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「喉の状態」

声楽家・演奏家である以上
楽器としての自分の声には
敏感にならざるを得ない。

特に今の季節、
花粉が本格的に飛びはじめ
鼻水や涙、くしゃみなど
花粉症の症状に苦しむ季節でもある。

・・かといって、
花粉症の強い薬を飲むと
途端に喉がガラガラになるしね・・・

朝、起きて最初にすることは
息を吸う際の喉に
違和感を感じないかどうか。

そして
朝一番のトイレの中で
ちょっとだけ喉を鳴らして
「接触」に異常がないかを
確認している。

乾いていると感じたら
まずは水か白湯、
最低限の乾きを癒やしたら
次に潤いのある飲み物を飲み
声帯周りをコーティング。

まあ、
風呂上りの水気のある肌に
ヒアルロン酸ジェルを
たっぷり塗るのと同じだな。

風呂上がりで気持ちが良いからと
暖房の中でメンテを放っておくと
顔の肌はあっという間に
カサカサになってしまうしね。

喉は睡眠中であっても
呼吸することで常に外気に触れている。

だから、
部屋の乾燥にも敏感だし
それゆえ歌い手の多くは
大容量の加湿器をかけたまま
眠っていたりする。

・・・朝起きると、
外壁に面した窓という窓が
結露して大変な事になっているのだが、
「部屋より喉が大事!」
というのが、歌い手の価値観なのだ。


日中、あるいは稽古の時など
人とお喋りしている時であっても
喉に異常を感じたら
ピタリと口を閉ざし、
自分の身体と対話を始めることになる。

楽器としての喉をかかえたまま
生活するということは、
ケースから出して裸のまま
ヴァイオリンを持ち歩いているようなもの。

ちょっとしたことで
直ぐに喉は「軋みはじめる」のだ。

デル・モナコはシーズン中、
リハーサルで歌ったり
インタビューに応じる時以外は
稽古場であれ、ホテルであれ、
ほとんど喋らなかったそうだ。

どうしても喋らねばならぬときは
小さな声で、
そっと囁くように話していたとか。

それはそうだろう。

黄金のトランペットだって、
雨風に吹き晒されれば
あっという間にカビてしまうもの。

彼ほどの喉の持ち主であれば
なおさらのこと
臆病な程に神経質にならざるを得ないだろう。


・・・まあ、
デル・モナコとは対極の
「のべつまくなしに喋りまくっている」
オペラ歌手というのも
沢山見てはきたけどね・・・

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