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【週刊プラグインレビュー】Yum Audio / Slap

今月はYum Audioから発売されたマルチエフェクトSlapをレビューしていきます。

概要はこちらをご覧ください。

https://www.yum-audio.com/Slap-by-MrBill


プラグインを共同開発したMr.Bill氏によるレビュー動画はこちら。

Yum Audioはドイツのプラグインメーカーです。
ソフトウェアによってユーザーの想像力を後押しするために、分かりやすい革新的なデザインをすることをモットーに掲げています。

Slapは主にドラム向けのマルチエフェクターです。
ピッチシフトやエフェクト、トーンコントロールなどを搭載しており、
 複数の楽曲や素材で繰り返される複雑かつ冗長な処理を1つのシンプルなプラグインで実現しています。

実際の作業で使ってみたところ非常によく"わかっている"GUIとサウンドで、これまで複数のプラグインを用いて作り上げていたサウンドを簡単に実現できるようになりました。
Yum Audioの他製品にも見られるように設計やマニュアルが親切丁寧なのでありがちな「ドラム専用ツール」みたいな派手すぎるサウンドにもならず、微調整もしやすく、実用的なツールに仕上がっています。

後々紹介していきますが、EDMプロデューサーのMr.Billとの共同開発なこともあり、現場のあるあるも組み込まれたプラグインデザインになっているので、使っていて嬉しくなること間違いなしです。

こちらも後述しますが、シンセ向けのプリセットも充実しているので、ドラムサウンドのシェイプ以外にもばっちり使えます。


概要

Slapは全体的なチューニングを決定するFrequency Shifter
トランジェントを置き換えられるClick Replacer
パンチやキャラクターを付加するFX Modules
サウンドマスタリングセクションにあたるTone Section
プラグインの結果を視認できるVisualizer
で構成されます。

Frequency Shifter

Frequency Shifterはプラグインのマスターセクションに搭載されています。
[Tune]をひねるだけで、素材のピッチを上げ下げすることができます。
マニュアルでは曲のキーや素材に合わせたキックスネアのチューニングを行うことが推奨されています。
また、曲中でこのツマミにオートメーションを描くことでサウンドをライブにしていく方法も紹介されています。

このサウンドがかなりナチュラルで好みです。
近似のプラグインとしてWaves Torqueがありますが、そういった専用のプラグインよりもナチュラルに感じます。


Click Replacer

Click ReplacerはSlapの中核機能のひとつであり、あらゆるドラムサウンドを改善するための優れたツールです。
まず、リプレイサーは入力信号を分析し、トランジェントの位置とラウドネスを認識します。そして、このトランジェントをプラグインに含まれる他のクリック、または自分でインポートしたクリックに置き換えることができます。

クリックサウンドはリプレイス(トランジェントの置き換え)かレイヤーが選択できます。
サンプルのスタートエンドポイントが選択でき、ピッチ・トーン・ゲインをそれぞれコントロールできるので、自由度の高いサウンドメイクが可能です。


そもそも100以上のクリックサウンドが収録されており、ハードアタックなサウンドからクラップライクなノイズを元にしたサウンドまであるので、全く不満はないのですが、一応自身のサンプルをカスタムクリックとして追加できます。
3秒以内のWAVファイルをドラッグドロップするだけでカスタムクリックとしてライブラリに追加できます。

DAWの設定にもよりますが、そのWAVファイルは自動でセッションフォルダにもコピー保存されるため、HDDを差し替えたり、昔のセッションファイルを開いた時にありがちな「サンプルのサウンドが見つからない」という状況を避けることができます。めちゃよくわかってる。素晴らしい。

FX Modules

Slapの心臓部である6種類のFX Modulesは、ドラムサウンドを思い通りに操作するために必要なすべてのツールを提供するよう設計されています。

ドラッグ&ドロップの簡単な操作で、各モジュールをルーティングチェーンに自由に配置することができます。
すべてのモジュールには、エフェクトの全体的な強さを定義することができるメイン・コントロールがあります。また、各モジュールのサウンドをさらにシェイプアップするためのサブコントロールも用意されています。CPUリソースを節約したり、ドライとウェットのサウンドを比較するために、モジュールの処理をオフまたはオンにするために使用できるパワーボタンも含まれています。

Clap

Clapは、ノイズのクラップを原音に合わせて生成します。
[Length]は、クラップエンベロープをデザインすることができます。非常に短くスナッピーなディケイから、長く豊かなノイズテールまで、様々な表現が可能です。
[Timbre]は、クラップのトーンを調整します。0%ではダークでウォームなサウンド、100%ではブライトでエアリーなサウンドになります。

Shape

Shapeは、あらゆるドラムサウンドに瞬時にスナップを加えたり、全体のサウンドをタイトにすることが可能です。どんなドラム素材にも対応する、ダイナミックなシェイピングツールです。
[Snap]は、入力されるドラム信号にアタックを追加します。クラシックなトランジェントシェイパーに似ており、パンチを加え、ミックスの中で音を際立たせることができます。
[Tight]は、入力されるドラム信号からサスティーンを取り除き、短くパンチのある音にします。

Sub

サイン波を生成してサウンドに低域のインパクトを加えます。
[Timbre]でサイン波の歪み具合を増加させて、小口径スピーカーとの互換性を図ります。
[Length]でサイン波のディケイを調整し、[Tune]でピッチをコントロールします。

Fat

マルチバンドコンプレッションとEQを組み合わせることで、スネアやキックの存在感とボディ感を向上させることができます。

[Boost Point]で、ブーストさせる周波数ポイントを調整します。
[Envelope]は、マルチバンドコンプレッションが原音のダイナミクスにどのように追従するかをコントロールします。0%ではパンチの効いたサウンドになりますが、入力信号に対してダイナミックに反応し、静かな部分はより静かになります。
100%にしていくと原音のダイナミクスを無視して静かなセクションのサステインも持ち上がるようになります。

Clip

Clipは、ドラムのピークをダイナミックにクリップし、ヘッドルームを増やさずに大きな音にすることができます。しかし、これは純粋なダイナミックツールではなく、追加の音色シェーピングコントロールでパンチとサチュレーションを加えることができます。

[Punish]は、全体のクリップ量を増加させ、多くの倍音を発生させます。
[Timbre]は、クリッピングのトーンを設定します。低い値ではよりダークでこもった音になり、高い値ではクリッピングによって明るい音を作り出します。

Spray

Sprayは、ドラムサウンドに豊かなリバーブサステインを追加することができます。

[Shimmer]は、リバーブの一部となるハイエンド信号の全体量を定義します。高い値では、明るく、風通しの良い、揺らめくようなテールを作り出します。低い値では、リバーブは全体的にダークでマフリングされたようになります。
[Size]は、スプレーリバーブアルゴリズムの全体的な長さと部屋の大きさを定義します。
[Width]は、リバーブのステレオイメージを変更することができます。0%では、スプレーアルゴリズムは完全にモノラルで中央に配置され、100%では広く、ステレオフィールドに大きく押し出されます。

Tone Section

Tone Sectionでは、すべてのFX処理の後に、ドラムサウンドに最終的なタッチを加えることができます。

[Squash]は、サウンドに最終的なコンプレッションを加えます。
[Low Cut]は、信号にレゾナントローカットフィルターを追加します。不要な低周波を除去しつつ、ドラム信号のボトムハーモニクスを追加するために使用します。
[Tame]は、シェルビングEQとローパスフィルターで、耳障りな周波数を減衰させ、ドラムサウンド全体を滑らかにすることができます。

Low CutのレゾナントローカットフィルターはいわゆるPultecテクニックのようなものだと思ってください。
カットする帯域周辺にレゾナンスを作ることによって、不要なローエンドは排除しつつ、ロー感を強調することができます。

Visualizer

Slapは、ドラム信号に何が起こっているかを確認できる強力なビジュアライザーを搭載しており、3つの描画モードが付属しています。

[Free]は、連続的に動く波形を描画します。
[One Shot]は、新しいトランジェント・ヒットごとに波形を描画します。
[Static]は、1小節ごとや1拍ごとなど、指定したnoteで描画がリセットされます。

クリックリプレイサーモジュールから置き換えられたクリックは、サウンド本体よりも明るい色で描かれます。

視覚に頼り過ぎるのは良くないですが、いちいちコミット・バウンスしなくてもエフェクトの結果が視認できるのは便利です。
特にレイヤーやクリッピングの結果がその場で確認できるのは面白いし勉強になります。

実戦での戦い方

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