見出し画像

金融・投資レポート ’21.11.28

今週は南アフリカで新変異株(オミクロン株)が検出されたことを受けマーケットが世界的に急落しました。世界保健機関(WHO)はこの変異株を「懸念される変異ウイルス」に指定、米・カナダ政府はアフリカ南部からの渡航者の入国を制限する方針を発表するなど、コロナ緩解のムードが一転したことで世界的にリスクオフとなりました。

長期金利は週を通じて約13%の下落となり、1.6%前半から1.5%を割り込み1.48%まで低下、ドルに対する利益確定売りや安全資産である円やスイスフランへの買いが進み、円高・スイスフラン高と連動性の高い日経・独DAXが特に大幅下落しました。中でもリスク選好度の高い小型株構成のラッセル2000や金利感応度の高いハイテク市場が特に売られる展開となりました。

株1128

為替も全体的にリスクオフながらも、特にリスク選好度の高いオセアニア通貨が売られました。ドルインデックスは11月からの上昇トレンドが否定され金曜だけで一時1%の下落を記録しました。ドル円が2円強下落したことで特にクロス円が相対的に大きく売られました。

トルコリラは下げ幅が拡大、9月からの下落トレンドが加速した形で週を終えました。

為替1128

商品も経済回復の不透明感が増したことで全面安。原油は日足200MAを割り込む展開、天然ガスはロックダウン懸念や本格的な冬期を迎えた家庭需要が高まり反発しました。

商品1128

今週はパウエル議長の再任やFOMC議事要旨の公表によって、FRBがタカ色を強めているということが明らかとなり、上値重く推移する中、新変異株のニュースによって一気に警戒感が高まる展開となりました。新変異株はデルタ株よりも感染力が強く、ワクチン耐性を持つ可能性が指摘されているなど、詳細が明らかになっていないにも関わらず、すでに南アフリカだけでなく香港やベルギーなどで感染報告が出てきています。

南アフリカやボツワナはワクチン完了率が20%程度と世界的に低い水準にあるわけですが、さらにその周辺国は1桁も2桁も接種率が低く、検査体制も不十分であることから実態の把握すらできていない国もあります。

<アフリカ地域 接種完了率マップ(赤字)>

アフリカマップ

つまり今回の変異株のみならず、今後もワクチン後進国を起点とした変異株の発生が次々に起こる可能性が高く、市場予想以上に未だ爆弾を抱えているということが浮き彫りになったと思います。

また再度感染拡大により人々の経済活動が鈍化してしまっても、政策金利は低く抑えたままですから緩和の余地がわずかな上に、行動制限された状態ではインフラ投資などの財政投融資も進みません。北半球が冬期に向かうことも懸念材料です。

変異種が発生してもワクチンや治療薬の展開スピードが勝ればよいわけですが、現段階では断定できず、来週は各保健機関や政府・製薬会社の見解に神経質な展開になると思われます。テーパリングや利上げどころではなくなるかもしれませんし、今時点で株を買える判断はできないと思います。来週もさらに深堀りするのではないでしょうか。

金曜日に原油がみるみる急落していく様子を眺め、コロナ感染拡大要因が根深い状況下でコモディティインデックスはインフレ上昇リスクのヘッジとして機能しないと判断しました。また長短金利のボラティリティが高まっている状況下で債券比率を上げることも心理的に抵抗がありますし、かといって今後の景気回復シナリオが全否定されたわけでもありませんから、一旦はキャッシュにしておこうと思います。ポートフォリオは株式30%、債券40%、現金30%に変更します。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?