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自由研究には向かない殺人

すっごい売り出してたんですけどすっごい売り出してるからこそなんとなく後回しにしていた作品。ホリー・ジャクソン作です。

どういう話かと言いますと、イギリスの高校生、最終学年のピッパはEPQ、まぁ自由研究的なものと考えていただいて、それのテーマに自分の住んでいる小さな町で5年前に起こった殺人事件を選んだんですよ。その事件は白人で金髪美人のアンディ・ベルが殺されて、遺体が見つかっていない、アンディの当時の彼氏、インド系イギリス人のサル・シンが父親に犯行を詫びるようなメッセージを送って自殺したので、サルの犯行と決めつけられちゃってるんですね。でもピッパはこれに疑問を持って、本当にサルが殺したのか、アンディの遺体はどこにあるのか、その謎を解こうとするわけです。アンディはサルのことを個人的に知っていて、非常に聡明で優しかったサルがそんなことをするのは信じられなかったんですね。それにサルが自殺しなければ、サルを犯人とする根拠は薄いんですよ。当初サルにはその夜一緒に過ごした友人たちの語ったアリバイがあったんですけど、突然全員がそれを翻したんです。それに父親に送ったメッセージの文体もいつものサルとは違った。でもサルがインド系で、それに死んでしまったのでなんかもうこれで決着みたいになってしまったんですよね。
アンディはいろんな人にインタビューして事実を掴み、サルが死ななければ疑われたであろう容疑者をリストアップしていきます。アンディが報道されたようないい子ではなかったこともわかってきます。彼女はたくさん恨みを買っていたし、なかなかリスキーな生活をしていた。ところが5年前の事件の調査を進めるうちに現在のピッパにも脅迫が及ぶようになります。「調査をやめろ」と。

面白かったですね〜!ジュブナイル小説って感じ。探偵役が優等生タイプの女子高生なので、話が犯罪的になっていくと「なぜこの人が真面目な女子高生にちょっと脅されただけで5年も前のことをペラペラと協力的にしゃべるのか?」という謎と「こんなことされたら私ならこいつとは距離を置く」という謎が出てきますが、全体として非常に爽やかで明るい推理小説です。残酷描写とか胸糞鬱展開とかない。最近の推理小説、残酷描写と胸糞鬱展開多すぎて食傷気味なのでよかった〜!たまに推理小説としては大したことない、作者は残酷描写のために想像力を使ったな!って感じの小説あってほんと嫌いなのでこれはよかった。
多少の主人公チートはありますけどピッパは魅力的な、しかもいそうな賢い女の子で好感が持てますし、相棒役のラヴィ・シン(サルの弟ですね)も魅力的です。「ずっとお城で暮らしてる」をちょっと思わせるところが最初の方あったんですけど、大丈夫です。ずっとお城で暮らしてるではない。

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