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夢でも現でもない

ふと目覚めると、私は四方八方が鏡で囲まれた狭い空間で立っていた。私は狼狽したが、現実ではあり得ない、と冷静になった頭で思考する。一度両手で頬を叩き、気を取り直してよく周りを見渡すと、違和感に気づいた。
「私の顔が見えない」
どこを見ても自分の後ろ姿しか見えない。
どこを見ても私に背を向けている。不思議な鏡もあるものだと楽観的に考えながら、この空間を楽しむ。目を凝らすと後ろ姿以外にも景色が見えた。小学生の頃、公園で友達と遊んだこと。中学生の頃、アイツと喧嘩したこと。高校生の頃、部活で負けて悔しかったこと。昨日の事、自販機でお茶を買ったこと。些細なことが鮮明に映っていて、懐かしく思う。すると、鏡に映る1人の私がだんだん暗くなる。徐々に見えなくなり、私は姿を消した。また1人、また1人と。暗闇に怖くなった私は消えかかった最ごの私に手を伸ばす。暗闇に染まる。

私は目覚めることはなかった

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