見出し画像

疑ってみたいスタートアップの“常識”話

スタートアップとか資金調達というものに「これって不思議・おかしいよな」と思うことがままあるのでいくつか書き出してみようと思います。

❶100社、200社トライして”普通”

「資金調達は簡単ではないので1社、2社断られても諦めるな」
と言われるのですが、それ自体は賛成です。

ただ、50社会っても100社会っても、できるまで諦めない、というのが当たり前のように言われる風潮は少し怖いと思います。
時には数百社会っても次の1社で獲得すればいい、と語る成功者の方もいますが、数百も回ってたら死にます(笑)確実に(笑)
唯一、数百回ってもいいのはランウェイが短くなる(=キャッシュが減っていく)状況ではない場合ですが、スタートアップの資金調達について議論する場合、そういう状況は稀かと思います。

そもそもそんなに沢山会わないと、回らないと、出会えないこと自体おかしくない?それは変わらないといけなくない??
と思うのですが、なぜか「そういうものです」的な論調があるのが前から気になっています。

ちなみに投資家に200回トライするのは「死ぬわ。その前に他の方法で事業を続けようよ」と思いますが、200回営業が取れるまでトライすることは悪くないと思います。

もちろん何も学ばず、変えず、改善せずにただ200回営業するのはアホだと思いますが、大抵営業は重ねるほどに断られるのが嫌なので改良するでしょうし、その分だけ学んで製品にも反映させたり、進化の元になります。
そして、お客さんは一定程度ロジカルなのでちゃんと正解に辿り着ければ遅かれ早かれ買ってもらえると思います。

が、投資の場合は
・実はもう投資できるお金は使いつくしている
・その分野に投資しない
・経歴が××なとこしか投資しない
などこちら側でどうにもできない、改良の余地のない要因で断られることが多々あります。むしろ大半かと。

とはいえ現実は大なり小なりこれかと思うので打ち手は2つ:

1. 数百回っても死なないような黒字と組織を作ってから挑む
2. 数百会わなくてもいいように制限時間内に会える数に絞る

そして、スタートアップ支援の方々には起業家が無駄なトライを重ねないでいいような環境づくりに尽くして頂けたらと思います。

❷トレンド追っかけ

「今はAIだ!」
「次は暗号通貨だ!」
「Next bing thingはメタバース!!」
「WEB3!!!!!!!!!!!」

投資家や起業家がこぞってみんなバズワード一色になる景色を見たことがあるでしょうか。

起業家精神って「誰もやっていないことに挑戦する」とか「人と違うことをする」というのが本分じゃないの??と思ったりします。

そして、資金調達はトレンドに多分に影響されるため、資金調達するために自分の事業に無理やりトレンド色を入れて「それ本当に必要?」「それが本当に事業としていきたい方向?」と思うような展開やストーリーを見ることがあります。

そのトレンドが作られている意図、それに自分が合わせることの意味について、意識的であれたらと思います。

❸スタートアップは受託してはいけない論

起業初期のスタートアップ相談に乗っているとこういう状況があります。

XXXなプロダクトを作っています。
創業融資(かエンジェル投資)で数百万円あったので数名のチームで開発しています。あと●カ月で資金が尽きるので調達したいのですが応援してくれる投資家に出会えていません。プロダクトに集中したいので本業以外で資金稼ぎはしません。投資家紹介してください。

初めて聞いた方にはうそだろ、妄言だろ、と言われるかもしれませんが割とよくあります。

このような起業家がいる背景には「スタートアップは受託開発するな!プロダクト開発に全力投球しろ!」的な「本業と関係ない売上・資金獲得に時間使うな」という風潮があるからです。

①の話にも関わりますが、投資は断られることが常なので、計画通り調達できなくても事業継続できる必要があります。

ではどうやって?
売上。本業で稼げていないなら副業・受託。
少なくとも毎月の売上がコスト以上にあれば会社は死なない。

投資家だって企業には成功してほしいはずで売上は大事に思っているはず。
ではなぜ上記のようなことを言う投資家がいて信望する起業家がいるのか。

それは投資を受けたスタートアップは短期間に急成長しなければいけないから。
投資家はただ大きく儲かればいいだけでなくIRRのようにどれだけ短い期間でどれだけ多く稼げたか、という指標も大事なので一刻も早く成長してほしい。
起業家ももちろん早く成長したい。

だから、本業の成長以外のことに時間を使うのは悪である、少なくとも“スタートアップ”のあるべき姿ではない、と。

ただ、これは恐らく間違って広まったことかと思います。

本業以外で稼ぐことを「ラーメン代稼ぎ」と言いますが、この語源となったのは恐らく米国Yコンビネーターの創始者Paul Grahamが言った「Ramen profitability」から来ていますが、グラハムは「ラーメン代を稼ぐな」とは言っていません。

正確には「ラーメンを食えるくらいのプロフィットを出すことは大事。だが、そこから利益を出すことに注力して本業を疎かにする罠にハマるな」というメッセージでした。

これが「スタートアップはラーメン代を稼ぐな」という極端、かつ、あまりモノを考えない人たちの解釈で広まってしまったのだろうな、と。

少なくとも成長段階ならともかく、まだプロダクトも出来ていなくて、Product-Market Fitと呼ばれるような「お客が本当に必要とするもの」もできていないのに一円も稼がない、稼ごうとしない、ということが正しいわけない、と考えれば分かると思いますが、シード期の起業家は、特に初起業で黒字経営をしたことのない起業家は、まず受託でもなんでもいいから月々自力で事業継続できる状態を作った上で資金調達とかプロダクト開発とか考えるべきなんじゃないのかな、と思うのでした。

つらつら書きましたが経営に正解はないので、上記で書いたことが常に正しいわけでもなんでもなく個人的な意見なのですが、大事なのは「これが鉄則と言われているから」と自分の状況を鑑みて最適解を考えることを放棄するのが何より避けたいことかと思いますので、良き経営の日々があることをお祈りしています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?