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鍼灸治療の盲点❗️「痙縮」の治療を考察する。鍼灸師向けリハビリ講習会


脳卒中患者さんを担当した時
コロ「あれ?肘が硬くて伸びない。」
コロ「痙縮?拘縮?よくわからない。。」

コロちゃんは学校で学ぶ「筋緊張検査」では感じられない、臨床体感をしました。患者さんは単一の現象だけでなく、既往歴を含め症状が複雑化してる場合がほとんどです。

痙縮の病態理解がなければ、鍼灸治療でとにかく曲がっている肘を伸ばす、内反している足部を緩めるといった偏った考え方になりがちです。痙縮へのアプローチの最終目的は、患者さんの動きを改善するためだと私は考えています。治療展開を広げるためにも病態の理解は大切です。

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痙縮の定義

コロ「痙縮ってどんな病態ですか?」
先輩「まずは定義から見てみようか。」

痙縮(Lance.1980)
上位運動ニューロンの障害の一部として、伸張反射の興奮性の結果生じる、腱反射の亢進を伴った緊張性伸長反射の速度依存性の亢進状態によって特徴づけられた運動障害

まず定義を4つのポイントに分けて考えます。
それぞれの項目を簡潔に見ていきましょう。

【参考】痙縮の研究は進んでいますが、複雑なメカニズムあることがわかっています。ここでは他の文献を紹介します。

◾️上部運動ニューロン病変に起因し、継続的または持続的な不随意に生じる筋活動として現れる感覚運動の障害(Pandyan.2005)

◾️上部運動ニューロンの損傷によって、脊髄の反射回路の興奮性に対する促通と抑制の制御バランスが崩れた結果である(Li S.2015)

1:上位運動ニューロン障害

コロ「上位運動ニューロンって何ですか?」
先輩「運動指令を伝える神経線維のことだよ」

先輩「経路のどこかが損傷してしまうと麻痺が出現してしまうんだ」

脳から脊髄までの経路は、皮質脊髄路と呼び、手足の運動をコントロールしています。この経路は80%が延髄で交差するため、損傷を受けた反対側に運動麻痺が出現します。

皮質脊髄路の損傷範囲が広いほど、運動障害が大きくなるため、皮質脊髄路の健全性が予後に関与すると言われています。

【補足】残りの20%の線維は交差せずに、同側に下降する経路を前皮質脊髄路といいます。麻痺していない側も損傷した経路が関与しているので、「健側」と言わずに「非麻痺側」という表現が適切です。

2:伸張反射の過興奮性

コロ「どんな症状なのですか?」
先輩「代表例は、クローヌスなんだ。」

クローヌス:筋肉や腱を不意に伸張した時に生じる規則的かつ律動的に筋収縮を反復する運動

コロ「こんなにも動くのですね」
先輩「臨床では、患者さんの動作(寝返り後や立ち上がり動作前)でも出現することがあるよ」

動画では足部のクローヌスを例にしていますが、伸張反射の過興奮を患者さん自身コントロールすることは難しい場合があります。その場合、治療者は無理に手で押さえつけず、麻痺側に体重移動したり、足関節を底屈してみると軽減する場合があります。

3:腱反射の亢進

コロ「これは学校で学びましたよ」
先輩「実際の腱反射亢進を見てみよう」


コロ「こんなにも反応するのですね。」
先輩「腱反射は6段階評価を実施するんだ。亢進の場合は「筋腱移行部・筋腹」を叩打して、亢進の程度を評価しておくことが大切だよ」

4:緊張性伸張反射の速度依存性の亢進

折りたたみナイフ現象 
痙縮は速度依存性であるため、すばやく伸展することによって、伸展途中で瞬間的に抵抗が高まり、さらにそれ以上伸展しようとす ると急に抵抗が減弱する現象

コロ「定義はなんとなく理解できました。」
先輩「ここからは痙縮の評価について解説するね。大切なのは筋緊張の評価なんだ」

脳卒中患者さんの治療介入においては、筋緊張を適切に評価することはとても大切です。前提として筋緊張は、一定ではなく安静時と動作時で常に変化します。

【イメージしてみよう】早朝の起床時は身体は重く感じることがあります。これは覚醒が低く、筋緊張が低い状態です。しかし、ベッドから起きて朝支度を実施していると活動量が高まり、身体が動きやすくなります。これは覚醒と共に筋緊張が徐々に高まり活動状態になるからです。

脳卒中患者さんの課題は、正常域を越える筋緊張を呈することが多くまた筋緊張の調整が難しくなります。筋緊張が低すぎる場合は「弛緩」、高すぎる場合は「過緊張」となって身体動作が制限されます。

筋緊張の評価方法

筋緊張の評価方法は3種類あります。学校教育で学ぶ被動性検査は、安静時に、検査者が他動運動にて実施する評価となります。
評価方法としては、Modified Ashworth Scale(MAS)が一般的となります。

慢性期脳卒中患者において、痙縮に対する関節トルク評価によって得られた反射性要素や筋組織的な要素の値は、MASと相関がなかったため、動作における筋緊張の解釈にMASを用いる場合は注意が必要である。

Alibiglou et al: 2008

MASは安静時の関節運動の評価では有効ですが、解決すべき課題が動作であれば、動作時の評価が必須となります。例えば、歩行中に肘の屈曲が強まる場合、歩行のどのフェーズでどのように筋緊張が高まるかを評価する必要があります。

コロ「なるほど。動作の評価大切かも。」
先輩「ここからは痙縮によっておこる運動障害について解説していくね。」

痙縮運動障害の考え方   

コロ「動作時はどう考えればいい?」
先輩「近年では、痙縮に伴う運動障害の考え方が報告されています。」

Spastic movement disorder(痙縮運動障害)
拮抗筋との同時収縮を伴い
選択的な筋活動が行えない状態

痙縮運動障害は中枢神経系の原因だけでなく、二次的に生じる拘縮、筋萎縮や筋力低下も含まれます。また、姿勢の安定を保つために代償的な筋活動が生じることでも運動が阻害されている可能性があります。

これまでの、痙縮治療の考え方は安静時での筋緊張を下げること、つまり、異常な筋緊張を抑制または軽減することに重きが置かれていました。

しかし、鍼灸治療でベッド上の安静時の筋緊張を軽減しても、起き上がった瞬間や歩行を開始した瞬間に緊張が高まって、元に戻ってしまう方も多いのではないでしょうか?

痙縮の治療を実施する上では、安静時だけでなく、動作や運動時の評価を並行して実施しながら治療介入の選択肢を考えていく必要があります。

痙縮に対する鍼灸治療のエビデンス

脳卒中ガイドライン2015に掲載されている、鍼灸治療の論文をリハビリ目線で考察しています。



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