見出し画像

マルチ商法にハマってお金がなくなり、ガールズバーで働いた話

20代の頃、事務職の社員として働きながら、ガールズバーでアルバイトをしていた。本当は25歳なのに、20歳と年齢を偽って、おじさん達にお酒を作る。有楽町にあったそのバーは、5、6人が座れば満席になってしまうような、小さな店だった。(今ではもう潰れてしまっている)

危ない目にあったことはない。危ない目に合わず、性を売り物にする現場を体感できたことは学びが多かったように思う。これに関してはまた別の機会にnoteにまとめたい。

働いている女の子たちは、みんな大なり小なり事情を抱えているものの(キャバクラで働いていて体を壊したとか、親が毒親で学費を稼いでいるとか)ごく普通の女の子だった。私はというと、表向きは「事務職の給料が安くて一人暮らしがキツイ」ということにしていたけれど、本当はマルチ商法にハマってお金がないからだった。

マルチにハマったのは、寂しかったから。辛かったから。今はすごく幸せなのでマルチをやることはないけれど、当時の気持ちを振り返ってみると、マルチにはまってしまった心理状況に胸がぎゅっとなる。

大学を卒業して就職した先は、いわゆるブラック企業だった。休みはナシ。平日は7時に出社、終電で帰宅。なんだかんだ土日も出社。友人と飲みに行く時間や体力はなく、恋人とも距離が開いていった。そんな中、たまたま出会ったマルチの人。彼らは深夜だろうが早朝だろうが会ってくれたし、こちらの状況にいつも寄り添ってくれて「キツイよね、早く抜け出したいよね。仲間と支えあえば、きっとやりたいことで成功できるから」「私はどんな時でも味方だから。いつでも呼んでね」など弱った心に染み渡るセリフをくれた。

親でさえ「3年は働きなさい」「まだ勤め始めたばかりなんだから頑張りなさい」という中で、「辛いならやめてもいいんだよ。他に仕事はいくらでもあるよ」と寄り添ってくれるマルチの人は、私には救いだった。理解者だと思った。

だから「私の尊敬する経営者の人を紹介するよ」と言われ、信頼してついて行き、すぐにマルチ商法に登録した。そこからは一気にハマった。おかげでブラック企業は辞めたものの、新たなブラック企業(マルチ企業)との付き合いが始まった。

私はすでに「親は私の辛い気持ちをわかってくれない」という心理状況だったから、「マルチなんてやめろ」という親の声は一切聞こえなかった。マルチの人しか味方はいないと思っていた。のめり込み、一時期はマルチで月に20万円ほど稼いだ。しかしその勢いは長くは続かない。

気の合わない人もフォローし、鼓舞して商品を継続して買ってもらわねばならぬマルチのやり方に、私は徐々に精神バランスを崩し始めた。人と会えなくなり、フォローが足りなくなったメンバーは商品を買わなくなり、私に入る売上金はどんどん減っていった。売上金をカバーするべく自腹で商品を購入したためにお金がなくなり、ガールズバーで働くことになったのだ。

事務職の手取りが18万ほどしかないのに対し、マルチ商法への分割払い額は毎月7万ほどにもなっていた。手元に残るのは11万。そこから家賃6万、奨学金2万を引くと3万しか残らない。光熱費食費日用雑貨でもうカツカツ。マルチの人とお茶をするお金もなかった。だからガールズバーで稼ぐ5万円は、私の命綱として機能していた。

そうまでしてマルチにしがみついていたのは、もう私にはマルチしかないと思い込んでいたからだ。親しい友人たちとは新卒で勤めたブラック企業の頃から疎遠になり、マルチにハマって恋人とも別れた。もう私にはマルチしかなかった。どんどん追い詰められていった。このまま破産するんじゃないかと思った。人生の黒歴史とはまさにこのこと。

マルチにハマる若い人が増えている、そんな話を聞くたびに、心が壊れそうになっている若者が多いんじゃないかと心配になる。心が弱っているとマルチにあっとう間に飲み込まれてしまうから。なかなか逆らえないから。マルチは、そういう弱い心につけこむような勧誘方法に長けているから(実際自分もそういうやり方を教えてもらって、若い人を勧誘していた)

だから、もし何かのきっかけでこの文章を読んだ人がいて、その人の身近にマルチにハマりそうな人がいたら、まずは気持ちに寄り添ってあげてほしい。「マルチはダメだ!やめろ!」なんて言っても絶対にやめないよ。むしろのめり込むよ。まずはその人の味方になってあげてほしい。

私の場合は結局、別れた恋人が戻ってきてくれて、マルチから足を洗うことができた。6年付き合った恋人は、私の状況を見かねて「マルチやっているお前が嫌なだけで、まだ好きだ。マルチをやめるならよりを戻そう」と言ってくれた。同棲を始めたことで家賃負担が軽くなり、ガールズバーは辞めて居酒屋のバイトにシフトしつつ、少しづつお金を貯めてマルチの分割払いも払い終えた。精神状態も良くなり、転職して仕事も軌道に乗り、200万貯めて恋人との結婚式も挙げた。救ってくれた夫には感謝しているし、まともな人間になって恩返しをしなければならないと思う。


いただいたサポートは、産後の体型をなんとかするための骨盤矯正やジム代に充てます!!!妊娠前の体型を目指しています。