カツアゲってなあに? 【 いにしえの高校時代 8 】

高校に入学して間もないころだった。
学校からの帰り道、中学の同級生にバッタリ会った。

元同級生は、中三のとき私たちの中学に転校してきた少年で、元の中学で何かやらかしたらしく追い出されて転校してきたのだが、何をしたのかは知らない。どこか「あしたのジョー」のような雰囲気を漂わせながら、彼は一年間、教室の片隅にひっそりと座っていた。

その元同級生とバッタリ会った。私の自宅の近くだった。元同級生は、新聞配達のアルバイト中だった。お互いに近況報告をした。たぶん口をきくのは初めてだ。

私は、近くの県立高校に通っていると話した。
元同級生は、他府県の不良が多く在籍する私立高校に進学したそうだ。
元同級生は、「カツアゲが怖いからおとなしくしてる」と言った。
私は「カツアゲ」を知らなくて、頭の中はクエスチョンマークだらけになった。

「カツアゲ」って何だろう………。
新しいお料理の名前だろうか………。トンカツとチキンのから揚げが頭の中をグルグルした。それとも、トンカツを二度揚げするのかな。

うーん………どうしてもわからない。
うーーん…………聞くしかない。

「カツアゲってなあに?」。

元同級生は「知らんの?!」と言って、爆笑した。

そうなの?誰でも知っている言葉なの?
私は、あせりながら、「現代用語の基礎知識」として「カツアゲ」をしっかり脳に刻んだ。お料理の名前ではなかった。

しかし、その後、リアルな世界では「カツアゲ」を耳にすることは一度もなかった。若者の流行語だったのかもしれない。私はこの言葉をすっかり忘れていた。

随分たって、ネットが普及して、今も使われている言葉だと知った。そこで、再び脳裏に刻み込んだ。リアルでは聞かないことを願いながら。





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