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「ネットはゴミ情報の山なのか?」という話

第Ⅰ章:ネットはゴミ情報が多い?

 ネットには面白い法則がいくつかある。「ヒトラーに帰す法則」、「ポマーの法則」などだ。「ヒトラーに帰す法則」とは、インターネット上で議論が長引けば長引くほど、ヒトラーやナチスを引き合いに出すことが多くなる法則だ。要は「ヒトラーもそれを言っていた!」「お前の考えはナチスと同じだ!」と言って、相手の意見を論駁しようとする詭弁が議論が長引くと増えるという法則である。「ポマーの法則」とは、インターネットが人の意見を変えるのは、何も意見を持たない人に間違った意見を持たせる時だけだという法則である。

 そんな様々な法則があると考えられるネット空間だが、もう一つ興味深い法則がある。「スタージョンの法則」だ。では、スタージョンの法則とは何か。それを理解するためには、まずはその法則を提唱したSF作家のシオドア・スタージョンについて理解しておく必要があるだろう。スタージョンは次のような背景を基にスタージョンの法則を提唱した。

 一九五〇年代初め、教養を鼻にかけた批評家が、大衆文学、とくにアメリカのSFの質を嘲笑した。SFやファンタジーは文学のスラム街だとして、ほとんど全部くだらないと馬鹿にした。スタージョンは腹を立て、批評家たちがハードルを高く設定しすぎていると反論した。ほとんどの分野のほとんどのものは、当時高尚と見られていた文学も含めて質が劣っていると。「あらゆるものの九〇パーセントはクズだ」とスタージョンは言った。
(トム・ニコルズ 『専門知は、もういらないのか』)

 「あらゆるものの九〇パーセントはクズだ」と考えられるのがスタージョンの法則だ。アメリカ海軍大学教校授のトム・ニコルズは、これはネットにも当然当てはまると指摘している。つまり、ネット上の九〇パーセントはクズ(ゴミ)情報だというわけだ

 「九〇パーセント」という数値が正確かどうかは定かではないが、たしかに、ネット上にはゴミとしか思えないような情報は多い。何処の誰か知らない奴の自惚れた自分語り、何の根拠もない独断、何の知識も与えてくれないくだらない主張などだ(以下、本稿では、ここで例に挙げたものを「ゴミ情報」として批判的に検討する)。どれもこれもゴミなのではないかと思えてくるほどにくだらない情報ばかりだ。

 ニコルズは、ネット上では「役立たずだったりくだらなかったりする情報の猛吹雪のなかをさまよわなければならない」と指摘している。では、私たちは、そんな「役立たずだったりくだらなかったりする情報の猛吹雪のなかを」どのように突き進んで行けばよいのだろうか。次章ではゴミ情報を避ける方法について考えていこう。

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