見出し画像

JANOG45 Meeting in Sapporo に参加してきた(中編)

5Gの夢と現実

かなり大きい会場だったが、超満員。特に注目が高いセッションだったのだと思う。私も楽しみにしていたセッションの一つだった。

・ハイプ・サイクル(ガートナー)2019年版での5Gの位置
Gartner Emerging Technologies Hype Cycle 2019では、5Gが2019年版の「過度な期待のピーク(Peak of Inflated Expectations)」に、新たに位置付けされた。2020~2022年には「幻滅期(Trough of Disillusionment)」に入るのでは、とも言われている。

・5Gのカバレッジ
ラスベガスでの事例。
Verizonは「通り/ストリート」を線でカバーしているように見える。28GHz(mmWave/ミリ派)を使用。


T-Mobileは「エリア全体」を面でカバーしているように見える。600MHz(ローバンド)を使用。

同じ5Gでも周波数帯によってCoverage(通信の範囲)やLatency(通信の遅延)が変わり、異なるサービスとなる。

・見えてきたミリ波の難しさ
「ミリ波」は30GHz~300GHzの周波数帯の電波を指す。特徴は高速なデータ伝送を可能にする。ミリ波は波長が短く、電波の直進性が高い。ミリ波による通信は湿度が上昇したり、電波の進む先に壁のような遮蔽(しゃへい)物があったり、視界を遮る状況でパフォーマンスが低下する現象が発生する。そのため、エリア内でも5Gの接続がうまくいかないことが多い。
ミリ波の伝播は「光」と同じように考えたほうがよい。樹木や雨などでムラが出る。ビルのような平面な建物からの反射は上手く使えたりする。

・Ultra Experience Layer
市街地では、バリバリ使えるが、郊外になるほど、ボチボチになる。市街地ではトラヒックが集中する課題があり、効率的配送をするためのMECが必要。郊外では、5Gがバリバリ使えるようになるためにインフラの共用化(Neutral Host)ローカル5G(私設5Gインフラ)などのソリューションが必要になってくる。

5Gとネットワークエンジニアとの接点を探る

「実現に向けてエンジニアが対応していくべきこと」のセッションはQAを想定した内容で発表が進んだ。

質問:どんな心構えが必要なんですか?
回答:Society 5.0時代の住みたい街を創造する子供がすくすく成長できる環境格差のない世界。5G革命的な技術が始動。ひと、モノ、コトの時代へ。ギャップのある技術なので、勉強が必要。

質問:5Gって超高速ですごいんですよね?
回答:そんなに甘くない。5Gで期待されるサービスと技術的特徴は、「超多接続」「高信頼」「超低遅延」。
5Gも普通のIPネットワークになっていく。ローカル5Gは、ネットワークエンジニアの出番。アップロード/Dダウンロードの非対称性もネットワークによって変えられる。
モビリティは限定的に。移動体というよりは、固定的な使い方、それを前提とした技術開発となる。

質問:5Gで何ができるようになってきますか?
回答:5Gを紹介する時によく使われる重機を5Gで動かす動画がある。無人の重機をオペレーターが遠隔で動かしている。これは5Gの通信。現場でとっている映像を高速で転送できるので、オペレーターのイメージがずれない。


スポーツ観戦でARを使った水泳の観戦の例がある。水泳競技ではレース中、会場の電光掲示板に選手情報や着順、ラップタイムが表示されるが、これらの情報を見るには、視線をプールから掲示板へと移動する必要がある。「レース観戦に集中しながら、ライブな情報が欲しい」「競技中の選手同士のタイム差やレース中の順位などもリアルタイムで観たい」というファンの期待に応えるプロジェクトとして、水泳大会の実際の会場で、5GとARを組み合わせた実証実験が行われた。ここでの「5Gのメリット」は、通信のタイムラグがとても小さいということ。


質問:5Gって簡単ですか?難しいですか?
回答:当面は個別に構築/運用するには技術的・リソース的な課題があり、コミュニティ単位で協力をするなど、課題解決のシナリオがいる。
まずは免許が必要。最初のハードルがある。基地局、電波干渉調整等が必要。制度はどんどん変化している。毎日状況が変わる。無線技術は無線技術特有の難しさがある。

LT 5min×6本

選りすぐりのLT 6本の発表があった。その中でも個人的に特におもしろいと思ったのは以下の2本。

・Cisco IOSの2020年1月1日問題。その時何が起こったか?

IOS/IOS-XEの自己署名証明書の有効期限に関するBugがあり、2020年1月1日に特定のネットワークにおいて不具合が生じるとされていた。

日本では証明書の期限切れが起きた大規模障害になった事例も知られている。12月にOS/IOS-XEの自己署名証明書の有効期限に関するバグが報告されたが、本件の影響はよくわからない。真面目に管理しないといけない?更新が必要なら、面倒だよな。現場大変だよなあ。という疑問についてアンケートを取った結果のまとめ。

47名の回答結果が得られた。このバグを知った情報源はSNSが多かったそうだ。運用待機をした人もいたし、エスカレーションフローを作った人もいたが、結果的には何の障害も起こることはなかった。ドキドキポイント、ムムムポイント、ニヤニヤポイント、アハハハポイント、など語り口がおもしろく、引き込まれる内容だった。それでいて有用な情報も織り込まれている。

・NETCONを開催して思ったネットワークの教育について

「ネットワーク経験者向けのイベントが欲しい」という声を聞いて始められたそうだ。ネットワークエンジニア向けのイベントや勉強会は少ないと思っていたので、とても興味を持った。スライドにもあったけど、この問題意識はその通りだと思う。

ネットワークエンジニアの教育の現状
• とりあえず資格取得(悪くはないが続かない人が多い)
• 新入社員研修等で勉強(短期だし長期的勉強には不向き)
• 本当に業務で役に立つような教育ができている?
• そもそも優秀なエンジニアはクラウドや多岐に強くネットワークエンジニアを選択しにくい状況

競技プログラミングのネットワーク版のようなものは、あるといいんじゃないかと思っている。ネットワークエンジニアの人数は一定の数はいるので、需要もあるんじゃないだろうか。弊社もネットワークエンジニアの割合が多いので、何か貢献できることがあるといいのだけれど。

皆さんは何か教育を工夫してやっていますか?

上記のNETCONのLTでの最後の問いかけは「皆さんは何か教育を工夫してやっていますか?」だった。弊社では「職務経歴書に記載できる技術研修」として2018年から取り組んでいる(以下はJANOGで発表したわけではない)。

クラウド関連の技術が中心になっていたり、あくまでも社内研修としてつくっているのだけど、NETCONのように様々な会社のエンジニア同士でネットワークが学べる場があったら素敵だな、と思った。

5G関連書籍

後日、もっと5Gについて調べたくなって以下の2冊の本も読んでみた。本はそれぞれよかったけど、私はまだまだ勉強不足。もっと勉強をしてみよう。



この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?