て、剣と斧がかち合って火花を散らすような、まっすぐでストレートでパワフルなファンタジー映画を。
だが、この映画にそもそも期待はしていなかった。
センスがない広告(なにかをオススメする時に、間違ってでも「騙されたと思って」なんて言葉選びをするな)のうさん臭さを真に受けてしまった俺は、酒場の端っこでドーナツを食べながら、戦士の本能が鈍くなるに任せて、眠り込みかけていた。
だが、Twitterから流れて来る戦士たちのツイートを見て、俺は目を覚まし、近くに映画館へと馬を走らせたのだった。
今日は、ダンジョンズ&ドラゴンズの映画の話をしよう。
ネタバレはなるべくしていないが、まだ観ていないなら映画館に馬を走らせろ。

D&Dを知らなくても楽しい

俺はダンジョンズ&ドラゴンズについて詳しくない。
デモゴルゴンとかネヴァーインターとか言われても、何のことか分からないし、D&Dと言われても、「あー……ハクスラとか、TRPGとか、なんかそういうの……」としか答えられない。
だが、この映画は最高だった。
なぜなら、オブリとスカイリムも、おなじみのドラクエとかファイファンも、それらの元をたどって行けばだいたいD&Dにたどり着き、それを基にしたこの映画のファンタジー要素は、どれも見覚えがあるものばかりだからだ。
「あっ、これなんかドラクエかなんかで見た!」
と突然思っても、あなたの脳内を覗けるものは誰もいないので、「は?D&Dが全ての原点なのだ調子に乗るな」というコアなアホに咎められず、カジュアルに楽しめるわけだ。
物語の本筋も分かりやすい。
一人の冒険者が、達成すべきクエストに出くわし、仲間を集め、装備とアイテムと作戦を準備し、目的を達成するために冒険する。
という王道的な流れを、この映画は完璧になぞっており、それを激しい剣戟と、ド派手な魔法と、困難だらけの冒険と、おもしろファンタジーギャグと、熱い友情と信頼関係と、キモいモンスターとキモい魔導士と卑劣な悪人が彩っている。
しかも、斜に構えたような寒いギャグもなく、パーティ内のギスギスした人間関係問題もなし!!!
まっすぐ行って、まっすぐぶん殴るファンタジー!!!
だったら面白くならないわけがない!!!

真剣勝負のファンタジーを浴びろ

冒険!
魔法!
ダンジョン!

この映画を見る前に考えることはそれだけでいい。
もちろん、酒場のアホがこう言うかもしれない。
「こいつら犯罪者のクズで、簡単に盗むし、簡単に人殺すじゃねえか!なにがファンタジーだ!」
そいつは大斧を持った戦士に首を刎ねられて死ぬ。
ここではスローライフだの人を殺したら報いを受けろだのといった、生温い概念は通用しない。
そういうのは大金と力と生きていく余裕があるやつだけが言えることで、大体のファンタジーは剣と魔法があっても、誰もが生きていくのに必死なのだ。
襲われたら斬らねば斬られるし、必要なら盗むことを考えねば生きていけないのだ。
しかし、そこまでモラルと法と秩序について考える必要はない。
映画の中で、「悪人以外は殺さないし、富豪からしか盗まない」ときちんと言ってくれるのでそれを信じればいい。

そして、この映画の冒険は楽しい。
この映画の登場人物たちは誰もがシリアスな事情を持ち、困難に対して持ち前の技術を最大限に生かして冒険している。
しかし、シリアスな冒険の中にコミカルな雰囲気があって、見ている方は不思議と気楽に笑ってしまうのだ。
ハラハラする冒険の中に、RPG的なイベント要素の数々を見出してしまって、登場人物たちにとってはリアルなことが、見ている側にとっては非現実的でコミカルなことに見える。そのズレが面白さを生んでいるのだろう。
そのズレのおかげで、シリアスになりすぎず、かつコミカルになりすぎず、ちょうどいいバランスを保つことができている。
特に主人公のエドガンは、誰よりも重い事情を持ちながらも、バード(吟遊詩人)らしい歌や軽口で雰囲気をコミカルにしたりと、まさにこの映画そのもののような存在だ。
それと、ゼンクという凄腕のパラディンは『ストーリーの途中でめちゃ高いレベルでパーティに入って来て、戦闘で鬼のように活躍した後、教訓じみたことを言ってパーティから抜けるキャラ』を体現した存在で、この映画のファンタジー性を格段に上げている。とてもいい。

魔法をわりと気軽にツール扱いしているのもいい。
魔法を神聖視せずに、あくまで冒険を進めるための道具として扱うのも、ファンタジー映画では新鮮な描写で面白かった。

あと、色んな種族が出て来るのに、種族の特性……ようはエルフの長耳野郎とか、ちびドワーフとか、そういうのをいじるような描写が少なかったのも良かった。
様々な種族が、自然に共存してるぜ!という世界観をきちんと表現できている証で、そういう細やかなところに臨場感を感じるからだ。

背景でちらちら写る謎ファンタジー動物もいい。それらが写ることで、この世界が中世西洋もどきのクローンファンタジー世界ではなく、D&Dの世界だということを表現できている。

とにかく徹頭徹尾、ファンタジーという概念に対して、真剣勝負で向き合う作品。
それがこの映画だ。

キャラの作り込みが深い

取り柄のないバード、蛮族の女バーバリアン、へなちょこ魔術師、人間不信のドルイド。これがこの映画のパーティだ。
こんな奴らで何ができるのかというと、ほとんど何もない。
かなり強いマジックアイテムや、凄腕のパラディンがいないと、冒険することさえ難しい。
だからこそ、面白い。
頼りない彼らが、どうやってこの難局を乗り越えるのか?映画を見ている最中、ハラハラが止まらない。
しかも、パーティの一人一人が、シリアスな過去や事情を持ち、それらが巧みにストーリーに絡んでくるからなおさら面白い。
登場人物たちの弱さや個性があるからこそ、この映画が単なるファンタジーで終わらない、油断ならぬ映画であることを知らせてくれる。

終わりに

古いファンタジーは堅苦しいと思われがちだ。
俺が、魔法における呪文詠唱の重要性と、それをサイレスしようとすることで発生する駆け引きについて語ると、「おいおいw無言詠唱でいいじゃんw堅くなんなよw」と言われ思わずテーブル下に隠していた斧で……してしまうような、そういうこともある。
だが、この映画はD&Dという古めのファンタジーを題材としながらも、カジュアルに、そして真剣なドラマと世界観の表現で、最高のファンタジー映画に仕上げて来た。
まさに、ファンタジー映画の歴史に偉大な一歩を刻む映画だと俺は思う。
ダンジョンズ&ドラゴンズの映画を見て、古い概念のブラッシュアップが、現在のファンタジーに斧の一撃を与える様を目撃しろ。
そして、熱した亜麻仁油で斧を磨いたら、頼れる仲間たちを集め、広大なファンタジーの草原に歩み出すのだ。


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