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132. パロサント染めを求めて/ En busca de teñido de palo santo(3)

午前11時前に生産者の家に到着しました。

家の佇まいは小洒落た可愛らしい家です。

非常に失礼ですが、

田舎や地方の工芸品の生産者が、ビジネスで成功している様子を想像することが難しかったので、この生産者はよくやってるな。成功しているな、という第一印象を受けました。


期待が高まります。



中に入ると、

今までマッチがコンタクトをとっていた織物生産者の「アリシア」が出迎えてくれました。


彼女の第一印象は、「ドライ」です。


パラグアイ人では珍しくあまり感情を表に出さないタイプと感じました。

待ちに待ったパロサントの代表がきたのに?(俺は何様だ笑)


笑顔で大声で挨拶して、ハグをするくらいを想像していましたが、

低いトーンの挨拶で始まり、軽くだけ握手をして敷地の奥に通されます。


あれ、大丈夫かな。


一瞬、怪しい疑いの気持ちが脳裏をよぎります。



初対面なので、座りながらゆっくり色々な話をして、

アイスブレイクかなと思っていました。


ですが、それも裏切られます。


色々な話をするまでもなく、

どんどん彼女の作品を披露してくれました。


その中にはパロサント染めの姿もあり、

その色の美しさに驚きました。



パロサント染めは、パロサントの木と同様にまだまだ謎が多いです。


染めたばかりは、淡い緑色なのですが、

日に当たると鮮やかな淡いブルーに変化します。

この色がなんとも美しい。


そして、さらに期待していたのが、

布なのに、香りがすること。



香木のパロサントなので、

うまくいけば布に香りも残るのでは?と思っていました。


実際、どうでしょう。


確かに、パロサントの甘い香りがします。

はっきりではありませんが、ほのかに、いつものあの香りがします。


これはすごい。


大発明ではないか、心躍りました。

と、一方でぶっきらぼうな生産者との今後の付き合いをどうしていくか、

それが不安要因でした。


でも、それはすぐに払拭されました。



僕らが他に心配していたことは、布の色落ちです。


布ですから、汚れたら洗いたいですよね。

その時に、美しいパロサントの色が落ちてしまっては台無しです。


天然素材なので、何回か洗って、徐々にある程度色落ちしてしまうことが仕方ないと思います。


マッチが以前彼女から買った、野菜のビーツで染めた草木染めの布は、

一回洗ったらそのピンクが一瞬で落ちてしまったんだそうです。


それを心配していました。


その話をすると、彼女はパロサント染めの布を持って、何も言わずにどこかに行ってしまいました。(さあ、ここからアリシアモードが始まります!)


彼女は「色落ちするかはわからない。まず試さない。」と言います。

そして、僕らの不安を払拭するために、彼女はすぐに洗濯場に行き、

洗濯機で布を洗ってくれました。


すると、どうでしょう。

ほとんど色落ちは見られません。


脱水した水は、若干の薄い青色に変わっていますが、

布自体の色はあまり変わっているように見えません。


天然素材ですから、これくらいなら全然オッケーという感じです。


彼女の自慢げな顔が伺えました。

若干の笑顔も見て取れます。


ですが、商品化してからの色落ちは大きなリスクなので、

なるべくそのリスクは避けたいです。


そのために、当日の朝に僕らは薬局でミョウバンの粉末を入手しました。

ミョウバンが草木染めの染色の際に使われるそうで、

布繊維への色の付着を促進し、色落ちがしにくくなるそうなんです。


それを試してほしいと話すと、

彼女は、また何も言わずに、せっせと動き始めました。


ここからどんどんアリシアにエンジンがかかっていきます。



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