臨採日記【猫を液体と言ふを】
葉月三日、つれづれに川のほとりにありくれば
猫の褥となる園のけだるきなるに出会ひなどす。
世に習へば、犬に組すや、猫に与すや、とて
翁はいづれにもあり、いづれにもあらず。
されど、のんべりと、ここそこと
猫の溶けたるを並べ置きたるがありさま
自他のさかひを弁へたるやうにて
心にかかりなむいくばくかありける。
ひかる君の物語なりや、
薫の猫をとらへさせたまひ
その音に「寝う」とぞ聞こすなるは
愛しき心地も侍る。
寝の語に触れたれば
頭に添へたきは枕ならむ。
かの草子、