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映画『LION/ライオン 〜25年目のただいま〜』

■はじめに
ノンフィクション小説『25年目の「ただいま」 5歳で迷子になった僕と家族の物語』を題材にした実話。

*製作のプチ情報(wikipediaより)
・約1,200万ドルという予算で製作されたが、全世界で1億ドルを超える興行収入を記録
・本場ハリウッドのアカデミー賞6部門にノミネート、
惜しくも受賞はなかったものの、
オーストラリアや英国のアカデミー賞でも
絶賛を受け各賞を受賞

■あらすじ
※タイトルから「25年間かけて"ただいま"するのかな?」
というストーリー展開は予想されるはず。
そこまでは既にネタバレしても良い範囲だと思うのであえて記載…

インドの田舎町で生まれた主人公のサルーは、
貧しいながらも母と兄から愛情を受けて育っていた。
ところが5歳の頃、兄と郊外へ出掛けたまま一人迷子に。
長く彷徨った末、オーストラリアに住む夫婦のもとに
養子としてもらわれることに。
20年後、メルボルンで大学生活をしていたサルーは、
友達のホームパーティで見つけたインド菓子をきっかけに
祖国に残した家族の存在を思い出し…。


■感想

①血の繋がらない愛情、血の繋がった愛情

劇中では、インドに残した血縁の家族と
オーストラリアに住む義理の親が対比して描かれる。

インドでは、貧しく自給自足、父親もいない、
迷子になった後は誰一人助ける大人はおらず、
貧しい子供達が溢れる世界。
オーストラリアでは、お金にも心にも余裕があり、教育も充実し
自由な意思で新しい家族を迎えることができる世界。
まるで天と地のような格差。

それなのに、インドからやってきたサルーが
オーストラリアで夫婦に引き渡されるシーンは
とても「よかったね」とは思えない。
施設の女性は「あなたはラッキーよ」と諭す、
しかしそれは果てして本当に少年にとってラッキーなのか…

劇中では5歳の少年の目線でカメラワークが動き、
遠く離れた地に降り立ち新しい家族とともに生きる運命を
幼心に悟る瞬間に共感を生む。
不安と期待が胸を渦巻き、何とも切ない感情になる。

やかで、幸運にも新しい親もまた
たくさんの愛情をサルーに注いでいく…
その姿が、家族における"血の繋がり"の意味とは一体何なのか
とても考えさせられました。

②なぜオーストラリア人夫婦は、
 インド人の幼子を養子として引き取ったのか

私の1番好きなシーンがここです。

物語の終盤で、この「なぜ養子として引きとったのか」が明かされるまで
義母がサルーにただただ深い愛情を注ぐ様子が
温かみを持って描かれます。

突然現れた他人が
なぜこれほどまでに自分を愛してくれているのか、
優しく接してくれるのか。
その真意がわからず物語が進む様子は、まるで少年の視点のよう。
少年はただ無邪気で純粋で、親の気持ちはわからない。
いや、きっもわかる必要もないのだ。

その真意が、大人になり考え、悟る力がついた後に
自ら答えに向かって悩み抜いた後に
義母の口から強い重みをもって語られる。

きっと言葉は、本心は、伝えるべき時に伝える必要があるのだ、
そう納得感をもって思えた。

③「ニコール」をはじめとする実力派俳優陣による心温まる演技

これは言わずもがなですが…
子役の少年、大人になったサルー役のデヴ・パテル
義理の母親役のニコール・キッドマン、大学の友人役のルーニー・マーラ、
際立って良い役割をしていました。
この4人は全員に感情移入できる、素晴らしい作品でした…!

ちなみに、何で「ライオン」なの?
かは、物語の最も最後のシーンで明らかになる🥰

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