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街弁のキャリアプランと交通事故事案

 弁護士法人ダーウィン法律事務所では、交通事故の処理を加害者側、被害者側、保険会社側で対応します。
 私は、いわゆる街弁としてキャリアを積む際には交通事故の事案を通じることが有用ではないかと考えています。私自身がそうであったため、ポジショントーク気味の点はご容赦ください。

交通事故処理から得られるメリット

①裁判や強制執行などの手続き面を会得できる

 例えば、相手が任意保険に加入しておらず被害者から相談を受けた際には、任意保険に加入していない以上、高額の賠償金を支払うことが難しいため、裁判を提訴し、判決を得た上で、高い確率で強制執行の手続まで行うことが多いです。

相談

交渉

裁判

強制執行

 この一連の手続きについては、通常、被害者側保険会社の弁護士保険で弁護士費用が賄えます。

 交通事故以外の 一般民事事件を対応しておりますと、強制執行手続きまで行う案件は費用対効果の点からも数が限られていますが、本ケースの場合ですと、端的に言えば、きちんと弁護士費用を頂戴しながら不慣れな強制執行事件を学べるというメリットがあると考えています。

 特に、近年の民事執行法の改正で、損害の種類によりますが、財産開示の手続きを実施したり、勤務先の特定が可能であり給与の差し押さえ手続きが可能であったり、金融機関に預貯金の開示を求めたり、諸々の手続きが可能となっており、これらの制度の運用を肌で感じながら経験を積むことができるものと考えています。

 したがってこのよう手続きを実践でき、かつ、執行分野は不文律の運用が多いため、書籍にない生の知識を会得できるという面で、交通時事案での弁護士スキルアップをお薦めする一つの理由です。

 なお、2022年現在ですと、任意保険の全国加入の平均は75%程度であり、案外未加入の人が多いのです。したがって、交通事故の事案をおこなっておりますと高確率で出会す案件の類型です。


②相手保険会社との交渉を通じて交渉力を磨く

 上記では、加害者が任意保険に加入していない事例をお伝えしましたが、ほとんどは、相手保険会社の担当者とやり取りをします。

 このやりとりが非常に重要と考えています。

 なぜなら、弁護士として生きる以上、さまざまな場面で交渉を行うことになりますが、弁護士一年目から対立している相手方と交渉するのはかなり骨が折れるものの、相手の代理人である保険会社の担当者(高学歴の高収入であり、ほとんどは理性的な方が多い。)と交渉することで、精神的ハードルをさげて、交渉力養成の第一歩を踏み出すことができるからです。

 極論ですが、少し誤ったことを伝えても、修正が可能であったり(対立している相手方の場合にはそのようにいかない)、自分なりに工夫して交渉力を養うことが可能と考えています。

 また、相手損保の方に教えを請うことも可能です。知らない単語や運用が出てきた際には、愚直に「まだ不慣れなので教えてください」と伝えると、ほとんどは快く教えて頂けるでしょう。


③同じ争点なのに、依頼者ごとに創意工夫の余地があること学べる

 交通事故事案は、同時に複数件進行します。同じ争点であっても、依頼者が異なれば解決方法も異なります。
 つまり法的に正しい結論が、依頼者満足に繋がらないことから、依頼者のために創意工夫しようという発想が生まれます。

④潰しが効く(個人事件に繋がりやすく、人生において損のない知識を得られる)

 交通事故は.平成30年には43万件も起きています。このように発生件数が多く、また身近な事故であるため、個人事件に繋がりやすく、また、弁護士会のLACに登録することで、案件の受注が可能です。 

平成30年中の交通事故発生件数は43万601件で,これによる死者数は3,532人,負傷者数は52万5,846人であり(死傷者数は52万9,378人),負傷者数のうち,重傷者数は3万4,558人(6.6%),軽傷者数は49万1,288人(93.4%)であった(第1-1図)。
【国土交通省統計】
国土交通省統計 

なにより、交通事故賠償の議論の蓄積から、

  • 人を怪我させた場合の慰謝料の相場

  • 後遺障害が発生した場合の賠償についての考え(慰謝料、逸失利益)

  • 個人事業主の休業損害の算定方法

といった、交通事故以外でも生じうるトラブルの際の【損害論】について、かなり強くなれると思います。例えばですが、

  • 上の階から水漏れしたから賠償してほしい(どこまで損害として計上できるだろうか?)

  • 医療ミスで火傷したから、クリニックを訴えたい(醜状痕が後遺障害に該当する要件はなんだろう?)

  • パワハラでうつになったから会社を訴える(交通事故でも労災を扱います。)

  • 店舗で客が暴れて数日営業ができなくなったので賠償請求したい(店舗の損害の算定は、決算のどこを確認するべきか?)

など、すべて、交通事故の裁判例の蓄積によって、明確な解がでてきますので、すぐさま個人事件にも応用できます(上記例はいずれも私が担当した案件でパッと思いついたものの実例です)。
 特に損害論については、私が保険会社側で担当していると、被害者側の弁護士の書面をみればその力量がわかることが多いです。

そもそも弁護士としてのキャリアとは?

 典型的な街弁の業務を考えましたが、多様な社会で弁護士としてのキャリアは無数あります。弁護士法人ダーウィン法律事務所では、交通事故事案を扱っていますので、よくある一般民事事件の一つとして交通事故事案から学べる弁護士としてのキャリアアップを、事案類型を分解して、クローズアップして考えてみました。

 法律事務所の就職活動の際に、交通事故事案を扱っている事務所の参考になればと思います。

 また、弊所では交通事故以外についても、相続信託、企業法務、刑事事件も、多く扱っておりますので、アソシエイト弁護士には案件をバランスよく担当して頂き、自分なりのキャリアアップをみつけてほしいと願っております。また、採用面談時にもどのようなキャリアを望むのかきくこともあります。

弁護士法人ダーウィン法律事務所
代表弁護士 荒川香遥

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