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レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.47

【ブログの過去記事】

[56枚目]●V.A.『ブルース・ジュビリー』<ヴォーグ>(87)

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「ブルースの祝祭」と題された本CDは、ダイナ・ワシントン、ジミー・ウィザースプーン、ヘレン・ヒュームズ、ジョー・ターナーのライブ録音を集めたもの。4人が一堂に会したものではない。会場は同じでも、開催年や開催月が違っている。しかし、聴衆を大いに湧かせているところは共通している。聴衆側のレスポンスも鋭く、ライブ盤ならではの臨場感が愉しめる一枚だ。英文ライナーなので正確には読み取れないが、黒人のオーディエンスが多く、やりやすい環境だったようだ。

一番手は、ダイナ・ワシントン。L.A.のシュライン・オーディトリアム、50年7月のステージだ(当時26歳)。潤いに満ちた歌声は、ヴォリュームが上がっても当たりが柔らかく、艶っぽい。ダイナのクオリティーの高さがここでも味わえる。

収録曲は①「クール・カインド・パパ」②「イット・イズント・フェア」③「ベイビー、ゲット・ロスト」④「アイ・ウォナ・ビー・ラヴド」⑤「ファスト・ムーヴィン・ママ」。

これらをYouTubeで改めて聴くと、一様にゴージャスな雰囲気が先に立つ。それでも良いのだが、小じんまりとしたバンド編成の本ライブでは、ダイナの歌唱が全体を引っ張っていて彼女をとても身近に感じる。各曲歌い出しで強烈な歓声が上がり、曲の途中でもドッと沸き大いに盛り上がっている。⑤では自分の名前を歌詞に入れたりして、ダイナも気分上々だ。

It Isn't Fair


I Wanna Be Loved


Fast Movin' Mama


ジミー・ウィザースプーンのステージも圧巻だ。会場はパサデナのシヴィック・オーディトリアム(49年)とL.A.とだけ記載された50年(当時27歳)のステージ。コクのある歌声は、発するだけでブルースの薫りが広がる。サックスを始め演奏陣も素晴らしい。曲目は⑥「エイント・ノーバディ・ビジネス」⑦「ノー・ローリン・ブルース」⑧「ビッグ・ファイン・ガール」⑨「フォーリング・バイ・ディグリーズ」⑩「ニュー・オーリンズ・ウーマン」⑪「アイ・ガッタ・ギャル」。⑨~⑪はCD化に際し加えられた曲である。

ジミー編も観客の乗りは凄く、バンドメンバーの合いの手なのか、客のそれなのかよくわからないものもあって面白い。ジミー・ラッシング→(本盤にも登場する)ジョー・ターナー→ジミー・ウィザースプーンというのは一つの系譜だが、例えばボビー・ブランドのような歌手に比べると、一般的ブルース・ファンには敬遠されがちだ。私はジャンプ・ブルースを聴いてきたからそうでもないのだが、彼らの朗々として、スイング感のある歌い口に含まれるブルース濃度は相当なものである。未体験の方には是非ともお勧めする。

Ain't Nobody's Business


No Rollin' Blues


Big Fine Girl


New Orleans Woman


キュートな歌声が魅力的で、昔から好きだったヘレン・ヒュームズ。余裕のある歌い方が可愛らしさを増す人だが、ここではライブのせいもあってか、彼女にしては結構ガツガツと歌っている。ダイナ・ワシントンと同じ会場で、ダイナの一か月後50年8月のステージだ(当時37歳)。⑫「ミリオン・ダラー・シークレット」⑬「イー・ババ・リ・バ」⑭「アイム・ゴナ・レット・ヒム・ライド」⑮「イフ・アイ・クッド・ビー・ウィズ・ユー」⑭⑮がCD化時プラス曲。

Million Dollar Secret


I'm Gonna Let Him Ride


If I Could Be With You


ヘレンと同じく、前二人と比べると世代が上になるジョー・ターナー。「フリップ、フロップ・アンド・フライ」形式の曲が多いが、その都度新鮮な乗りが生まれているのはさすがである。特にラスト曲では「ハイヨー・シルバー!」のフレーズを、キャブ・キャロウェイ風に色んな歌い方で聴かせ、エンターテイナー振りを発揮している。シュライン・オーディトリアム55年のステージ(当時44歳)。⑯「フリップ、フロップ・アンド・フライ」⑰「3オクロック・イン・ザ・モーニング」⑱「アップ、アップ・アンド・アウェイ」⑲「ブルース」⑲はCD化時プラス曲。

Flip Flop & Fly


The Chicken And The Hawk (Up, Up And Away)


文中にも書いたが、ダイナ・ワシントンとジミー・ウィザースプーンに比べ、ヘレン・ヒュームズ、ジョー・ターナーはほぼ10歳年上である。新旧世代として並べるのもあまり意味がないかと思うが、やはり若干ダイナとジミーの方がより充実しているかなあと個人的には思う。とはいえ、4名とも高いエンターテインメント性を発揮した、好盤だと結論づけたい。中々手に入りにくいアルバムかも知れないが、興味を持たれたら、LPよりCDの方が良いかと思う。尚、貼り付けた動画と本盤の内容に開きがある事は、再度強調しておく。

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