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新人職員のための債権管理『超』基礎講座ver.2022 6日目 [訴訟手続主要3分類]

ごきげんいかがですか?
まっつんの「明日からできる債権回収」にようこそ。

今回のシリーズは,新人職員のための債権管理『超』基礎講座 です。
これだけは知っておきたい基本中の基本を6回に分けておはなししますので,一緒に勉強していきましょう。

いよいよ,今回のセミナーも,最終回になりました。
今日は,訴訟手続主要3分類。
非強制徴収債権に関する,基本的なお話をしたいと思います
それでは6日目を始めていきましょう。

非強制徴収債権については,4日目にお話ししましたが,法的に債権を回収するためには,裁判所を通した手続きが必要です。

また,その手続きを,しなければならない と、規定もされています。そこで,特に効果的と思われる手続きを3つご紹介しますね。

1つ目の手続きは,支払督促です。
支払督促は、簡易裁判所の書記官が発するもので,原則として、債権者が書面に記載した理由の確認だけで,証拠調べをせずに発せられます。
特に証拠書類などが不要なので,一番手っ取り早い手続きと言えます。

2つ目は,即決和解,です。
訴え提起前の和解,と言われることもあります。
これは名前のとおり,裁判をせずに和解をする方法です。
当事者同士の話がまとまっているのであれば,裁判をしないと言っても,裁判所で裁判官も同席のうえで,和解内容について意思確認をして,裁判所が和解書類を作成しますので,その後の支払いに関しても期待が持てる手続きです。

3つ目は,訴えの提起,になります。
債権者が,債務者に対する支払いなどの請求について,裁判所に訴状という書類を提出することで手続きが開始します。
債務者との話し合いによる解決が困難な状態であったり,不可能な場合に使われることが多いです。
一般的に,通常訴訟と言われたりします。

続いて,それぞれの手続きには,メリットと,デメリットがありますので,
みなさんの抱えている債権の状態,状況によって,一番適したものを選んでいくようにしてください。

まずは,支払督促のメリットと,デメリットです。

支払督促のメリットはなんと言っても,手続きが簡単ということです。
裁判所書記官に所定の書面を提出すると,書記官の書類審査だけで,債務者に対して支払いの命令を出してくれます。
請求金額の制限もありません。
郵送で手続きを行うことも可能なので,一度も裁判所に行かずに行うこともできます。
そして,裁判所に納付する収入印紙も,通常訴訟の約半分です。
簡易,迅速に支払い命令を得ることができ,強制執行もできる。
これが支払督促の最大のメリットです。

続いて,デメリットもあります。
支払督促を申し立てる場合の管轄は,債務者の住んでいる居住地を管轄する簡易裁判所に申し立てないといけません。
民事訴訟法では特別な管轄がいくつか定められているので,できる限り債権者の所在地に近い裁判所で裁判を行うのが普通なのですが、支払督促はそれができません。
そのため,県外在住者であったりすると,交通費や時間も必要になりますし、効率が悪くなってしまう場合もあります。

債務者が行方不明の場合は,申し立てが成立しませんので,支払督促よる請求はできません。

また,請求できるのは,金銭の請求に限られます。
地方自治体の債権の請求は,基本的には金銭の請求なので特に問題はないのですが,公営住宅使用料の滞納で明け渡し請求もしたい場合は,明け渡しに関しては,支払督促に含めることはできませんので注意が必要です。

このようなことから考えると,支払督促が効果を発揮する場面は,債務者が同一県内など,近隣に居住していることが明らかであるときと,金銭の支払い請求のみの場合の時と言えます。

続いて,即決和解のメリットと,デメリットです。

即決和解では、金銭の支払以外についても強制執行できる旨の和解が可能です。
例えば,公営住宅使用料の滞納の場合,支払いされない場合は退去してもらうとか,即時に退去してもらうという内容も可能ということです。
次に,申し立てにかかる収入印紙は,一律で2000円とされています。
金額に関係なく,2000円で申し立てができるので,他の手続きに比べると,かなり安いと言えます。
また,即決和解の場合は,当事者同士で合意できていることが大前提ですので,手続きの終結までにはそんなに時間がかかりません。

一方で,デメリットももちろんあります。
当事者同士の合意が大前提ですので,合意できていない場合は解決ができません。

私の経験では,即決和解の申し立てをした後,管轄裁判所の書記官より,

債務者は間違いなく合意しているのか,
当日になって,合意を破棄することはないのか,
きちんと出頭してくるのか,

ということを,執拗に確認されました。

もう一つ,デメリットとして,よく挙げられるのが管轄裁判所が,債務者の住んでいる居住地を管轄する簡易裁判所に限定されます。
これは,支払督促と同じです。
そもそも,即決和解をする時点で合意を得ているということは,面談もしていると思いますので,そこまで遠方の事例ではないと思います。
そう考えると,私個人的には,デメリットとは捉えていません。

即決和解が効果を発揮する場面は,債務者と支払い関連の合意ができている場合,その合意を破棄せず必ず出頭する場合と言えます。
ある程度,お互いに問題を解決したいという信頼関係の上に成立する手続きかもしれませんね。

次は,通常訴訟のメリットと,デメリットです。

通常訴訟のメリットの1つ目は,債権回収に関する争いを解決できる見込みが高くなることです。
支払督促などの場合は,異議を出すなどして争うことができます。
一方,訴訟で判決として決まったことは絶対的なものとなります。
2つ目は,強制的に権利を実現できることです。
債務者が拒絶しても,裁判所が認めてくれたら,強制的に債務の支払いをさせることができます。

3つ目は,支払督促や即決和解の場合は,管轄裁判所が債務者の居住地を管轄する簡易裁判所という制限がありましたが,

通常訴訟の場合は,債権者の住所地を管轄する裁判所に申し立てをすることができます。

続いて,デメリットです。
通常訴訟には非常に労力がかかります。
法的な主張をまとめた書面を作成する必要もありますし、裁判所に提出する証拠資料も集めないといけません。
債務者から反論などがあれば,その都度,書面提出を求められることもあり,一度の期日では終わらないことがほとんどです。

もう一つのデメリットは,判決などにより債務名義を取得したとしても,最終的に回収ができるとは限りません。
これは,通常訴訟に限られるわけではありませんが,強制執行できる財産がなければ回収不能になる可能性もあります。

通常訴訟が効果を発揮する場面は,債務者が県外などの遠方にいる場合や,支払い交渉がまとまらない場合など,問題解決に時間がかかりそうなときは,通常訴訟が有効な手段になるといえます。


いよいよ、最後の項目になりました。

議会の議決と専決処分について,簡単に触れておきます。

これまで,地方自治体の債権についての,債権回収を

中心にお話ししてきましたが,訴訟手続きが必要な,非強制徴収債権については,議会との関係も覚えておく必要があります。

それは,地方自治法第96条各号に規定される議会の権限の中に,訴えの提起や和解などが含まれているからです。

今回の該当する条文は,地方自治法第96条第1項第12号になります。

でも,議会って年間の開催回数は決まっていますし,手続きを行う際に,その都度,臨時議会を開くというのは,効率が悪すぎます。
そのため,地方自治法の中には,専決処分に関する規定が設けられています。

専決処分については,2通りの規定があるのですが,可能であれば,第180条の規定が提供できるよう,議会権限のうち軽易なものに該当することとして,議会より専決処分の指定をうけておくことをおススメします。
もしかしたら,既に専決処分の指定を受けている可能性もあるので,みなさんの市町村の例規集を確認してみてください。

第179条の専決処分については,あまり乱発すると議会軽視と言われかねませんので,ほんとにやむを得ない場合のみ適用するようにしてくださいね。

それでは,全6日間のセミナーを終了したいと思います。

最後に,私から皆さんに応援のメッセージを送らせていただきますね。
債権管理においては滞納者の状況も多種多様であり,適用法令も複雑に絡み合っているため,画一的な対処は極めて困難です。
そのため,今回の基礎講座をもとに,それぞれの事例に応じて,必要な法令や事例を学習し,経験を蓄積してください。


また別の記事でお会いしましょうね。

ここまでお付き合いありがとうございました。

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