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休日の"脳内妄想ピクニック”はいかが!


休日は、日当たりのいい部屋で、脳内ピクニックをしています。

部屋の真ん中に2脚の椅子を置き、その間の小さなテーブルに、お茶や軽食、あるいはお酒やおつまみをセットします。レースのカーテンを引いたまま窓を開けると、風が見えてきます。昼過ぎには日差しも強くなるので、麦わら帽子も用意しました。

そして、選んでおいた本の、季節感豊かな情景が描写された頁を開きます。そこを起点に、前に戻ったり、先へ進んだりの、気ままな本読みを始めるのです。

今日は、そんな三つの脳内ピクニックをご紹介します。

まず、春のピクニック。作品は、伊藤佐千夫作「春の潮」から。
かつて隣の家のお嫁さんだった女性と、結婚を目指す青年のお話です。
青年の温かさを育んだ故郷の春が、次のように描写されています。

 上総は春が早い。人の見る所にも見ない所にも梅は盛りである。菜の花も咲きかけ、麦の青みも茂りかけてきた、このごろの天気続き、毎日のどかな日和である。森をもって分かつ村々、色をもって分かつ田園、何もかもほんのり立ち渡る霞につつまれて、ことごとく春という一つの感じに統一されている。

この春の景色に合わせ、梅花型のお弁当箱に、グリンピースを混ぜたおにぎり、卵焼き、菜の花の天ぷら、焼き鮭を詰めました。生ビールも忘れずに!


次は、気が早い鎌倉での避暑を、岡本かの子作「鶴は病みき」から。
この作品は、鎌倉での芥川龍之介との交流を書いたもの。炎天下、主人公とその夫が避暑する貸家を探す様子が、次のように描かれています。

 光る鉄道線路を超えたり、群る向日葵をところどころの別荘の庭先に眺めたり、小松林や海岸の一端に出逢ったりして尋ねまわったが、思い通りの家が見つからなかった。結局葉子の良人(おっと)の友人は葉子たちをH屋の一棟へ案内した。H屋は京都を本店にし、東京を支店にし、そのまた支店で別荘のような料亭を鎌倉に建てたのであったが商売不振の為め今年は母屋をまぜた三棟四棟を避暑客の貸間に当て、京都風の手軽料理で、若主人夫婦がその賄いに当たろうと云うのであった。

熱い中をお疲れ様でした。まずは、冷え冷えのサイダーを一杯どうぞ。茹でた枝豆、茄子の煮びたし、穴子の白焼き、そうめんを用意しました。冷酒もありますよ。


最後は、夏の終わりの軽井沢。作品は、堀辰雄作「ルーベンスの偽画」。
主人公の軽井沢で見聞したことへの瑞々しい反応が、次のように描かれており、いかに、彼が幸福な時間を過ごしていたかが、思われます。

・本町通りにいた、色とりどりな服装をした西洋婦人たちが、虹のように見えたこと
・夏の末近い寂しい高原を、大好きな人たちとドライブしたこと
・草の上に倒れていた二台の自転車のハンドルとハンドルが、腕と腕とのように絡み合わっていたこと
・ホテルのテニス・コートから、ラケットの、シャンパンを抜くような音が聞こえたこと

夏の終わりに少し気が塞ぐようでしたら、まず、ジャムを乗せたクッキーとダージリンティーを楽しんで。もう少ししたら、プロセッコとサンドイッチを用意しますね。具は、キュウリ、玉子サラダ、ハムとチーズですよ。

私の休日の過ごし方、脳内ピクニックをご紹介しました。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

#休日のすごし方

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