【拡大再生産研究⑤】除去による阻止【M:tG①】
前書き
自分の作りたい拡大再生産のコンセプトを言語化するためにプレイ済みのゲームから毎回1つ取り上げて整理していきます。
(ゲームの紹介が目的ではないためルールの紹介は省いていきます。)
前回はこちら
前置き
前々回、ドミニオンを例に”いかに必要以上の拡大をさせないか?”
を考えた。
今回はさらに歴史を遡ってM:tGの事例、つまりもっと直接的なケース、「対戦相手の拡大を阻止する」要素についてみていく。M:tG全体だと範囲が広すぎるので今回は盤面にあるパーマネントの除去のみ。
(手札破壊、打消し等辺りで1回 逆に拡大する方法に関しても1回かなぁ…。)
除去とは何か?
M:tGではあらゆるパーマネントが”除去”できる
除去は単に野蛮な攻撃要素ではない。除去できるパーマネントは相手に”小目標”を与え、それを基に盤面の会話ができたり(それは完全に無視してソリティアをやったり)する。
例えばあなたと対戦している私が『4/1の飛行クリーチャー』を召喚したとする。これは雑に言えば毎ターン【4ダメージを与える】という揮発性の権利を発生させる。
M:tGの初期ライフは20のため(20/4=)5回攻撃が通ればあなたは負けとなる。そう、場がこのままであれば、5ターン後私が勝つのだ。
しかしこのクリーチャーは撃たれ弱く、タフネスは1しかない。つまり、戦闘でも呪文でも良いので1ダメージをこのクリーチャーに届けるという目標がクリアできればこの脅威から逃れる事ができる。
除去として採用できる手段は呪文だけを見てもいろいろな種類がある。例えば「複数に1ダメージを与える」という呪文でも「1体に4ダメージを与える」という呪文でも『4/1の飛行クリーチャー』には対処できるが、4ダメージの方だと少しもったいない。
他にも墓地に行く時の効果を発動させなかったり、コストが低い代わりに破壊するクリーチャーは持ち主が選べたりと想定するクリーチャーやデッキに対して最適解は変わってくる
ボドゲ=除去が弱い環境の特徴
3人以上でのプレイを想定して作られているボドゲは除去が極めて少ない(弱い、あるいは限定的)な環境と言える。
ではこの除去の弱さは(あるいはここから何らかの方法で除去を強くする変化をさせると)カードの強さにどのような変化をもたらすだろうか?
参考として以下のコラムを取り上げる。
今回の記事だけに関係する部分を雑に言えば除去が強い環境では、場に出た時に一定の成果を残す熟考漂いが強く、除去がない環境だと悪斬の天使は活躍しやすい。
この特徴をボドゲの作者側が十分に知っている場合、問題が起こらないよう悪斬を弱めに設定する事になると思われる。
ところで、ボドゲにおける建物(クリーチャーと同じく継続的なリソース源)の効果は大きく以下の3つに分解できる
A 出た時の効果(≒熟考漂い)
B 継続効果(≒悪斬 かなり弱いけど)
・リソース産出等
・特殊なアクションを選択する権利の付与
C 勝利点
建物を プレーヤーが能動的に除去できる(あるいは自然に除去される)ようにすれば、Bの効果が強い派手なゲームが作れないだろうか?
答えの方向性の列挙
除去を採用する際、どういう方向性が考えられるか、思いつく限り列挙していく。
方向性1 潔く採用する
記事の都合上、弱いと断言をしてしまったが、正確には推奨されていないがある。資源を破棄させる程度の弱い直接攻撃であれば存在するし、ゲームによっては資源の産出量を減らす攻撃カードも存在する。
方向性2 除去を劣化させる
特にカードを重ねて強くしていくルール には注目している。
※ボドゲで言えばカールチャデク作「イノベーション」
同じ色のカードは場に重ねる事で出していく。
下になったカードのアクションは使えなくなるが、アイコン(=アクションの強弱に関わる)は見える。
1番上にあるカードを除去する効果のカードも多数あるが、下のカードが見えるようになるため劇的には場が弱くならない。(また、強いカードを出しても差分しか強くならない事もあり、派手な効果を入れやすそう)
TCGでも重ねていくものはあるみたい。
トリッキーな実装だとわざと上のカードを破壊させたり取り外したりして下のカードの”場に出た時の効果”を再利用したりできるらしい。
方向性3 除去の対象を一部にする
最終勝利点のカード等は除去できなくする必要があるだろう。
方向性4 潔く2人戦あるいは2チーム戦にする
まぁ、あり。
方向性5 既に知っているルールで心理的抵抗を減らす
マストフォローで出さされる + 手札の一部が場に公開
(もう半年ほど触ってないのか。ちょっとやってみるかな)
方向性6 自然に除去される
自然に除去されるのとプレーヤーに除去されるのでは意味合いは大きく違う。ただ、一定時間で消える 事を基本ルールにしておいてそれを早めるという攻撃手段というのは落としどころとしてはありかと思う。
ヴォーパルス(ペーパーテイルズ)はM:tGで言う消散カウンターをうまく使ったゲーム。大抵のクリーチャーは2ターンで盤面から消えてしまう。
ターン数を固定にする必要もない。(固定の方が作りやすいが)過去の作品だとビッグチーズ式の競りを行い、払った金額のターン数のみ場に残り続けるゲームも存在する
格差を生まないために「課題を達成できないと破壊」等にはせず、ある程度消えていく事を仕方ないものにすることだと思う。
TCGと戦闘システム
呪文による除去を中心に話してきたが、クリーチャーは戦闘によっても破壊される。TCGごとに少しずつ違った処理が採用されているのでそれを列挙していく。
1.どのように相手クリーチャーと対峙するか
A攻撃側指定
例)遊戯王、ハースストーン(挑発は優先)、バディファイト
B防御側指定
例)M:tG、ルーンテラ等
C複数レーン制
例)テッペン、クラッシュオブデッキ
D正面への攻撃
DTCG初期にいくつか採用されていたものがある。召喚するたびに左詰めで置いていき、正面に対して攻撃する。破壊されると詰める
E1VS1
ポケモン
Fランダム攻撃
アルテイル
私の考え
どうやって非戦闘要員のクリーチャーを守るか?が大きく変わってくる。A(攻撃側指定)だと守りづらく、B(防御側指定)だと基本的に戦闘では死なない。基本的にはその中間的な方針が取られているように思う。
A(攻撃側指定)を選ぶなら挑発(優先して攻撃される)やブロッカー(攻撃対象をこちらに移し替えていい)等をキーワード能力として採用。
陣形(後列にいるほど攻撃されづらい)を採用する方法もある。(盤面にそれなり以上のクリーチャーが残らないと面白くなりづらい関係上、情報量が多くなりすぎないよう注意する必要はあるが)
B(防御側指定)は序盤ライフで受ける展開になりがち。オンライン化が難しい(攻撃するクリーチャー指定⇒防御の割り振りとステップが増えてしまう)ためか採用数が減っている印象がある
Cの複数レーン制は複雑な事がしづらい代わりに戦闘処理が自動的でわかりやすい。シンプルなボドゲを作るならこれで良いと思う。
2.ダメージは回復するか?
「ラウンド終了時回復」か「回復しないか」の2択。
すぐ思いつく事だと考えるべきは以下あたりか
・弱いモンスターだけで強いモンスターを倒す手段があるべきか?
・「回復をする」を選ぶ場合
ゲームが膠着して終わらない可能性が出てしまわないか?
・「回復しない」を選ぶ場合
不必要にゲームが長くならないか?
ダメージの管理が煩わしくないか、コンポーネント量が増える事による原価up
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