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カネモチ喧嘩せず~素敵なクレーマー~

小生の「精神的耐性」については、自身を振り返る上で触れずにはいられないと思うほど高い方だと自覚をしている。むしろ、47年間の人生9割はこのスキルだけで越えてきたと言っても過言ではない。
御蔭様で過去すべての仕事において、会社絡みの訴訟にならない限りは、小生のハードルを越えたクレーマーは存在せず、本当に楽しませていただいた。そこで過去どんなクレーマーがいたのか、小生自身も忘れないように備忘録を残そうと思うのだが、本日はまずクレーマーについて書いていこう。

小生は飲食業に約20年間従事した。そこでクレーム対応能力の礎を築いたのだが、そもそもクレーマーという人種が多数存在する「ゾーン」があるのはご存じだろうか。言葉を選ばずに言うと貧乏人ゾーンである。どこからが貧乏人かなどは知らないが、適当にいうと、外食に十分なお金をかけられない方達である。
彼らには余裕がない。明日の暮らしや水光熱費に悩む中で、外食に行ける回数は制限され、求めるハードルは必然的に高くなる。しかし、確実に満足できるサービスを得られる店に行くことも難しい。すると、彼らの理想と現実の狭間で「希望」は天高く立ち昇り、その頂点に達した瞬間、店舗のサービスがその高みに存在しなかった刹那、彼らの拳は雲の上から一直線に叩き込まれるわけである。
これはなかなかキツイ。そもそもこういった方達は論点がサービスそのものに存在しないパターンが多く、大抵は自身の面子に対して怒っているから始末が悪い。結果、謝罪のテンプレートは、「お客様のご期待に添えられませんでしたこと、まず深くお詫びいたします」となる。なんぞそれ?
もちろんホスト側の面子を本当に潰したときなどは、反省の弁を論じる必要性もある。しかしながらゲストを連れてくる場所が格安の焼肉食べ放題となると話は別だ。そんな所に「おもてなし」に値する肉など存在するわけがないだろう??
「孫が好きだから来たのに!」。お爺様はお怒りである。だが、もしも小生が孫を本当に喜ばせたいなら、本当に美味しい肉を食べさせる。絶対に食べ放題など行かない。
百歩譲ろう。孫が本当にその店を好きだったとして、孫は無料のおもちゃを大量にもらって喜んでいるのに、なぜあなたは怒り続けるのか。もしかして、返金期待してます?
ここで小生の「悪食」が颯爽と登場する。本心が見えすぎてくると楽しくなってしまう。「いやいやお爺様・・・」ここからは簡単である、相手が怒れば怒るほど、平身低頭に謝罪する小生の姿に周囲の反応はお爺様に対して冷ややかになる。まあ、大抵の方は10分も続ければ勝手に矛を収めていただける。大変ありがたいお客様だ。こういったお客様は、だいたいまた来てくれる。
小生は長期戦に滅法強い。6時間程度であれば、温泉気分で相手をできる。かわいそうなのはお爺様。怒ることが小生を楽しませることになっているとは、よもや夢にも思うまい。

小生は客単価で2,000~2500、3,000~5,000、8,000~20,000という大きく3つの業態で飲食業に従事した。2,000円の業態が最もクレームも多かったのは言うまでもないが、学びが最も多かったのはやはり8,000オーバーの業態であろう。緊張感が全く異なる。不思議なことに、ここの価格帯はクレームというものがほぼ存在しない。もちろんこちらのミスは発生する。しかし、一度テーブルやお部屋に謝罪に行くと、多くのお客様が優しい笑顔でこうおっしゃる。「いいよいいよ、次から気を付けてね、謝りに来てくれてありがとう」。
当初はカネモチは気持ちに余裕があるから優しいと思っていたが、実は「次」はない。そのお客様は二度とこないのだ。彼らは謝罪を聞く時間さえも無駄だと感じている。だから相手にしない。別の店に行けばいいだけだから。


カネモチ喧嘩せず


選択肢という格差、選択肢という腕力

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