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好きな作家 ボストン・テラン 覆面作家で手強い

このミステリーがすごい!
 一時期、毎年刊行される「このミステリーがすごい!」を参考にして小説を買っていた。
ボストン・テランはそこで評価がよかったので覚えており、本屋で平積みの「音もなく少女は」を見つけた時、その表題と表紙にインパクトがあり、面白そうなので買った。2010年8月の初版だった。

「音もなく少女は」
 翻訳本は宗教感が強い比喩が多くあり、読みにくいものも多い。また一般教養の欠落している私には読むのに労力がいる。内容も人間の本質的な弱点と悪、暴力性を付いてくるので相乗効果の辛さだった。
でも私は読み進めた。読書は闘いだ。日数はかかったが読んで良かった。

音もなく少女は

 遙か昔、私は学校での勉強なんか全くせずに、ナナハン乗って、ロックを聴き、アルバイトをして遊んでいた。それでも何故か読書はしていた。
10代の馬鹿野郎だったから、本の中の漢字、熟語、比喩などわからんことが多い。
読みながらメモして、後で辞書を引く。そんなスポーツの反復練習みたいな読書を続けていた。
大学では、教授の書いた下手くそで難解な文章を必死に紐解いていた。
だから本を読むという事は労力と努力が必要だと認識していた。

 読書を軽いエンタメとして捉えている人、実用書を斜め読みして情報だけを素早く詰め込んでいるような読書をしている人。そのような方には向かないと思う。お勧めしない。内容もほぼエモーショナルなもので、心を豊かにするけど知識とはならない。

 物語は、1950年代 ニューヨーク、ブロンクス。荒んだ街に耳が聞こえない1人の少女が生まれた。彼女の周りの女たちの人生の苦しみと戦い。唯一優しい彼氏が、くだらないことで殺される。その描写では私は泣いた。
「不条理すぎる」
そして、何故かこの曲が頭に鳴り弾いていた。
James Morrison - You Give Me Something


 ボストン・テラン(Boston Teran、本名・生年非公表)
アメリカ合衆国のイタリア系アメリカ人]作家。ニューヨーク市サウス・ブロンクス生まれ。覆面作家であり、性別も不詳である。
過去インタビュー記事を読んだことある。
まだあった。

日本での刊行 その年度
神は銃弾 2001年9月
死者を侮るなかれ 2003年9月
凶器の貴公子 2005年8月
音もなく少女は 2010年8月
暴力の教義 2012年9月
その犬の歩むところ 2017年6月
ひとり旅立つ少年よ 2019年8月

 死者を侮るなかれ以外は全て読んでいる。
これは廃刊になっており、ブックオフオンラインで2021年にようやく手にいれた。

アメリカでの刊行 その年度
Gardens of Grief 2011年
The Cloud and the Fire 2013年
The Country I Lived In 2013年
By Your Deeds 2016年
How Beautiful They Were 2019年

全て読んでない。

   現在、翻訳されたボストン・テランで一番好きな本。
その犬の歩むところ」 2017年6月
理不尽な人間の暴力と自然災害を相手とした犬の物語。最後は希望の光が見えて読後感が最高の本だ。読み終わった後、表紙を撫でている自分がいた。

 犬の名はギヴという。
ある事件で迷い犬となるギブ、偶然優しい少女に拾われる。
運命の定めか、ハリケーンカトリーナによって悲劇が起こる。
少女と別れた後、囚われの身となるが、その檻を食い破り、傷だらけとなり山道をさ迷う。そこで傷ついた帰還兵と出会う。
犬と出会い別れる男と女たちと、そこに静かに寄り添う気高い犬の物語。
私みたいな単純なおっさんは、本の良いところしか見ないが、それを差し引いても感動的な物語だった。

その犬の歩むところ

 2019年、ある日、ブックオフに入るとその犬の歩むところ を見つける。
値段をみると100円!思わず買った。
ブックオフは古本屋ではない。中古本屋だと思った。良い本が安く手に入る。だから今、古本はブックオフオンラインで購入している。

 ボストン・テランの本は読み始めに力がいるけど、真ん中過ぎると、重い列車みたいにドンドンと突き進んでいく、止まらない暴走列車だ。

ひとり旅立つ少年よ 2019年8月
 日本での最新刊、これは子供でも読める内容だった。

1850年代後半のアメリカ。12歳の少年チャーリーは4千ドルの大金を上着の裏地に縫いこんで、ニューヨークからミズーリに向けて旅立つ。そのお金は奴隷解放運動の資金として奴隷制度廃止運動家に届けるためだった。

 暴力 正義 教義 改めて人間の生きる意味を考える。
「君達はどういきるか」
・・といわれても、既に終わっている私。

ひとり旅立つ少年よ

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