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ゴリゴリ超訳「mixing with headphones」 Andrew scheps & Fab Dupont

今回は、以前から疑問に思っていたヘッドホンでのミックスに関して。
動画はこちら。

AndrewはMacBookにdragonflyのDACを挿して、ヘッドホンだけでミックスしてるらしい!という噂はずっと前から海外フォーラムにあった。
このAndrewのエピソードは一例だが、世界のトップレベルのエンジニアでもヘッドホンは使う→「プロはヘッドホンだけでもミックスできる」という極論が日本では散見されているように思う。

僕個人は全くそうとは思わないものの、ヘッドホンミックス派の張本人が作法を語っている動画が見つかったので、ゴリっと訳していく。
先に結論を言ってしまうと、ただただAndrewのクレイジーなモニタリング論が明らかになる動画なので、誰しもの役に立つものではないし、ヘッドホンならではのテクニックとかはない笑

例の如く筆者の英語力は大したものではないし、わかりづらい部分をすっ飛ばした概要の意訳なので、その点注意して読んでいただきたい。
そもそもが長尺の動画の抜き出しっぽくて箇条書きに近くなってます。
乱文も失礼しまくりング。

※内容の間違いや解釈の間違いがあればコメント等お願いします

では、本編いってみよう。

なぜヘッドホンでミックスをするのか?

Andrew : ヘッドホンでミックスし始めたのはin the box(PC内部完結)でミックスするようになったのと、各地転々としながらミックスするようになったっていう2つが理由かな。
ホテルで生活するのにパワーアンプやスピーカーを持ち運ぶのは馬鹿げてるから、ヘッドホンだけ持ち歩いて作業してる。

自分にできる範囲から作業を始めたけど、どんな環境においてもミックスで変えるべき点、作業すべき点は同じだね。
ヘッドホンだからって特段ローエンドを整理しなきゃ!とかボーカルのレベルに気をつけなきゃ!ってことはなかった。

使ってるのはSONYのMDR7506で、Amazonで安く買えるよ。
ヘタってきたら2,3年で買い換えてるけど、音の差はないね。
20年くらい使ってるけど、買い換えた時の音の違いに気づいたことはないなぁ。
今自分のスタジオで使ってるスピーカーはとってもフラットなものだけど、このヘッドホンは中音域の張り出しがないから、比べるととてもブライトに聞こえる。
それでも耳が慣れたのか脳が慣れたのか、このヘッドホンであれば作業はできるようになったね。逆に他のヘッドホンだと何をしたら良いのか感じられなくて仕事にならない。

スピーカーでモニタリングをする限り、聞こえは部屋の音響環境 [acoustic environment]に左右されることになる。(=  同じスピーカーでも部屋によって聞こえは毎回変わるから、音場の再現が不可能)
でも、ヘッドホンを使えばある程度静かな空間であれば、100%どこでもいつもの音場の再現が可能。ヘッドホンならどの部屋に居ようが関係ないってこと。
まぁ飛行機の中とか外来ノイズがひどい場所は音がマスキングされてしまうから、仕事をするには難しいけど。

ヘッドホンモニタリングする時は、ヘッドホン補正ソフトもルームシミュレートソフトも使わないよ。
ヘッドホンをスピーカーのように使っていたいわけじゃないからね。

ヘッドホンアンプのクロスフィード機能を使って、ヘッドホンのハードパンニングに対する違和感を解消する人もいるけど、僕はマスターバスのステレオワイドニングで同じようなことしてるから問題ないかな。

※クロスフィード
スピーカーで再生した場合に、発生した音が左右の耳に到達する前に空気中で混ざり合う現象。この為一般的にはヘッドホンで聞くよりステレオフィールドが狭くなりがち


多くの人はヘッドホンで曲を聞くから、ヘッドホンの環境下で不快感がないかを確認している。
イヤホンやairpodsでリスニングする人も、同じステレオ環境だから、ヘッドホンでミックスしていて不快感があれば、それらのリスニング環境の人にも不快感があるってことだよ。

例えばアルバムの作業があるとして、その日の一部はスピーカーで聞くけど、残りはヘッドホンで作業しちゃうかな。
以前の家は部屋をシェアしていたから、スピーカーのある部屋まで歩いて聞きに行かなくちゃいけなかった。だからこの頃からヘッドホンメインに作業をするようになったかな。

ヘッドホンミックスからスピーカーに切り替えると、ミックス全体がウェット、リバーブが深く、アンビエンスも付きすぎに聞こえるけど、ヘッドホンだからローエンドが見えないとか、早くスピーカーでチェックしたい!とは思わない。要はモニター機器に合わせてミックスの視点を変える必要があるってことだね。

スピーカーが使えなくてヘッドホンだけでミックスしたのはここ5年間だと20曲もないんじゃないかな。
最終の微調整のプロセスに入ったら、ほとんどスピーカーで聞くことはないかな。

ヘッドホンでミックスすべき?


Fab : いろんな議論はあるけど、全ての人をリスナーとしてターゲットするなら最初っからヘッドホン(コンシューマーの再生機器)でミックスした方が合理的じゃない?

Andrew : それに関しては説明させてもらいたいんだけど、別にヘッドホンリスナー向けにミックスをチューニングしてるんじゃなくて、ヘッドホンを使って常に最高のミックスを作っているイメージなんだよ。
だからヘッドホンで最高の音を作れた時は、もちろんスピーカーで聞いても最高だよ。

どうやってスピーカーモニタリングとの互換性を実現するのか?

Fab :  ヘッドホンでミックスした時と、スピーカーでミックスした時の互換性について話したい。自分が出先でミックスする時は、Focalのspirit Proと小さいBOSEのスピーカーを使ってる。
なんでかっていうとボーカルのミックスに関して違いがあるから

Andrew :  ヘッドホンとスピーカーではボーカルのレベルに対する認識が明らかに違うよね。スピーカーで聞くとボーカルが大きく聞こえがちで、リバーブが深かったり逆にドライ過ぎに聞こえる。
でもそれを考えるのは本当に最終段階かな。

例えば12曲ミックスするとして、1曲混ぜてはデータを送るということはしない。12曲全て並行に作業して、各曲をちょっとずつ聞いて最終調整をしていくんだ。
ほとんど何にもしてないけど、歌とオケが完璧にレベルマッチしてるように聞こえることもあるし、めっちゃプロセス重ねてボーカル作り込んでも、次の日にはクソのように聞こえることもあるし。

でも、現状の自分のミックスバスは、インストとボーカルが同じパラレルコンプレッションにハードに入るようになっているから、大幅にボーカルのレベルを間違えるってことは無くなったかな。
もしボーカルの音量が特段デカかったら、コンプレッサーの押し出しによって、ボーカルとインストが分離して聞こえるからね。
ボーカルを下げて行って適正レベルになれば、勝手にスムースなエンベロープが描けるようにパラレルコンプレッションを組んでいるんだよ。

Fab : 僕の新しいシステムでは、Acsent lines(???)のモニターを使ってて、ルームアコースティックも良い感じだよ。で、デスクトップのApolloにヘッドホンを挿して、楽曲のボトムを確認しているよ。
ボトムに関してはヘッドホンの方が判断が正確だと思っていて、どの段階であれミックスの時はいつもその方法で確認するんだ。

曲の核となる部分がまとまって、音楽として意味を成すようになってきたら、3,40分はヘッドホンで作業する。
そうするとリバーブが効きすぎであることを除けば、スピーカーでもいい感じ聞こえるように調整できる。僕の場合はスピーカーがメインの機器であって、ヘッドホンはオプションのようなものかな。
あとはBOSEの小さなスピーカーでボーカルの音量を調整してあげれば、ほとんどの場合クライアントの満足いく作品が出来上がるよ。

Andrew : リバーブに関しては自分も同じことを思っていて、スピーカーで聞くとリバーブが濃く聞こえがちだよね。
でもそれって、ルームアコースティック込みで音を聞くのが初めてだからじゃないかな。部屋はそれ自体がリバーブ成分を持っているから、それを聞いちゃうんだと思う。
実際コントロールすべきはリバーブじゃなくて、ドラムのパラレルコンプレッションやディストーションによって伸びたディケイの場合があるよ。

良いミックスであれば、ラップトップのスピーカーでもとても良いモニタースピーカーでも同じように聞こえるはずなんだよ。
もしそうでなければ、あなたはバランスを取っているのではなく、特定のソースに注視しすぎて作業しているはず。
ボーカルの響き、ギターやスネアの鳴りに注視して音作りをしていくと、一歩引いて全体を確認する頃には、プールくらいリバーブだらけになっていることもあるね。

ヘッドホンでミックスをする際に、作品を台無しにしないために学生にアドバイスしていることがある。
それは、「スピーカーで聞いた時に修正点を発見したら、スピーカーで聞きながら修正するのではなく、ヘッドホン環境に戻って修正する」ということ。
そうすることで自分自身にトレーニングをさせる。
ヘッドホンとスピーカーを併用せずとも、ヘッドホン環境だけでミスに気づけるように脳を鍛えるんだよ。

12個の環境で聞いて、そのうち9つでOKが出れば良いのではなく、
いついかなる環境下で聞いても完璧なレベルを取れていなければミックスとしてはダメだね。
「この環境ではよく聞こえないけど、いっか。」なんてことは有り得ない。

なんでヘッドホンって不当に評価が低いの?

Fab : 何年も前から我々はスピーカーでレコードを作ってきたけど、なんで誰もヘッドホンで作業してこなかったんでしょう。
なんでヘッドホン作業はこんなに評価が低いんだと思う?

Andrew :  人々が長らくスピーカーで作業していたのは、単純にスタジオで人が集まって作業していたからでしょう。

※こっから先まともに訳せてないです。
恐らく、言葉は悪いけど、コントロールルームってクソな環境多くて、いまだ9割がコンソール上のお馴染みのポジションにモニタースピーカーが乗っててる。それって部屋の音響環境の影響をモロに受けるからミックスに対する視点の一つにはなり得るけどどうたらこうたら・・・。
カセットデッキのDACでモニターした話と、コントロールルームとベッドルームの例え、プロのセッティングとして2,3個ペアのスピーカーが必要な件の文章のつながりがよくわからん。

英語に強い方補足お願いします!!

※ここまで

Andrew : 僕はリファレンストラックを使わないし、スピーカーも1セットしか持っていないから、周りに頭がおかしいと思われているんだけど、それは自分の脳の働きでミックスを可能にしているのであって、スピーカーの働きではない。(=あくまで自分は完成形を脳内で補完できる特殊なケースである)

だから必要なのであればスピーカーヘッドホンを何個も使っても良いし、どういう手段を取ってミックスを進めるか自体は重要ではない。
大切なのはどの環境においても同じように感じるミックスを作ることだけ。

まとめ

まさかの最後の方がまだ全然訳せてないっていう。

とにかくわかったことしては、Andrewは異能持ちってこと笑
「誰しもヘッドホンだけでミックスできるよ!」って話では決してなく、
長年使い続けた特定のヘッドホンで作業する場合において、スピーカーや他のリスニング環境との互換性を保ったミックスが作れるようになったよっていう話。
だから一人歩きしてる「プロはヘッドホンだけでもミックスできる!」って話は Andrewにおいては正しくはない。経験と訓練が可能にした超特殊ケース。

それがAndrewにとっては最速最良の方法であるだけであって、Andrewの定義するところの完璧なミックス=いついかなる環境でも同じ感情を抱けるミックスの為には、どんな方法を取ったって構わないんだよっていう考え方が素敵。自分ができるんだからお前もやれよって強制しない優しさ。

実際やってみるとわかるんだけど、シミュレーションソフトや補正ソフトなしにヘッドホンだけでスピーカー互換のあるミックスを作るって相当難しいし、「このコントロールルームは部屋鳴りが硬いから、逆算してドラムの録り音はこうしよう!」とか現場で音場の脳内補正なんて絶対無理。
頭が追いつかない。
MDR7506だけでミックスしてくださいって言われたら怖すぎて断る。

それをトライアンドエラーで克服して、世界レベルの音源作りまくってるAndrewマジやばい。


ちょっと自分の英語力不甲斐ないんだけど、音楽と英語の勉強兼ねてこれからも気になるテーマは超訳していきたい所存。

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レコーディングエンジニアやってます。
Andrew Schepsには劣るものの天才です。
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ひとつよしなに。
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