桜かすみ草

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「高校は大学受験のための予備校ではない」(校長) 【 いにしえの高校時代 10 】

「受験体制反対」 「高校は大学受験のための予備校ではない」 それが、わが県立高校の校長先生の方針であった。 わが校はメチャメチャ教育熱心な地域にあったが、校内は「高校生活を満喫しなさい」「青春時代を謳歌しなさい」という、おおらかで自由な空気に満ちていた。 私たちの県立高校と、隣町の賢い県立高校との違いといえば、中学卒業後の春休みに隣町の高校では宿題が出ていた。まだ入学前である。 わが校は宿題が無かったのでのほほんと楽しく過ごした。 そして、入学後ものんきだった。 隣町の

    • 突然、高校の入試制度が変更に 【 いにしえの高校時代 9 】

      私が育ったのは、空気と水がきれいで静かな新興住宅街である。 メチャメチャ教育熱心な地域だった。 私が通った地元の公立小学校は、公立にもかかわらず超進学校だった。難関私立中高一貫校を受験して旧帝大を目指すのが当たり前だった。 近くの教育水準が高いはずの大きな街から越境入学してきた児童がいたくらいだ。この少年は、難関中学を受験して合格した。東大一直線コースだ。 また、成績がトップクラスではない男子生徒は、中学から大学までエスカレーター式のお坊ちゃま学校に進んだ。 ゆとりのあ

      • カツアゲってなあに? 【 いにしえの高校時代 8 】

        高校に入学して間もないころだった。 学校からの帰り道、中学の同級生にバッタリ会った。 元同級生は、中三のとき私たちの中学に転校してきた少年で、元の中学で何かやらかしたらしく追い出されて転校してきたのだが、何をしたのかは知らない。どこか「あしたのジョー」のような雰囲気を漂わせながら、彼は一年間、教室の片隅にひっそりと座っていた。 その元同級生とバッタリ会った。私の自宅の近くだった。元同級生は、新聞配達のアルバイト中だった。お互いに近況報告をした。たぶん口をきくのは初めてだ。

        • 不良にバカにされた話 【 いにしえの高校時代 7 】

          漫画やテレビドラマに出てくる不良はカッコよかった。 不良に憧れる年頃でもあった。しかし、残念ながらわが校には本物の不良はいなかった。 そんな中、留年してきて同学年になった男子が一番不良ぽくて、みんなの憧れの的であった。みんなは遠くから眺めていた。 彼は、いつもハードボイルド風のムスッとした表情で廊下を歩いていた。すれ違うとかすかに煙草の匂いがした。シャツの胸ポケットは四角く煙草の箱の形にふくらんでいるように見えた。確信はない。 だが、ケンカなどテレビドラマの中の不良がやっ

        「高校は大学受験のための予備校ではない」(校長) 【 いにしえの高校時代 10 】

          小さな恋の行方 フォークダンス作戦 【 いにしえの高校時代 6 】

          カップルが多いと言われる高校だった。 「小さな恋のものがたり」(みつはしちかこ著) のようなホンワカしたカップルである。 だが、私の周辺では、ほとんどが片思いでカップルはまれだった。私たちは、可愛いカップルに憧れたり、まだカップルではない生徒たちを応援しようとお節介をやいたりしていた。 廊下ですれ違うとき、いつも熱い視線で見つめあう二人がいた。同じクラスの女子 (A子ちゃん) と他組の男子 (B男くん) である。両想いがバレバレだ。どちらもシャイで言葉を交わしたことは無か

          小さな恋の行方 フォークダンス作戦 【 いにしえの高校時代 6 】

          修学旅行でバスガイドさんが泣いた理由(わけ) 【 いにしえの高校時代 5 】

          高2の秋、修学旅行に出発した。 観光地をバスで巡る旅だ。 現地のバスガイドさんは、若くて初々しい女性だった。名所の説明をしたり歌ったり一生懸命である。 しかし、反抗期の男子たちはバスの後ろ半分に陣取って、勝手に騒いでいた。バスガイドさんを完全無視である。 バスガイドさんは、泣きそうになりながらも必死でガイドの仕事を頑張っていた。 女子たちはまじめなので、バスの前半分に座り、男子の分まで前のめりになりながら、熱心に説明を聞き、一緒に歌い、精一杯バスガイドさんを盛り立てた。

          修学旅行でバスガイドさんが泣いた理由(わけ) 【 いにしえの高校時代 5 】

          1時間目 体育 ずるくない? 【 いにしえの高校時代 4 】

          無情にも朝の通学の最終バスは行ってしまった。 駅前のバス停に取り残された女子高生2名は、タクシー乗り場へダッシュした。すでに行列が出来ていた。 間に合わないかも…… この時間に並んでいるのは、同校の関係者だけだ。 タクシーは4人で相乗りをするので、何台目になるのか人数を数えているとき、女子高生の目の前に並んでいるのが1時間目の体育を担当する女性教師だと気が付いた。同乗メンバーだ。 やったー 助かった 教師と一緒にタクシーに乗り、同時に学校の正門に到着するなら、それから

          1時間目 体育 ずるくない? 【 いにしえの高校時代 4 】

          遅刻してもへっちゃらな上級生 【 いにしえの高校時代 3 】

          通学には、運と根性と健脚が必要だった。 毎朝、必死である。 高校は山の上にあったので、電車の最寄り駅から高校の近くまで、毎朝、私鉄系の路線バスがこの高校のためだけにピストン運転をしていた。 短時間に生徒と教師で1300人ほどを運ぶので、バスは超満員である。 バスに一人でも多く乗せるために暗黙の了解があった。 座った人の膝の上に、立っている人たちのカバンがうずたかく積み上げられるのだ。知っている人とか知らない人とか関係なく、近くにいる人たちのカバンが全部ヒザに乗せられた。

          遅刻してもへっちゃらな上級生 【 いにしえの高校時代 3 】

          みんなで授業を抜け出した日 【 いにしえの高校時代 2 】

          一週間に一度、ロングホームルームという話し合いの時間があった。 退屈である。 そこで、私たちのクラスでは、「裏山に登って遊ぼう」とか「池にボートに乗りに行こう」という案が出るのだが、すぐに賛成多数で実行に移されていた。 担任は、余計な口出しをせず、生徒の意見を尊重して自由にさせてくれる教師だった。 高校は、新興住宅街の上にあった。住宅街の先の山を切り拓いた場所である。 周りには何もない。 高校と住宅街は数百メートル離れていて、その間にあるのは、水の流れていない雑草だらけの河

          みんなで授業を抜け出した日 【 いにしえの高校時代 2 】

          制服廃止へ 【 いにしえの高校時代 1 】

          私が通ったのは地元の県立高校である。 私たちの学年が生徒会の役員になった年のある日、臨時の生徒総会が体育館で開かれた。 壇上には生徒会の役員たち、体育館の床には体育館座りをした全校生徒、そして後ろの壁際にズラーと教師が腕組みをして立っていた。 生徒会の役員と教師たちが正面から向き合う形である。 生徒会長が制服廃止について意見を述べた後、質疑応答があった。 その間、教師たちはじっと黙って聞いていた。一言も口をはさむことはなかった。生徒総会は穏やかに進行して、採決になり賛成多数

          制服廃止へ 【 いにしえの高校時代 1 】