小説を読む を読んで 多様な読み方について学んでみる
今回は書評です。
対象書籍は、平野啓一郎氏の「小説の読み方」です。
以前、氏の「本の読み方」という著書を読んで、速読の対極にある本の読み方 について学びました。
文章の構造に注目したりしながら、ゆっくりと書籍を味わう、その味わい方などについての著書でした。
実際の書籍をサンプルに取りその一節を引き出し、読み方について指南するという非常に実践的な本でもありました。
その著書を読むことによって、急いで読む必要がないこと、そして著書の内容やそのディテイルについて気をつけながら読む 手法について学ぶことが出来、読了後に理解した内容の深みを感じられるようになりました。
今度は、Kindleのおすすめ書籍から「本の読み方」をもう少し深掘りした著書がある ということで購入してみました。
今回は、「小説の読み方」と題されており、小説を読むときにどのようなアプローチを使ったら深く読み込めるか、という話でした。
では、書籍のメタデータを貼っておきますね。
今回も読書ノートからの書評ですので、小理屈野郎の読書ノート・ローカルルールの凡例を以下に示しておきます。
書名 小説の読み方
読書開始日 2022/06/10 16:27
読了日
読了後の考察
平野啓一郎氏の「本の読み方」を読んで、氏の分析力の高さを感じた。
これと同様に、本書は小説の読み方、を指南してくれるのかな、と思っていたのだが、だいぶと毛色が違っていた。
校正としては、最初に総論というか理論編をまとめ、その理論編の実践としていくつかの著作について自分の感想等を交えながら詳説している。
確かに分析としては非常に貴重だし、納得の出来るところもあったが、ここまで分析してしまうと、小説の世界を本当に楽しめるのかな 、という気もしてきた。
このような分析法があること、そして、その分析をもって「とき」自分も実践してみるぐらいのことで良いのではないか? と考えた。
概略・購入の経緯は?
「本の読み方」の平野啓一郎氏の著作。Kindleでフォローしているため、そちらからのおすすめがあり購入。
ある意味ハウツー本だが、小説家がどのようなスタンスで読書をしているか、そしてどこに作品のポイントがあるかを述べているはず。
それらについて、知ってみるのも悪くないと思い購入した。
本の対象読者は?
小説の読み方を勉強したい人
小説の書き方の片鱗を観たい人
著者の考えはどのようなものか?
・小説の読み方
→基本的には自由
☆おそらく、この著書を読了したら、かなり分析的に小説を読もうとしてしまうことに対する警鐘なのかも知れない。
・小説への4つのアプローチ
1.メカニズム
どのようなレトリックがあって、それがどのような効果を書籍内で出しているのか
例)舞台設定、登場人物の数、配置と出入り、プロットの展開、文体などがその要素となる。それらの一つに注目して、分析してみる。2.発達
その作家の人生の中で、どういうタイミングでその作品が出てきたのかということを考えてみる。
→1.と2.は、ジャンルとして近いと考える。
3.機能
ある小説が、作者と読者の間で持つ意味がある。それがずれてしまうこともある。
この機能を単純化して示したものがジャンル分け。
→ジャンルに関しては、近年より具体的に、宣伝的になりつつあることに注意。4.進化
社会の歴史、文学の歴史の中で、その小説はどんな位置づけにあるかを考えてみること。
☆文学史の知識や社会的な知識が必要になってくるだろう。古典では難しくなる傾向があるだろうが、現代作品の場合は比較的容易かも知れない。
→小説を読み、ブログや課題などで感想を書くときに上記4つすべてを網羅する必要はない 。
ただし知っておくととっかかりはずいぶんとスムーズになる し、他人の感想を読んだときに、どういう点に着目して議論しているのかがよく分かるようになる。
・主語と述語と間に挟まる矢印
→主語;作者によって具体的に選び取られたもの。
→述語;主語に述語を入れることで単線の文法構造に引っ張り込む。つまり、現在から未来へとまっすぐにすすめんでいる時間の流れの中に、しかるべき位置を与える。
その間に助詞がはいる。それを矢印で表現
主語←述語;主語を充填することにより、外側から間接的に、そうした環境におかれている登場時文物に影響を及ぼす。主語重点型述語とする。
主語→述語;プロットを前進させる(大きな矢印;プロット)の一部になる。プロット前進型述語とする。
註)ものによってはどちらの方向も指しているものもある。
→この矢印が集まった全体としての流れがプロット。
その上で色々な特徴のある小説をこの理論で説明してみる。
※「展開の遅い」とされる小説はピックアップされる主語が多く、さらに、文章に主語重点型述語が多い。逆に「展開が早い」とされる小説は、「誰某と会った、どこどこに行った、」と行動を意味するプロット前進型述語が多い。
※リーダブルで(読みやすくて)かつ、人物造形に深みがある小説というのは、プロット前進型述語の文章と主語重点型述語の文章との配置バランスが良く、全体としては、両者が兼ね備えられた文章が基調をなしていることが多い。
※完全に即興的に、そのつど<小さな矢印>の方向を定めていると、細かなごちゃごちゃした選によってプロットが紡がれてゆくことになり、終局に向かって、伸びやかで、ダイナミックな<大きな矢印>が描かれにくくなる。
※何かのテーマに着目するだけで、全く異なるように見える小説の間に、意外な共通点が見えてくることがある。
・主人公の名前
あえてつけているものの場合は、名前があるが、イニシャルの場合などもある。それぞれ使い分けをしている可能性が高いので、考えてみると良い。
・小説とは
・小説とメディア
携帯やスマホが出だしてから、ショートメッセージやメールなどを使うようになった。それによりかなり文章が細切れになっている。
その考えにどのような印象を持ったか?
なんだか分析ばかりして、小説を楽しく読めないのではないか、とも思うが、もっとたくさんの小説を読み込んでいけば、このようなことが自然と気になるのではないか とも思われる。
そうなれば、複層的に小説を楽しめるのではないか と思った。
また、著者のように非常に分析的に技法を使いながら小説を書いている人もいれば、自分から出てきた言葉を綴ることによって小説として成り立っている人もいると思う。割合は分からないが、そのような人の場合は、技術をあまり意識しない。技術を意識している作者とそう出ない作者の区別はおそらくつけかないだろう。
類書との違いはどこか
小説の構造について作家向けではなく読者向けに非常に詳しく分析しているところ
関連する情報は何かあるか
どのようにして小説家は小説を書いているかを垣間見ることが出来る。
まとめ
小説の読み方が複層的になりそうな予感のする著書だった。
おそらく個人的には小説を読み込んでいない、というのが一番の問題ではないだろうかと思われた。
小説、読んでも知識がつけかないし、ではない。読み方によって人生を豊かにしてくれるのだと再認識させられた。
読み出すと、なんだか芸術作品を分析するようで少し居住まいが悪いような気もしました。しかし、芸術作品(特に絵画)の場合は作者の作成時期の社会背景やそのときの作者の心象風景を知っていると、さらに作品を楽しめます。そのような意味でいうと、この書籍は、今後一つの著作(小説)にすべてのテクニックを使う必要はない(実際にこのうちの多くても2,3個までを使って分析していることが多かったです)が、いくつかの注目ポイントとして上記の知識を使ってみて、さらに豊かな読書体験が送れるかどうか確認してみようと思っています。
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