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読了のおっさん7 機動警察パトレイバー(ゆうきまさみ/週刊少年サンデー)

今日も、おっさんが全巻読んで面白かった漫画をご紹介です。
個人の感想であり、感じ方はそれぞれなれどご参考に。
概要的なネタバレは含みます。

機動警察パトレイバー
(ゆうきまさみ/週刊少年サンデー)
1988年〜1994年 文庫版全11巻

① タイプやテーマなど
 少年漫画、ロボット、警察、近未来、技術大国日本、東京、公務員、官僚組織、巨大企業、ミリタリー、兵器、平成バブル

② 簡単な内容
 主人公の新人夫人警官が、警視庁の新部署「特車2課」というレイバー(本作のロボット全般の名称)犯罪を取り扱う部署に配属されるところから始まる。バブル期の技術立国日本が、そのまま発展を続けたような世界で、国内ではレイバーによる犯罪が急増し、特車2課は様々な事件に立ち向かっていく。
 1、2話で完結する事件もいくつかあるが、巨大企業が製作した高性能戦闘用レイバーとの対決が一つの基軸となっており、そこにまつわる人対人、組織対組織、そして社会問題や陰謀工作のやり取りが描かれている。

③ 読みどころ
 特車2課の主要人物達が魅力的である。ロボット大好き少女、レイバー企業の御曹司、射撃狂の問題警官、隙の無い優等生、気弱なサポート要員、威勢の良い整備要員など、読んでいて笑える部分、ワクワクする部分、感情移入できる部分が多々ある。
 特にレイバー隊第2小隊の後藤隊長は、30年以上経った現在でも、当時の読者内で印象に残っているという人が多い。「理想の上司」と称する人もおり、他にはない非常に個性的かつ魅力的なキャラクターと思う。
 ロボットものではあるが、実際に闘うシーンよりも、日常や、そこに関わる人々のやり取りの面白さが光る。事件の真相解明に主人公達が動くシーンや、後藤隊長が組織内で根回しを図り、情報収集、権謀術数に動くシーンなどがむしろ本作の読みどころである。コミックスは22巻、文庫版で11巻と割と長いが、それでも連続して最後まで読み切ってしまいたくなる程、終始飽きる部分がない。

④  雑多な感想
 作者のゆうきまさみ先生の作品で、以前の読了記事でも紹介した「白暮のクロニクル」は公務員組織とその登場人物を描いたもので共通している。両作品ともその点についてはアイロニーを含みつつ、あるあるとして笑い飛ばせる楽しさがある。
 加えて本作は技術立国日本の雰囲気を引きずった未来の世界線であるため、そうした時代に数多く表出した、嫌な企業文化、驕り高ぶった日本人経営者の姿などを、こちらは公務員組織よりも幾らか辛辣に描いているように思う。
 環境保護を訴えるテロ組織や、謎の生物兵器らしきものの存在など、リアルな現代日本とは違っているが、現代日本にも通じるリアリティのある人間社会の問題が記されているように思う。
 公務員としての壁にぶつかりながらも「正義の味方」であろうとする、問題警察官達のドタバタ劇。本作の唯一無二の魅力である。多くの青年漫画と違い、社会風刺的部分より、少年漫画らしいエンターテイメント性が前面に出ている。

⑤ その他
 本作は当時としては新しいメディアミックス作品であった。アニメ、小説、映画とそれぞれでパラレルワールドになっており、キャラクターや世界観は概ね一致するものの、結末や発生する出来事、フォーカスされる事件が微妙に異なる。それぞれのメディアで色々な楽しみ方が可能である。
 おっさんは当時小学生の時にテレビアニメシリーズから入り、以後高校生ぐらいの時に、レンタルビデオでOVAシリーズも含めて再度本作を堪能。コミックスも一度この時期に読んでいるが、読み方は結構雑だったように思う。
 40を過ぎて改めて全巻読み直してみると、社会経験を通じて感じるあるあるに共感できたり、人物描写の細部にまで目が行き届き、アニメ作品より、まずコミックスをお勧めしたいなとも思うようになった。
 今や後藤隊長とほとんど同じ歳となり、職位(階級)も同格になった。最初に本作に触れた時は、主人公の新人婦警すらずっと年上の存在であったが、今は部下の年齢である。本作への感じ方が全く違っており、久々に再読して楽しめた。

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