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答えの出ない事態に耐える知的寛容さ(ネガティブ・ケイパビリティ)

ネガティブ・ケイパビリティとは

あらためてシステム思考を学んでいる中で「ネガティブ・ケイパビリティ」という概念を知りました。

システム思考では、あらゆることを「システム」としてそのパターンを捉えていきますが、そのパターンを一度つくって終わりにはならず、現状との違いに気づいたら修正をしていきます。すべてに通用する完璧なものはありません。

複雑で不確実なものに対しては、結論・判断を保留し、一度立ち止まって考えつづける力も時には必要になります。それが「ネガティブ・ケイパビリティ」です。

ネガティブ・ケイパビリティの定義

興味が出てきたので、以下の書籍も読んでみたのですが、「ネガティブ・ケイパビリティ」を以下のように定義していました。

ネガティブ・ケイパビリティとは、

どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力

あるいは、

性急に証明や理由を求めずに、不確実さや不思議さ、懐疑の中にいることができる能力

を意味します。

「ネガティブ・ケイパビリティ」は「棚上げ」とは異なるものです。
表面的な対症療法になっているものを止めることであり、拙速な問題解決に走らない、ということです。

✗ 問題を先延ばしする能力(これは「棚上げ」)
○ 結論・判断を保留する能力
◎ 一度立ち止まって考えつづける力(これが不確実に対する「知的寛容さ」)

ネガティブ・ケイパビリティを組織的に入れた事例

ある企業の事例としては、以下を実践されている会社があるそうです。

経営会議で大きな意思判断をするときに、あえて反対意見を述べるチームをつくっているそうです。そのチームは、「役割として」何かの提案に対して反対意見を考えて、述べることになっています。

この仕組みでいいのは、構造的に組織にネガティブ・ケイパビリティを入れるようにしているところだと思います。それぞれのメンバーに任せると感情的な対立になってしまう、あるいは、対立を避けるために意見を言わないようになってしまいがちです。これを「役割」にすることで、感情的な部分を大きく減らす効果がありそうです。チームの中にネガティブ・ケイパビリティを持つという考えをその部分に特化して実行できるようにした良い事例なのだと思いました。

または、ネガティブ・ケイパビリティを盾にして「ただの嫌がらせとしての反対意見」を言う人が出てくる可能性もあると思います。ネガティブ・ケイパビリティを悪用させないのは、ルールではなく、その組織のリーダーの役割になるのでしょう。

メンタル・モデルがネガティブ・ケイパビリティを阻害する

私たちは、「世の中はこうなっている」というメンタル・モデルを持っています。メンタル・モデルとは、私たちの頭の中にある世の中の模型のようなものです。

たとえば、「よい組織、リーダーは結論を保留しない」というメンタル・モデルがある場合、ネガティブ・ケイパビリティを持つことができません。

もし今の世界を「すべてはわかっていない」「完全な正解がない」と捉えるのであれば、以下のような能力も求められるのかもしれません。

  • 不確実性を許容する知的寛容さと、高度な能力

  • 懐疑の中にいられる能力

  • どうにも答えの出ない状況に耐える能力

  • 「正解がない」ことを認め、不確実で曖昧な状態の中にとどまる能力


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