見出し画像

【1000字書評】大槻ケンヂ『サブカルで食う 就職せず好きなことだけやって生きていく方法』

言わずと知れた、筋肉少女帯のボーカル大槻ケンヂさん(以下オーケン)の著書です。わたし自身、オーケンさんの著書は『のほほんシリーズ』に代表するエッセイから『グミ・チョコレート・パイン』のような小説までたくさん読んできました。本書のタイトルは以下にもハウツー本な感じ。どんな中身なのか気になってさっそく読んでみました。


【概要】
オーケンといえば、サブカルの代表的オジサンというイメージがある方も少なくないかと思います。本書でサブカルは「一応本業らしきものを持ってはいるけれど、どう考えてもそれ一本で食っているとは思われていないって感じ」(pp11-12)の人と定義されます。北海道の星である掟ポルシェさんとか、ミスidグランプリの水野しずさんなんかが連想されます。ミスチルの『everybody goes 秩序のない現代にドロップキック』歌詞にある「知識と教養と名刺を武器に」働くサラリーマンとは真逆な感じ。

本書はオーケン自伝的エッセイでもあり、箴言集でもあります。章立ては彼の幼少期から青年期、筋肉少女帯結成からメジャーデビューの栄光と苦悩まで時系列的に書かれ、そこにサブカルで食う楽しさと難しさが描かれています。

ちなみに、サブカル系の雑誌名やアーティスト、作品がたくさん出てくるので、本書には41ページもの注釈がついています。辞書かよ。


【感想】
本書を読んで、明らかにハウツー本ではないことがわかりました。オーケンさんの言葉をいくつか引用しながら感想を述べてみたいと思います。

「自由」ということは何でもできるということではないんです。自己を律して生きていかないといけないということなんです。

p142「自由ということの不自由さ」

好きなことをして生きるのはとても難しい。不自由である方が楽である。これは真理だと思います。それでも好きなことを選ぶなら道は険しいぞ。そんなことを教えてくれます。また仮に好きなことで飯が食えたとしても、自分の表現に対して周囲から様々な意見を言われ、不自由になってしまうことだってあります。

何かを表現することを仕事にすると直面するのが、ダメ出しとのかけひきです。やっぱり、色んな人が間に入ってきてどんどん自分の表現が変わっていくのって最初はショックを受けるんですよ。でも、それで食っていきたいと思っているのならば、そういうこともむしろ「面白い」と考えちゃった方がいいかもしれないです。

p95「相手のニーズを受け入れるゲーム」

自分の表現を生のまま外に出すことは難しいし、結局、孤独で好きなことをして飯を食うことはできないんですね。飯を食う、仕事をするってことは他者とともに活動するということなんだと改めて感じました。

本書でオーケンはサブカルで食うための必要条件を「才能・運・継続」としています。これ、結局サブカルじゃなくたってそうなんです。自分でどうにかできるのは継続のみ。それはオーケンのいう「自分学校」で作るしかないようです。

自分学校は「学校の外に作るもう一つの学校」で、そこで学ぶものは自由です。漫画でも映画でも音楽でもなんでもいい。自分の興味関心に忠実に、熱中できるものです。これが必要条件のひとつである継続として、大人になったとき、花を咲かせるのかもしれません。

自分が極めたいものを極める。才能や運はどうしようもないから、引っかかったらラッキーだし、そうならなければ(その可能性の方がはるかに高い)普通に生きるのもありなのかもしれません。わたしは意地でも前者を選ぶけど。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?