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マイナー好きなあなたのためのロンドンみやげ8選

ちょっとだけシリーズぽく。

さて、ロンドンに住んで10年も過ぎると、だれもみな、「日本のおみやげカルチャー」に苦しめられるようになる。だってもうネタが尽きちゃったもの!

ああ、今年も帰省の季節がやってきた。
トワイニングもフォートナム&メイソンも日本で買える。
東インド会社やらウィタードの紅茶もカバーした。
ショートブレッドもウォーカーズだってスーパーのPBだって買っていった。
料理好きの友達にマルドンの塩もあげちゃった。

さあ、今年は?
なにをおみやげに買って帰ればいいんだろう。
困った、困った。

コロナ前、インドやアメリカ、コロンビアやブラジルに出張していた時は、そのお土産で誤魔化してきた。
でもそのテクももう使えない。

ちょっとひねってあって。
話題もあって。
負担にならない値段で。
もらって困らないものを見つけたい。

そんな自分の経験から選んだ、王道じゃないおみやげを買って帰りたいひとに捧げる「マイナー好きなあなたのためのイギリスみやげ8選」。

さあスタート。

1.PG Tipsの紅茶

リストの一番最初にどうしてもあげたいのが、ピージーチップスの紅茶だ。

普通にティーバッグ1100個入りというパックが
手提げスタイルでスーパーで売っていること自体、すごいと思う。

イギリスといえば紅茶。

ロンドンに転勤してきてすぐのこと。会議が始まる前におじさんたちがみな給湯コーナーにいってミルクティーを作ってから会議室に向かう姿をみて「おお、ここはイギリスだ」と実感したものだ。

みんな、紅茶はかなり濃い目に出す。そして紅茶に入れるのは「クリーム」ではなく牛乳。砂糖はお好みで。
この濃くてミルクが入った紅茶のことを「ビルダーズティー」と呼ぶ。大工さんの飲む紅茶、という感じで、要は労働者の飲み物。

フォートナム&メイソンなんかのお皿付きカップで飲む上品で透き通った薫り高き紅茶ではない。
マグカップになみなみと注いで朝一番にがつんとパワーを入れるための紅茶だ。

ちなみに、イギリスで大工さんや電気工さんに来てもらったときは、まず朝に一杯、そしてお休み時間にもう一杯「紅茶でもいかが」といってこれを差し出すと、仕事の丁寧さがぜんぜん違う。

オフィスや普通の家庭の食品棚にあるのは、PG Tipsかトワイニングス、ヨークシャーティー、あるいはタトリーだろう。
ちなみに私が働いていた会社で、コスト削減のためにPG Tipsからタトリーに変更になった時、あまりにファシリティ管理部門にクレームが相次いだので、ふたたび戻されていた。
そのくらいみんな紅茶にはこだわりが強いのだ。

ヨークシャーティー
タトリー

あくまで好みの問題だとは思うけれど、タトリーはかなり薄い。
ヨークシャーティーはかなり濃い。
私にとってはPG Tipsはちょうどその中間。薄すぎもなく、濃すぎもない。ミルクを入れたときちょうどいい味なのだ。

日本へのおみやげに選ぶ理由が他にもある。
まず、日本で売ってるのをみたことがないこと。
そして、小ネタがあることだ。

2002年から2007年までの間、PG TipsのコマーシャルにはTipps Familyというキャラクターが使われていた。
その顔立ちから、お気づきだろうか。

The Tipps Familyが紅茶を飲むの図

そう、「ウォレスとグルミット」と同じクレイアニメーションのチームによるもの。
なので、ウォレスもCMに登場していた。

欽ちゃんの声がね…
浮かんじゃうのよね。

その後、キャラクターになったのが「モンキー」。コメディアンとの相棒ぶりと「You, me & a cuppa(俺とお前とこの一杯)」のコピーで人気を博した。

キッチンでの掛け合いがほのぼのよかった。

ちなみにこのモンキーはセサミストリートのマペットで知られるジム・ヘンソン・カンパニーによるもの。

どうも最近、ユニリーバが紅茶部門を投資会社に売却してしまったために、パッケージもすこし変わったし、この「モンキー」も姿を消してしまったようで残念。
味は変わらないとよいのだけれど。

2.ボーダーのバタースコッチクランチ入りビスケット

紅茶のお供といえば、ビスケット。
ちなみに、クッキーはアメリカ英語。イギリス人はビスケットと呼ぶ。

イギリスのおみやげ菓子として一番思い浮かぶのはどっしり重いショートブレッドだろう。
ショートブレッドは、小麦粉、バター、砂糖を使う焼き菓子。
卵が入るとビスケットになる。

そのビスケットのなかでも、私がおすすめなのが、マイナーブランドのボーダー。
とりわけバタースコッチクランチ入りと、ダークチョコレート&ジンジャーがお気に入りツートップ。

バタースコッチといえば、明治のチェルシー(廃番になり寂しい限り)。
あれの砕いたものが入っている感じ。
イギリス人が大好きなショウガ入りのこちらは
ダークチョコとの組み合わせがいぶし銀の味わい。

3.ティーケーキ

紅茶とビスケットときたあとに、「ティーケーキ」?
名前を聞くと、紅茶味のスポンジケーキを想像するかもしれない。
けれど、まったく違うもの。
直径5cmくらいのビスケットの上にマシュマロを乗せチョコでコーティングしたドーム状のお菓子だ。
一番近いのは森永のエンゼルパイだろう。

M&SなどではPB製品も置いているが、イギリス人に「ティーケーキ」といったらみんなが思い浮かべるのはこのタンノックのもの。

森永のキャラメルのように「変わらぬスタイル」を貫いていて、黄色と赤のパッケージがレトロでいい感じなのだ。

4. 007チョコ

すこし特別なおみやげをと思っているのなら、シャルボネル・エ・ウォーカーのチョコレートを。

といっても、ピンク・シャンパン・トリュフは確かJALかANAの機内販売でも取り扱っていたはず。
ここはきっちりマイナー路線でいこう。

エドワード7世の後援を受けたウォーカー夫人が、パリのショコラティエ「ボアシエ」から招いたシャルボネル夫人と共に1875年にロンドンでたちあげた英国王室御用達のチョコレート店。

それがダニエル・クレイグ演じるボンドの最終章「No Time To Die」のためにドライ・マティーニ味のトリュフを企画したのだ。

映画からずいぶん経った今でも売っているので、どうやら人気があって定番入りしたもよう。

話題も広がるし、味もいい。

10個入りで18ポンド。
空港の免税店でも買える。

5.Roses / Heroes / Celebrations / Quality Street

ボンドチョコが特別なだれかのためのおみやげだとしたら、こちらは同じチョコでも、ガツンとバラマキ用。
あるいは、うちの父のような「質より量」な超甘党のひとむき。

巨大な箱にザッと詰まったチョコは3つの異なるお菓子会社から4種類作られている。

RosesとHeroesはどちらもキャドバリーが出しているチョコ詰め合わせ。
Rosesがこの詰め合わせのためだけに作られたチョコが入っているのに対し、Heroesはスーパーや駅の売店で売っているキャドバリー製品のミニチュアが詰まっているものだ。

そのRosesと似たアプローチなのがネスレのQuality Street。
そしてHeroesと似たアプローチなのがマーズのCelebrationsだ。

クリスマス時期になるとどこのスーパーでも山積みになっている。
上二つが「これ買わないと食べられないよ味」で、
下二つが「ミニチュア味の吹き寄せ」チーム。

会社で、プロジェクトが完了したとか、クリスマス前だとか、自分の誕生日だとか、イベントのたびに誰かが買ってきてオフィスの片隅によく置いてある。

この4つのうちどれが置いてあったとしても、イギリス人たちはみんな「オレはこの味!」という好きな味と「いらない!」という嫌いな味があるのが面白い。

私はモルティーザが嫌いなのでCelebrationが一番ガッカリな箱かも。

ちなみに昔バレンタインデーに「私もたまにはバラ(の花束)とかもらいたい」といったら、スーパーのかごの中に、キャドバリーのRosesをいれられ愕然としたことがある。

6.コンソメ

「グレービー」ということばをご存じだろうか。
それそのものは「肉を焼いた時に出てくる汁」のことで、オーブン皿の下のほうに溜まる肉汁をいう。
それを、濾して、塩コショウで味を調え、小麦粉でとろみをつけたものが「グレービーソース」なのだが、イギリス人は(アメリカ、カナダ人も)ソースを略してどちらも「グレービー」と呼ぶ。

そして、これが大好き。
大好きすぎて、肉が焼かれていなくても、これをかける。

たとえばポテトに。

カナダではプーティンという「料理」になっているくらい

ヨークシャープディングというただグレービーをからませるためだけに焼かれるシュークリームの皮のような料理すらある。

10年以上いても、よさがわからない。

肉汁、なんだけど、肉がない時にもほしい。
じゃあ、どうするか。
1800年中頃に開発されたのが、牛肉の肉汁を濃縮したOxoだった。

爆発的な人気を博したOxoの濃縮肉汁。
こうして、イギリスの家庭では、グレービーにはOxoという流れができあがった。

むしろマグロキューブが思い浮かぶのは日本人だからか。

ちなみにテムズ川の川岸に立っているOXOタワーはマーケティングの一環として窓をOXOの形にし1920年代にできあがった。

最上階のレストランは眺めもよいし、味もよい。

と、さんざんOxoの話をしておいて、なんなのだが。

おみやげとしておすすめなのは、Kalloというブランドの減塩ストックだ。
味が強すぎないので日本人の味覚に合っているし、料理を選ばない。

減塩でないものにはマッシュルームやトマト&ハーブなども。

7.チェダーチーズ(トリュフ入り)


「貴重な埋蔵物」という意味のTroveを名前に冠したこのチーズと最初に出会ったのは、スノードニア山をみたくて出かけたウェールズの旅。

その名のとおりスノードニア・チーズ・カンパニーは北ウェールズの会社。
熟成チェダーチーズに黒トリュフをいれたこのチーズは、香りも申し分なく、なによりここのチェダーチーズそのものがとてもおいしい。

ワックスがけしてあるので、飛行機に乗せるのも心配ない。

日本への肉製品の持ち込みは厳密に禁止されていて、最近では特に厳しさが増している。
今や空港のコンベアベルトの周りにはかわいいワンコちゃん&怖い検疫のおにいさんおねえさん方がぐるぐる回ってクンクン匂いを嗅ぎ回る。

でも、チーズやバターなどの乳製品は、基本的に検疫の対象外なので、大丈夫。

8. 本屋のエコバッグ

さてマイナーなロンドンみやげの最後を飾るのは、エコバッグ。
といっても、あのアニヤ・ハインドマーチの目玉キョロキョロバッグではない。

メリルボーンの本店

Daunt Booksは1990年にJames Dauntによって旅行関連専門の本屋として開業した。
このJamesさん、そののちイギリスの大規模チェーン書店であるWaterstonesや、アメリカのチェーン書店Barnes & Nobleの経営をすることになった人物でもある。

その本屋のエコバッグが、マイナーみやげおすすめの最後のアイテム。

いろいろな色があって値段は15ポンド。

10年ほど前、おしゃれな人がみんな同じ本屋のバッグを持ってるぞと目についたのが始まりだった。
チャリ通勤の帰り道、Holland Parkのお店に立ち寄って購入。さっそく使ってみた。

と、気づいたのだ。

本をガシガシいれるようにできているので、重いものをいれるのに最適な作りだということに。
ワイン瓶や牛乳、キャットフードを入れてもびくともしない。持ち手の紐が幅広なので重くなっても手にも肩にも食い込まない。
横長のデザインなので、手に下げても肩に掛けても収まりがいい。

さらに。
テレグラフ紙やデイリーミラー紙の記事によると、セレブがなぜだか愛用しているらしい。

そう、たとえばベネディクト・カンバーバッチとか。

ね、ホームズ好きなら絶対でしょう。

ということで、あんまり知られてない(と思う)けれども、話のネタになるいくつかのおみやげアイディアをあげてみた。

定番ロンドンみやげじゃつまらない、というときに、参考にしていただけたら幸いである。


いただいたサポートは、ロンドンの保護猫活動に寄付させていただきます。ときどき我が家の猫にマグロを食べさせます。