臨採日記【役にたつや否や】

葉月五日、
教職教養とかや一般常識とかや学ぶにつけ
頭の腐らせらるる心地だにするなり。

世は、なにかにつけ
「役にたつものなりや」と問うて
古文なり微積分なりをそしりなどす。

己の知らざるところを矮小とすれば
己の物語のみは完遂できやうものなれど、
かかることを他にまで言はむとするは
その己をこそ矮小にするものならむや。

まいて、一般常識、教職教養、何するものぞ。
役に立つともおぼえざりき、と、
これをこそそしりあるべけんや。

しかうして、さにあらず、
一般常識にせよ教職教養にせよ
これこれ言はれのあるところ、由来あるところは
かくなるべし、とてや、
ことのはじまり、
有職故実の連綿を垣間見してこそ
感情に納得のあることとおぼゆ。
かやうなることをだに知らで
それを試して吾に問はしむなど
押し付けがましきこと甚だし。

または、
いまかくが如きに定義ありしかば、
水の流るることはりを情よりも先んじよとて、
その言の眺めるはなほ葉にこそ。
自己観省の深く穿ちたる細けき水すら得てこそ
理解、また、論理的合理性をなしたらむ。
理を以て尽くさずをして
理を以て答へしむるによりて遺憾こそあれ。

教育基本法にあるは、人格の形成をとぞ。
古きなりといへども、これ
「人たるは、いづこより来たり、いずこへ」
との命題に答へるためのものともおぼゆれば

その源流なるを誰か知るや。
その流れ起くるをいかに知るや。

教養も常識も、
或は、古文も微積分も
諸生にその方法のいくばくかを伝へむがものなり。

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