【書評】ゲームメカニクス大全

 ずいぶん前になりますが、読書会にて序章と8章(競り)の部分を担当しました。これがきっかけで自分でもメカニクスの分類を行うようになったので一旦この機会に感想を

<序章+本全体に関して>

●Good

・ボドゲに既にふれていてゲームデザインを始めたい人向けた章立てをしている
  ・2010年代以降の重ゲーの中心となっている ”ワカプレ” や90年代を代表する競り等を似た役割のメカニクスから分類から分けている。

・メカニクスに対し、使用されているゲームを極力複数紹介しようとする

・作者から見た意見も述べているが、オタク特有の特定のゲーム、ジャンル、出版社に対する過度なディスりや必要以上に長いうんちくが無い。
(※例に挙げるゲームや長所、短所から作者の趣向は透けてはいる。)

●Bad 

 
・メカニクスの階層分けが無い。複合的なもの や オプションあるいは1段下の階層として説明すべき。(前者の例:デッキ構築(カードピック+拡大再生産+山札によるランダム。 後者の例:)

・例に挙げたゲームの画像や詳しいルールの記述等は無い。近代的なボドゲにあまり触れていない状態には向かない。

・ゲームリストが作品名のアルファベット順。
 前述のとおりメカニクスを使用しているゲームが少ない場合、連想ゲーム的にゲーム名を絞りだす事がある。そのメカニクスを全く使用していないゲームがリストの1番上に記載されている事があるので、"一旦プレイしてから文章を読もう"という方は文中を軽くでいいから読む事

●Great

 上記で悪い点も書いてしまったが、一通りやりきっている。
 (13章以外は)これをたたき台として議論が十分できる内容となっている。

●総合

本の著者は序章にて、この本”百科事典”、”ゲームの秘密の言語のための辞書”と位置付けて以下の4つの効能を主張している。構造解析としては少し怪しい部分もあるが、総じて良い本だと思う。

〇 ゲームメカニクスのマニュアル
△ 構造解析の基盤
◎ 新しいアイディアの源泉
〇~△ デザインを教えるための教科書

8章 オークション


 競りは”リソースの分配の方法の一つ。
本著では90年代に流行るも00年代以降に衰退した理由として「プレーヤーの経験が必要な点」を章の最初に「テンポが遅く、ゲーム時間がかかる」てんをいくつかの小項目にて挙げている。

 数が多く全体を俯瞰しずらかったため4つの私が重要だと思う各競の性質とその他の項目で表にしてみた。

進行方法
 どの順番で値付けをするか?
価格の向き
 上昇(だんだん損になる)か下降(だんだん得になる)か
変動するもの
 お金が変動するのか、商品が変動するのか?
ロット数
 同時に競られるロット数。
 (※2人以上が商品を同時に得うる仕組みであるためややこしくなる半面、ゲーム速度の改善や何を選ぶか?という思考に持っていきやすい)

●Good


 ・該当するゲームが1つしか思いつかないもの(『ラストパラダイス』の2位入札 と『倉庫の街』やそのリメイクの優先ダッチオークション等)まで網羅している

 ・かなり客観的に書こうとしている印象。例えば競りの”臨場感”があるか等ゲーマーがあまり触れない部分の良しあしも触れている。

●Bad

 ・『金額ではなく商品の方が変わっていく』タイプの項目が無い(ガントレットオブフールズ魚河岸物語あたりの競り)価格は固定で得られる利益を1つずつ諦め(ダッチオークションの場合は追加し)ながら進む。

 ・器用さ(要するに投てき要素)やクローズドエコノミー等別の項目で取り上げるべきものがあげられてしまっている。

 ・川を広義のダッチオークションとして少し紹介するのであれば(13章に無理やり入れた)ドラフトも同様に紹介してよかったのではないか。ゲーム開始時やラウンド開始時の競りが2010年代以降ドラフトに置き換わっている事だし。


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