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「リブレット」考

楽譜を見る。

五線譜に書かれた音符と
譜間に記されている歌詞・・

まず音符を見て
音符の流れを把握して
次に歌詞を見て
音符に言葉を重ねていく・・・

それが正解なのか?

確かに
音符の流れから
その単語、
その言葉に込められた
感情の起伏を
察することはできる。

でもそれは、
音符という「型」から
いわば殻の部分から
言葉という中身を
覗き見ているだけ。
そうではないだろうか?

まず言葉ありき、
まず台本ありき。

台本があって
それに作曲家が
音をつけたのであれば、
演奏者も
楽譜より先に
まずは台本を
読む必要があるのでは?

リブレットとは
オペラの台本だけを
抜きだしたもの。

音楽から切り離し
純粋に文字として、
純粋に言葉として、
接することができるもの。

リブレットの
存在と効用は
考えている以上に大きい。

まず
場面の説明を読む。

台詞を読む。

それぞれの登場人物が
どのような言葉を
口にしているのか、
どのような言葉を
交わしているのか、
そして、
どのように感情が推移し
物語が動いていくのか、
読み解いていく・・・

さらに
台詞の構造を調べる。

平易な日常語なのか、
典雅な宮廷言葉なのか、
少し古くさい言葉なのか、
それとも現代語なのか・・

オペラの舞台となる
ヨーロッパの社会では、
「身分・クラス」というものがあり、
それぞれの階層において
言葉の言い回しに違いがある。

そうした言い回しの違いも、
登場人物の状況によっては
使い分けがされていたりする。

台本とは戯曲であり、
戯曲はそれ自体、
ひとつの完成された作品でもあるのだ。

オペラ役者は
音楽の歌い手であると同時に
優れた戯曲の語り手であり
演技者もある。

ならば、
台本を読むこと。
台本を朗読すること。
台本を解析し、
台本から登場人物の
キャラクターを探り、
その台詞に
血肉をつけていくこと・・・

それが
より良い演奏に
より深い演技に
繋がっていく。

なぜなら、
作曲家も同じように
台本を熟読し、
台詞を口にしながら
曲を作っていったのだから。

さあ、
リブレットを読もう!

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