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DJディランの微笑みと温もり


【過去記事です】冒頭のエピソードも昔の話です。

●V.A.『テーマ・タイム・ラジオ・アワー・ウィズ・ユア・ホスト・ボブ・ディラン』<エイス>(08)

熊本在住のカントリー歌手・チャーリー永谷さんは、日曜朝8時半から30分民放AMラジオで番組を持っておられる。私はその時間帯に床屋に行く事が多い。倒された椅子に身を委ね、蒸しタオルを当てられ目をつむっていると、カントリーソングが心地良く耳に入ってくる。休日の朝に、カントリー系の歌はよく似合う。身も心もゆったりと寛ぐ。媒体がラジオなのも、関係していると思う。

音楽の聴き始めがラジオだった事もあってか、ラジオから流れる音楽というシチュエイションは、種類を問わず耳に馴染む。音質云々より、音楽を通して伝わってくる「温かみ」みたいなものに惹かれていたのだろう。パーソナル性の高いラジオは、掛かる音楽のパーソナリティーをも感じやすくさせているのかな。番組を進行する人をパーソナリティーと呼ぶのも言い得て妙である。

天下のボブ・ディランと上記の戯言を一緒くたにするのは申し訳ないが、ディランもこの気持ち解ってくれそうな気がする。本アルバムを聴きながらそんな事を思った。

『テーマ・タイム・ラジオ・アワー』は、放送回毎にテーマが決められている・・・「父」「母」「食べ物」「銃」「女性の名前」など多彩だ(本盤に選ばれた曲がどのテーマに基づくか付記有り)。ボブ・ディランは06年~09年の間、この番組のDJを努めた。彼が各テーマについてどんな事を喋ったのかも興味があるが、本CDには喋りは一切入っていない。しかし、各曲のタッチに共通する「愉快な感覚」から類推するに、喋りも滑らかだったのではないだろうか。

全てがそうとは言えないが、Disc1は和む曲、Disc2はテンションが高まる曲が多い。ジャンルはカントリー(もっと細分化されるだろうが生憎と門外漢)、ジャズ(小唄からミンガスまで)、ブルース、ジャンプ、ソウル、ロック、ポップス、ジャマイカ、テキサス&メキシコと広範囲だ。先に触れたが、聴いていて愉しいものが多い。私と同じ音楽嗜好の方なら、メンフィス・ミニーやシスター・ロゼッタ・サープのギターワークが象徴的だとか、スリム・ゲイラードも登場と書けば、大体感じは掴めて頂けるかと。

ロックは全体にヨレヨレ系が多い。「トミー・ガン」(大好き!)が収録されているクラッシュのジョー・ストラマーを思い浮かべてほしい。もっとも、クラッシュはサウンドはタイトでヨレてはいないが。他のバンドはサウンドも心地好く揺れている。ディランがロックンロール系のバンドを演るならこんな感じになるんじゃないか。

数は少ないソウルも、サザンよりはノーザン寄りだ。あるいはアーリー・ソウル系。ジェイムス・カーもさほどコッテリではない。全体的に、ディープ過ぎないよう心掛けているかのようだ。情念のブルースマン、オーティス・ラッシュもアッサリ目。

このアルバムとラジオ番組の存在は、ピーター・バラカンさんの著書で知った。その時は、ディランの選曲なら、さぞかし懐旧モードで渋みの極致じゃないかと推測した。加えて「チェイン・オブ・フールズ」や「トミー・ガン」といった好きな曲も有ったので迷わず購入。結果、予想は気持ち好く裏切られた。

シリーズは3作品有る。アナログなペースで集めて行こう。

♪Charlie Rich "Tears a go go"

♪The Donays "Devil In His Heart"

♪The White Stripes "Seven Nation Army"

♪Memphis Minnie "Me And My Chauffeur Blues"


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