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どうやら私は、失恋したらしかった。

気になっていた彼に、彼女ができていたらしい。
梅酒を飲みながら、どうリアクションを取るか迷った。

彼は、ゼミの後輩だった。
やたらに明るく、あまり関わったことのないタイプだったけれど、
互いに人懐っこい質なので、すぐに仲良くなれた。

出会った当初は、彼は私のことが好きだったと思う。
プライベートの質問が多かったり、
私がばったり会った同期の男の子と喋っていると、誰ですかと気にしてきたり。
出会いがないという話をしてきたり。

彼の気持ちは嬉しかった。
嬉しいと思えている自分の変化も嬉しかった。
ずっと男性が苦手だったから。

ただ、気掛かりな点もあった。
私はどうやら、ポジティブな人だと思われているらしい。
周囲の人に楽しんでほしいのでニコニコしてはいるけれど、
私は決して明るい人間ではない。

夏頃、就活のストレスでメンタルがやられた。
毎日暗い表情をして、会話も弾まない私に、
案の定彼の気持ちが離れているのを感じた。
メンヘラオーラが強まっている自覚もあった。

彼にどう思われているか気になるあまり、LINEでご飯に誘ってしまった。
一晩悩んだ挙句、彼は同期を一人連れて行くことにした。
同期の子に申し訳がなかったので、この件は諦めた。
「やめとこう」と言った途端に返信が早くなる。
彼の分かりやすいところが愛おしくもあり、恨めしくもあった。

一緒にゼミの仕事をしなければならない立場なのに、
関係をぶっ壊してしまった…
彼の同期達にこの件は、どれくらい広まるんだろう。
ぐるぐると悪い考えが渦巻き、離れなかった。

夏休みが明けて、再会してみると
徐々に関係は修復できてしまった。
彼も気まずいだろうから過度に話しかけず、でも笑顔は絶やさず。
徐々に空気をほぐせているのを感じた。

「お互い会話がテキトーなんで、相性はいいと思いますよ」
「僕はこれからも先輩のこといじるんで」
なんかよく分からないけど、励まされているらしかった。本人に。

その後、私も努力した。
まめにコミュニケーションを取ったり、楽しい会話を心がけたり。
普段は会話の「楽しさ」よりも「誰も絶対に傷つけたくない」を優先するけれど
ちょっと強めに当たる方が彼は喜ぶ。
多少嫌ないじり方をされても、面白く乗ってあげた。
何をされると彼が喜ぶのか、リアクションを逐一観察して。
彼を楽しませることが少し上手くなった。

そうしているうちに、とても良い友達になれた。
会う度に話が弾む。LINEもそれなりに続く。
私の好きなラジオを、聞いてみると言ってくれた。
そろそろタメ語で喋るとも。
本当に仲の良い友達に感じる、沈黙の中の居心地の良さ。
彼が恋愛対象として私に見せる熱量に関わらず、
彼を大事にすることに集中できるようになった。

12月に合コンの誘いを断った話もしていたし。
論文の忙しさが落ち着いたら、彼の方から誘ってくれるんじゃないかなぁ。
誰にも約束されていないのに、
彼の態度から、彼の友達の表情から、そんな期待をしてしまっていた。


そんなの私の勘違いだったから、
飲み会で彼女の話を耳にするに至ったのだが。

寝耳に水だった。
今まで、彼の同期が恋人の話をしていた際も、彼は自分の話を避けていた。
私に向けた、彼なりの優しさだったのだろう。

この頃私と積極的に仲良くしてくれているのも、何も考えていないのだろう。
彼自身が細かいことを気に病まない性格だから。


話の流れで、今回の失恋に、思いがけずフィードバックも得られた。
彼は痩せすぎた人は好みではなく、鍛えている女性が好きらしい。
そういや、筋トレをやたらと勧めてくるな。
今の彼女とはアプリで出会って、話が面白かったから付き合ったらしい。
「アプリに登録」に押し負けている時点で、この恋は惨敗である。

「つれづれさんも、アプリやってみたらどうっすか?」
邪気のない顔で、彼は言った。


なんだ。ただの、勘違いから始まった失恋じゃないか。


彼の同期と帰る方向が同じだった。
酔っているのか、
「つれづれさんはもっと自分の意見を言った方がいい」という話をしてくれた。
「課題の添削とかして欲しくても、褒めてくれるだけなのが分かっているから
 頼めないってあいつも言ってました」
「発言に意外性がないので、話しててもつまらなくなってしまいます」
う〜ん。そうなのかなぁ。
ただ何にでも納得・感心してしまうだけなんだけど。
ともかく、後輩たちの感覚ではそうらしい、というのが掴めた。


もうこの恋を諦めるので、総括。
好きじゃないなら、一度遠ざけた異性と仲良くしないで欲しかった。
一年近くも無駄にしたじゃないか。
あと、彼へ。裏で私のモノマネをすんの、止めてくれ。笑
飲みの場では笑いに変えてあげられたけど、正直いい気持ちはしなかった。
やっぱり、楽しさと正しさとで、会話の価値観は違っていたんだなあ。

でも、あなたの努力家なところや、周りの人を元気にするところが
大好きだったよ。
私の愛情を受けてくれてありがとう。
遠くから見ているだけじゃなくて、好きな人を直接大事にできた経験、初めてだったかも。
次誰かを好きになる時も、愛を注げる気がする。


…とりあえず、恋は半年くらいお休みして。
自分磨きを頑張るか〜。
肌を綺麗にしたいなーっと。

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