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読了のおっさん28 日本三國(松木いっか/マンガワン、裏サンデー)

今日も、おっさんが全巻読んで面白かった漫画をご紹介です。
個人の感想であり、感じ方はそれぞれなれどご参考に。

概要的なネタバレは含みます。


日本三國(松木いっか/マンガワン、裏サンデー)
2021年~ 既刊4巻(2024年5月現在)

① タイプやテーマなど
 崩壊後の世界、日本、三国志、武力闘争、建国、天下統一、人間、軍事、政治、戦乱、地方

② 簡単な内容
 現代よりも概ね100年程度未来、日本が国家として衰退し、世界での核戦争やウイルスの蔓延、果ては大震災の影響で一度滅んだ後の世界が舞台。
 日本には3つの、武力による革命政権に分かれており、それぞれ大和(九州含む関西圏)、武凰(関東甲信越+東北の一部)、聖夷(北陸+東北南部+北海道)
を名乗っていた。
 その中の大和で、現在の四国に当たる土地出身の青年、主人公の三角青輝は、大和の最高権力者に妻が理不尽な理由で惨殺された出来事を切っ掛けに、革命のために大和中枢を目指す。
 首都の大阪にて、大和の辺境将軍、龍門光英の軍に入るため、幼少期より独自に積み重ねてきた教養と弁舌を武器に立ち回ったり、三国が争い合う日本で、戦乱や政治闘争に身を投じていく。

③ 読みどころ
 ストーリーが凄い。近年の日本の衰退や、新型コロナウィルスによるパンデミック、世界的な武力的緊張や社会崩壊の現状なども含めて、大胆に世界観を構築している。その中で、激しい心情や描写を伴った戦乱の世ならではのストーリーが次々と展開していく。
 展開や世界観だけでも読みごたえがある。テクノロジーとしてはおそらく明治ぐらいまで後退しており、一部兵器や技術は現代も踏襲しつつも、全体として文明が衰退した世界で、その状況が人間社会での倫理の崩壊と、生存の難しさにリアリティを与えている。

 キャラクターも良い。絵についてもおっさんの好みで、キャラクターの濃さが強調されるような描かれ方、画風である。
 科学技術の専門家は今のところ出てこないが、軍事や行政、策謀に係る描写はたまらなく強烈に描かれており、そこに各々のキャラクターの性質が乗って、歯切れのよいテンポと意外性が同居している。

 まだ4巻(最新刊の5巻は7月発売)までしか発売されていないが、1巻目から内容が濃く、続きが楽しみになる作品である。


④ 雑多な感想
 印象や面白さは読みどころで語ったところであるが、もう一つ目を引いたのが、登場人物の年齢である。現在は高齢化社会になっていて、その背景から、現代モノや、それに近い作品の登場人物は年齢が上がりがちなのであるが、本作は10代で結婚、20代で有力者の人物が出てくる。主人公の国の最高権力者でも50代である。

つまり、キャラクターが大人びつつも、十分に若さを残している印象がある。

 これが、現代劇とはやや違うテンポとリアリティを同時に生じさせ、登場人物たちの感情の大きさと可能性、多くの読者の既視感を鮮明にしているように思う。

 三国の分け方もなんとも面白い。古くからの地形も大いに関係するだろうが、かつての政治中枢、或いは人口密集地帯、言語や文化による分け、農業地域といった色々な考察を誘う分け方である。
 今後も現代日本との比較を楽しめそうである。

 そして、現代よりも劣悪な倫理観が垣間見える。独裁政治、命の扱いの軽さ、知性ではなく武力による人心掌握と統一が結構強いなどなど。。。
 どの時代であろうとどんな形であろうと、人間がやっていることに大して変わりはないのだが、武力が先に立つ世界観に仕立てていることで、一歩踏み込んで人の残虐さが際立つように思う。


⑤ その他
 まだ巻数が少ないので描ける内容も少なく、読了記録はもう少し先とも思ったのだが、最近になって連載が再開したため、堪えきれず執筆することとした。それだけすごく気になる作品である。

 日本版三国志とも言われていて、主人公が日本の再統一を志している点も気になるところ。今のところは小さな武力衝突と内政の描写が多いのだが、今後他国に対してどのような形で外政を企て、ストーリーが展開していくのだろうか。

 主人公ともう一人、ライバル的な描かれ方で阿佐馬芳経という英才教育を受けたキャラクターが登場する。この辺りのキャラクターとの関りや、現在登場している軍幹部との師弟関係的なものもあるかもと楽しみにしている。

 そして、今のところあまり描かれていないが、民衆の様子はどう描かれていくのだろうかとも思う。
 
 多くの戦記物では、軍や政治権力のぶつかり合いが骨子になるが、そこに関わる民衆とのやり取りや生活もまた大事な部分である。まだ詳しく描かれていないがこちらも楽しみである。

 と、おっさんの期待ばかり書いてしまったが、まだ始まったばかりの、今後が気になるオススメ作品である。

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