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70年代ソウルの良心

【過去の投稿です】


●ファクツ・オブ・ライフ『ザ・コンプリート・ケイヴェット・レコーディングス1975-78』<サウスバウンド>(2009)


タイロン・デイヴィスの妹、ジーン・デイヴィスに、バリトンのキース・ウィリアムズ、テナーのチャック・カーターという男性2人の構成。後ろ盾になっているのはミリー・ジャクソン。

マッスルショールズのソウル・チルドレンと称されている。確かに1曲目2曲目は、ソウル・チルドレンぽいけど、後はそうでもない。彼らにしては、邪魔な呼び名かも知れない。因みに、最初のグループ名はゴスペル・トゥルースで、これもいまいち言い表していない。まあ、余りそういう事に拘らなくても、このアルバムを聴きさえすれば、自ずとファクツ・オブ・ライフならではの魅力に気が付く。

さて、紅一点とはいえ、ジーン中心のグループではない。むしろ男性シンガーの方が印象に残るし、男性主導の曲が多い気がする。特にバリトン系が、ほど良く灼けつくような歌い口でビンビン来る。ジーンが、豊かな声量で押して来るタイプではないので中心にはなりにくいのかも。しかし迫力はともかく、リズムに対する自然な反応、バラードの泣かせ所やシャウトの勘所を的確に決めるさま等、しなやかな歌唱は十分魅力的だ。兄貴に似たアプローチとも言えるかな?

グループ全体としても、アップテンポの曲も、スローバラードも、語りを交えたタイプの物も、「王道」を行く感じで、ソツがない。たとえヒットを連発するようなグループでなくても、真摯にソウルミュージックに取り組んだ結果が音盤に表れている印象だ。そういえば、ソウル・チルドレンも、ソウルミュージックに関して良心的に取り組んだグループだ。そういう意味では共通点があるのかもね。

蛇足を承知で、ミリー・ジャクソンからこのグループを考えてみる。ミリーという人は、基礎的なディープ・ソウルマナーを心身に染み込ませながらも、エンターテインメント精神に溢れた人だ。個人的には「大衆演劇型ソウル」と呼びたい。どこかイナタさが抜け切れず、哀しさとユーモアと猥雑さを同居させている。しかも深みを失わずに。特に、ヒップホップ上のラップではなく、お喋りの延長線のようなラップをよく使う。語りや笑い、男女の言い合い等から自然に歌に流れるのは彼女の真骨頂の一つだ。本盤にも、ミリー本人が参加しているその手の曲がある。ファクツ・オブ・ライフもよくそれに対応している。必ずしもミリー・ジャクソン的ソウルを継承している訳ではないが、「ソウルかくあるべき」という“肝”みたいなものはミリーから得た部分はあるんじゃないだろうか?

音楽に限らず「良心」は伝わりにくい部分があるが、一度心得たら、人を捉えて離さない。

♪"HUNDRED POUNDS OF PAIN"

♪"Sometimes"



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