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レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.90




[99枚目]●ブラウンストーン『スティル・クライミング』<MJJ/ソニー>(97)


※本文を書くに当たり、松下佳男さんのライナーを大いに参考にしています。


90'sのガールズ・グループブームの中で、玄人好みと言われる事が多いブラウンストーン。アルバムが2枚と言うのは寂しい気もする。メンバーの変動と、1stの人気が絶大だった面もあるが、終息を迎えるには早すぎた。<MJJ>は、マイケル・ジャクソンのレーベル。私が所有しているのは<ソニー>経由の日本盤である。


ブラウンストーンは、ロスアンゼルスで93年に結成された。オリジナル・メンバーは、ニコール・“ニッキ”・ギルバート、シャーメイン・“マキシー”・マクスウェル、モニカ・“ミミ”・ドービーの3名で結成された。デビュー・アルバム『フロム・ザ・ボトム・アップ』はこのメンバーだが、ミミが気管支炎の悪化で脱退を余儀なくされた。本盤発表時は、新メンバーとしてキナ・コスパーが加わっている。結成はロスだが各人の出身地は、ニッキとキナがデトロイト、マキシーはガイアナである。因みにミミはニューオーリンズの出身だそうである。

本レビューの下調べ中に初めて知ったが、ブラウンストーンは2022年に25年ぶりに復活していた。メンバーは、ニッキの他にテイシャ・ブラウン、アリン・ジャクソンという新たな布陣である。ニッキは、ソロ活動で高い評価を得た後の消息を知らなかったが、再度ブラウンストーンという看板を掲げたわけだ。尚、マキシーは、2015年自宅で起きた事故により亡くなっている。R.I.P.

各自のソロ活動としては、繰り返しになるが、ニッキが02年自身のレーベルから『グロウン・フォークス・ミュージック』。マキシーが01年UK<マーキュリー>から12inchアルバムを出している。キナは、加入前に<ドリームワークス>からアルバムを1枚リリースしている。

主なプロデューサー陣は、ロドニー・ジャーキンスが①③、デイヴ・“ジャム”・ホールが④、ソウルショック&カーリンが⑤⑨、ロビン・シックが⑧、トリッキー&ショーン名義でトリッキー・スチュアートとショーン・ホールが⑩、ニッキ自身が⑫などである。尚、④はゴードン・チェンバースが書いた曲。サウンド作りは必ずしもプロデューサー任せではなく、メンバー3人も積極的に関与している。尚②⑥がCDシングルでリリースされている。(②はR&B6位、⑥はR&B41位)。また、discogsによれば④がプロモ盤として出ている。


①は、オリエンタル風イントロからバランス良いコーラスでスタート。力強いヴォーカルが躍動する。②は、「ハリー、ハリー、クイック、クイック」という合いの手が印象的なバラード。ソロはマキシー~ニッキーと歌い継いでいる。③は、タメの効いたリズムにヴォーカル、コーラス共流れるように聴かせる。④美メロに優しいヴォーカルが乗る。ここぞという時の力の入り方も美しい。⑤ニッキが飛行機の中で思い付いた曲だそう。これもリズムのタメが功を奏している。⑥はニッキによれば遊んでいて出来た曲との事。確かに肩の力は抜けているが、お決まりのパターンを踏襲していると言えばしている。⑦雰囲気のあるバラード。⑥と⑦はビッグ・ヤムがプロデュース、ソングライティングにも関わっている。


⑧はポップな美メロを持つ曲。コーラスもタッチが柔らかい。⑨マキシーがボーイズⅡメンのショーン・ストックマンと共作した曲。⑩シンコペーションの効いたリズムが心地良いダンサブルな曲だ。⑪は美しいバラード。ニッキとハーブ・ミドルトン作。⑫はアル・ハドソン&パートナーズのメンバー、ケヴィン・マッコードが91年にヴィッキ・ハーヴェイを迎えて作ったアルバム『ホウェン・ザ・ナイト・カムズ』内の曲(曲名は「プレイ・ユア・カーズ・ライト」)をカバーしたもの。ニッキがヴィッキの声がキナに似ているとの事で取り上げた曲。ボーナス・トラックを除けばこの曲がラストであり、それにふさわしい仕上がりだ。⑬はハーブ・ミドルトン絡み。


デビュー盤がR&Bチャート4位なのに比べ、本盤は16位と振るわなかった。内容的に曲のパターンが似通っている感じもする。だが、ヴォーカル、コーラス共に力強さは健在で、一定の聴き応えはある。

①   Let's get it started

 
②   5 Miles To Empty

 
③   Love Me Like You Do

 
④   In The Game Of Love

 
⑤   Foolish Pride

 
⑥   Kiss And Tell

 
⑦   Baby Love

 
⑧   Around You

 
⑨   Revenge

 
⑩   All I Do

 
⑪   You Give Good Love

 
⑫   If You Play Your Cards Right

 
⑬   I'm Not Her


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