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短編小説集『5/100 死の用心! 不注意1秒、事故のもと!!』
どっかーーーーん!!
きゃあ〜〜!!
師走を過ぎ、お正月になって、みなさんどうお過ごしでしょうか?
路上では事故が絶えません。わんわん警察局のおまわりさんも、頭を抱えてうなってしまいます。
「うう〜〜ん、、、どうしたら頻発する事故を食い止められるのでしょう?」
その日も、バイクと車がぶつかる大きな事故で、カンガルーのおかみさんが入院する大ケガを負いました。
ブルドッグの署長は言います。
「とにかく! えりを引き締めて、事故注意の喚起をうながすほかない!」
その日から、毎晩、わんわん警察署のイヌ科ケーサツの方達が真夜中のパトロールに出かけました。
「ピーポーピーポー! 死の用心!! 不注意1秒、事故のもと!」
街を巡回するパトカーたちは今日もせわしなく、事故注意の呼びかけをおこない続けます。
しかし、、、。
「なんということか! 今月は、先月よりも事故件数が増えているじゃないか!」
「ははあ、、、これは、どうしたことでしょう」
目を見張って報告書を眺める署長に、チワワの巡査部長が、申し訳なさそうにしゅんとします。
署長も目に手を当てて、大仰(おおぎょう)になげきました。
「ちみぃ! このままではいかんですぞ! これではまるで、*交通戦争時代の事故件数に匹敵してしまう!」
気の弱い巡査部長は、かわいそうに、署長の大声に緊張してぷるぷると震えてしまいました。
彼は敬礼をして言います。
「もっと徹底して! 今以上に事故注意の呼びかけに力を入れます!!」
とはいえ、その後も車と車、歩行者と車の事故が減る様子もなく、年末から続く事故件数の増加には歯止めが効きません。
「ど、どうすれば良いんだ!!」
ついには署長も、わんわんと泣き出してしまう有り様でした。
その頃、年末に事故で入院していたカンガルーのおかみさんが、なんとかリハビリを終えて可愛い子供たちの元へ帰ってきました。
「おお! よしよし♡ ごめんねえ、、、心配をかけてしまって」
息子や娘たちがいっせいに、お母さんに抱きついてきます。
「心配したんだよ。本当に、、、無事でよかった」
「あなた、ごめんなさい」
「いや、良いんだ。君さえ帰ってきてくれたなら」
カンガルーお父さんも、優しげなまなざしで、おかみさんの手をぎゅっと握りしめました。
トントントン……。
そこへノックする音がして、家の中にブルドッグ署長がのっそり顔を覗かせました。
「おお! 無事に退院されてよかったですね!」
「ああ、その節はご迷惑をおかけしました、、、」
「はあ、、、。その後も年末年始の事故は相変わらずでして、、、」
がっくりと肩を落とす署長さんでした。と、そこへTVから臨時ニュースのお報せが入りましたよ。
「このたび、○△□社から、完全自動走行のコンピュータ制御で走る車が発売されました! 今まで数々のテストや試乗期間を経て、ようやく実用化に踏み込んだわけです!」
「こりゃ、めでたい!」「まあ! 助かるわ!!」
喜びの声をあげる署長さんと、おかみさん。彼らの尊い犠牲の上で、とうとう誰も傷つくことのないコンピュータ制御の自動車が発売しました。
その後、しばらく経って、全自動自動車は全国的に普及して、車による事故も死傷者もいなくなりましたとさ。めでたし、めでたし。