【読書感想文】ここはすべての夜明けまえ
わたしの大好きな星野源さんがおすすめしていたので早速購読。
後半になるにつれ食い入るように読み進め1時間半程度で読了。
※以下ネタバレあり※
生きてる意味がわからなかった、死にたかった彼女が老いない身体を得て、終盤で語る一言が印象的だった。
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この本の冒頭はほぼひらがな表記の家族史を幼い頃からの彼女視点で、文脈がまばらになりながらつらつらと語られる。幼少期の思い出のはずが感情的な言葉がなく主観的な視点、直接的な表現でつらつらと書かれている。
中盤自分との関わりがあった人が死に絶えた世界で旅をしてきた彼女の語る文章には漢字が増え、感情を表す言葉が多くなる。
終盤、ひらがな表記に戻るが、死にたかった彼女、ゆうごうしゅじゅつを受け、脳も機械的になったと思われていた彼女から過去の経験を経て辿り着いた人間味のある熱い言葉が飛び出してくる。
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この物語の中では度々機械と人間の対比が出てくる。
将棋、介護、生と死、ボーカロイド、仮想空間、主人公と新しい人類
技術の進歩によって便利になったり合理的な判断が瞬時にできるようになる
でも本当にそれが本当に正しいのだろうか?
その正しさって誰のもの?
正しさは何通りもあって普遍的なものなんて存在しない
そして、彼女のことを大好きだったシンちゃんの喜ぶ方法を瞬時に下した誤った判断。結果的に搾取されてきた自分が搾取してしまったと気付かされ大きな後悔として忘れることなくこの先も生きていく彼女は決して機械的ではなく人間らしい。
人間になり損なったと語り人間でなくなったことに喜びを感じていた彼女が人間に再び戻る、生まれ変わったと言うべきか。
そして彼女は言った。
融合手術を受けたこと、シンちゃんと恋人になったこと、さや姉ちゃんに真実を伝えてしまったこと、お父さんのような振る舞いをしてしまっていたこと、ひまりさんの未来を奪ってしまったかもしれないこと
そんな彼女が最後に下した
記憶を消さないで生きていくこと
は絶対にまちがいじゃなかったと伝えてあげたい。
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