見出し画像

散歩のひと キンランを見る

 久しぶりに植物の話。
 困ったことに、最近の偏った受験勉強のせいか、生物、とくに草花の生態を学校でほとんど教えない。
それでも光合成くらいは理解していると期待しているが、農獣医学部関係へ進学した息子と違い、娘達の知識は怪しい。

キンランを探す
 さて、今年もキンランを見られる季節となった。東京では連休前辺りがピークだ。咲いている期間は短い。
昨年は多摩丘陵を探し回ったが、そこにはあまり見られず。地元の雑木林の中で沢山見ることができた。

 「こんな所で!」と驚いた。
この辺りの緑地、公園では、ほぼ見られなくなったカントウタンポポが群生している。またフジバカマも栽培させていて、アサギマダラ(渡り蝶)も見られる。

 人為的に自然環境を取り戻している。自治体とその人達の努力に驚いている。不法投棄、ゴミがない都市近郊の緑地帯。保っのは相当に民度が高くないと不可能だ。

 当然このキンランも、人の手が入って増やしているのだろう。そうでなければこれほど群生しているはずが無い。
基本的にキンランの移植は困難と言われている。おそらく同じ地域内で移植をしているのだろう。

キンランの移植
 キンランの栄養分はコナラなどの樹木とその根につく特定の菌根菌による三者共生環境が成立してないと枯れる。
難しい言葉が並ぶけど、これは特定の菌と共存しないと炭素を吸収できないことをいう。

 つまりキンランは立派な葉を持てはいるが、実はその光合成だけで生きていけない。外生の菌根菌と共生してさらに栄養(炭素)を入れている。つまり生存が難しい植物ということになる。 

 キンランは1990年頃までは、雑木林によく見られていたが、開発による雑木林の減少、また鑑賞用の外来種のラン、そのタネに混入したハエの虫害もある。さらに野ランの乱獲もある。色々な環境変化で激減した。
現在キンランは環境省レッドリストで絶滅危惧種に指定されてしまった。

 脳内で環境保護活動をしても動植物は絶滅する。フィールドワークがないと環境保護は理解出来ない。
最近、本当にシフティング・ベースライン・シンドロームが激しい。
自然環境の状況を投稿しても、むなしさを感じる。

特記:
[シフティング・ベースライン・シンドローム(shifting baseline syndrome)]
 シフティング・ベースライン・シンドロームは自然環境の保全にも関係する。
 幼少の頃や最初に接した自然環境が基準となるため、環境が以前よりも劣化している場合、知識が浅くなるばかりでなく劣化した環境を特に異常だと感じない。

[キンラン(金蘭)]
 ラン科キンラン属の多年草で、地生ランの一種。和名は黄色(黄金色)の花をつけることに由来する。

 山や丘陵の林の中に生える地上性のランで、高さ30-70cmの茎の先端に4月から6月にかけて直径1cm程度の明るく鮮やかな黄色の花を総状につける。

 花は全開せず、半開き状態のままである。花弁は5枚で3裂する唇弁には赤褐色の隆起がある。
葉は狭楕円形状で長さ10cm前後、縦方向にしわが多い。柄は無く茎を抱き、7、8枚が互生する。

[菌根菌]
 植物の根に共生する菌類のこと。菌根菌は土壌から吸収した養分を樹木に渡し、樹木からは光合成の産物である炭水化物をもらうことで共生する。

[三者共生環境]
 コナラ等の樹木、菌根菌、キンランなどのラン科植物の三者が地中部でつながり、光合成産物、無機養分等をやりとりする関係が成立する環境のこと。

武蔵野台地のキンラン
武蔵野台地のキンラン
武蔵野台地のキンラン
武蔵野台地のキンラン
武蔵野台地のキンラン
武蔵野台地のキンラン

クサイチゴ 
 キンランを探していると、クサイチゴの花を発見。実は食べられる。
過去に食べたことはある。いや無いなぁ。
長野の松原湖で見つけたが、息子が食べていた。私は食べてない。

武蔵野台地のクサイチゴの花
松原湖の湖畔のクサイチゴの実

カントウタンポポの群生

カントウタンポポの桃源郷

観察シーズンだ
 春から夏にかけて、動植物の観察には非常良い時期、自然観察をかねた散歩をお勧めしたい。
観察ツアーに参加するのもいいけど、本当は一人で行くのがお勧めだ。

 最初は、観察する目が出来てないので、何も見つからないこともある。
でもだんだん観察眼が出来てきて、人が見えない動植物が見えるようになってくる。その都度本当の知識を得ることになり、自分の五感がアップデートしていく。
その喜びを子供達にも是非体験させて欲しい。 

 子供達と清里でアサギマダラを見る
 結構人もいたが、家の子供達とアサギマダラを追っている女性しか気づかない。その人と感動を分かち合う。

 子供達もアサギマダラの飛翔姿の美しさに見入っていた。その気持ちが将来の環境保護へ繋がる。座学で環境保護を教えるより外へ出て観察、これが一番いい方法。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?