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【『孤狼の血 LEVEL2』評論/映画ライター・成田おり枝】

待ってました!愛すべき白石組の名バイプレイヤー、音尾琢真の煌めきを目撃

前作『孤狼の血』(2018)で主演を務めた役所広司は、続編『孤狼の血 LEVEL2』の公開にあたって「『孤狼の血』じゃけぇ、なにをしてもええんじゃ!」とコメントを寄せた。その言葉通り、危険な奴らを演じる俳優陣が思い切り暴れまくる姿を目撃できる『孤狼の血』シリーズ。そのなかでも、登場した瞬間に「来たぜー! 待ってました!」と観客を大いにニヤリとさせてくれるのが吉田役の音尾琢真だ。

前作では、スナックで下ネタ全開、大きな顔をして周囲を威嚇するヤクザだった吉田。そして、あるところに埋め込まれたご自慢の真珠を切り取られた吉田……。音尾の熱演によって伝説的なシーンが完成し、吉田は強烈なインパクトを残す役柄となったが、続編では「パールエンタープライズ」という企業の社長として堅気となってお目見え。パンチパーマは七三分けに変化を遂げ、生やしたチョビひげもうさん臭い! そんな吉田との再会に心が躍った人もきっと、多いはずだ。

音尾と言えば、メガホンを取った白石和彌監督とは北海道の同じ高校出身の先輩・後輩の間柄で、『日本で一番悪い奴ら』(2016)では刑事、『牝猫たち』(2016)では風俗店の店長、『ひとよ』(2019)ではタクシー会社の社長に扮するなど、次々と白石作品に参戦して唯一無二の存在感を発揮しており、白石組には欠かせない存在となっている。『牝猫たち』のイベントでの白石監督とのトークでは、「マネージャーには、白石先輩からのオファーは全部OKだと言ってある」と男気たっぷりに明かしており、未来に向けて白石組制覇を目指す意気込みだ。

以前、音尾にインタビューした際、自身の役者としての転機は『孤狼の血』だと語っていた。誰もが役者として男の生き様を刻みつけようとしている作品で、重要な役どころを演じたことで「僕もこの世界でやっていけるのではないか」と思えたという。こういったインタビューの場でもイベントであっても、いつも温かな人柄をにじませながら周囲を笑わせているのが音尾で、そんな彼が演じると、どんな役柄でもどこか面白い役になってしまうのがたまらなく魅力的。もちろん吉田も例にもれず、悪役的な立ち位置であってもどこか憎めず、思わず登場を待ち望んでしまうキャラクターへと昇華させているのは、音尾のなせる技に他ならない。

『孤狼の血 LEVEL2』の公開記念舞台挨拶では、音尾の口から「前作を撮り終わったときに白石監督とお食事をしていたら、『次は音尾くんと桃李くんのバディものにしようと思っているんだよ!』と言われて期待していた」という情報が飛び出す一幕もあった。白石監督も「(松坂桃李演じる)日岡と吉田のバディいいな〜と思っていた」というから、さらなる続編があるかわからない今でさえ、今後のシリーズの展開にワクワクしてしまう。いつか日岡と吉田のバディが見てみたい。その時どんな形で真珠が出てくるのか、吉田はどんな髪型をしているのか、趣味の悪いスーツをまだ着ているのか、いやそのバディものの案はまたきっと却下されちゃうのかな……妄想が止まらない。シリーズの生き証人とも言える吉田の活躍を、これからも楽しみにしたい。